パラリテリジノサウルス(学名:Paralitherizinosaurus)は、日本の北海道の天塩川水系の沢から化石が産出した、絶滅したテリジノサウルス科の恐竜の属。蝦夷層群オソウシナイ層からタイプ種 P.
japonicus のホロタイプ標本が発見されている。標本は2000年に発見された後、2006年に日本古生物学会で発表され、2022年に新属新種として記載された。
パラリテリジノサウルス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ホロタイプブロック | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
後期白亜紀カンパニアン | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Paralitherizinosaurus Kobayashi et al., 2022 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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日本で発見されたテリジノサウルス類の化石としては3例目であり、そのうち最も新しい時代のものである。また、海成層から産出したテリジノサウルス類化石としてはアジアで初の例、世界で2番目の例となる。
パラリテリジノサウルスのホロタイプ標本 NMV-52 は2000年9月に北海道中川町に分布する蝦夷層群のオソウシナイ層で発見された。当該の地層の時代は後期白亜紀の前期カンパニアン期にあたる。標本は部分的な頸椎と第I中手骨、第Iおよび第II末節骨の近位端、右手のほぼ完全な第III末節骨からなる。
これらの化石は2006年に早稲田大学の研究グループにより日本古生物学会でテリジノサウルス科のものとして発表し、Murakami et al. (2008) で記載された。ただし、同論文においてはテリジノサウルス科との類似性が指摘されつつも、マニラプトル類に属する未同定の獣脚類として扱われた。その後テリジノサウルス科の化石標本が増えてより詳細な比較研究が可能となったことを受け、Kobayashi et al. (2022) でテリジノサウルス科の新属 Paralitherizinosaurus として記載された。日本ではそれまで他に2つのテリジノサウルス科標本が発見されていたものの、いずれも未命名であり、パラリテリジノサウルスは初めて命名された日本産のテリジノサウルス科恐竜となった。属名の "Paralitherizinosaurus" はギリシア語で「海の近くの」を意味する"paralos"、「刈り取る」を意味する"therizo"、ラテン語で「トカゲ」を意味する"sauros"に由来する。種小名の"japonicus"は日本での発見にちなむ。
パラリテリジノサウルスの特徴として遠位端の軸が捻じれていない背腹方向に平坦な第I中手骨、第Iおよび第III末節骨の近位で突出するdorsal lip、第III末節骨のcollateral grooveの近位に位置する浅い窪み、近位部の腹側に発達する突起、小さな稜をなす縮小した屈筋結節が挙げられる。これらの形質がパラリテリジノサウルスの標徴形質とされる。なお第II末節骨上部の突起、縮小した屈筋結節、下位に位置するcollateral grooveなどはテリジノサウルスとも共通する形質である。
パラリテリジノサウルスとテリジノサウルスはテリジノサウルス科の中でも末節骨が細長く、またテリジノサウルス類の基盤的なメンバーと比較して先端部への力の伝導効率が劣ることが示唆されている。屈筋結節の縮小も加味して、爪の内側への可動域が広い肉食性獣脚類と異なりパラリテリジノサウルスやテリジノサウルスは爪の可動性が失われていたことが示唆される。以上よりテリジノサウルス類は、多機能であった祖先的な手から、弱い力で熊手のように扱う手へ進化したことが考えられている。
Kobayashi et al. (2022) の系統解析では、パラリテリジノサウルスはテリジノサウルスとスジョウサウルスおよび未命名であるウズベキスタンのビセクティ層産のテリジノサウルス類を含む系統群に位置付けられた。以下のクラドグラムはKobayashi et al. (2022) での系統解析の結果を示す。
テリジノサウルス類 |
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パラリテリジノサウルスは日本で発見されている3つのテリジノサウルス科標本の中で最も新しいものである。篠山層群の標本が前期アプチアン期,御船層群の標本がセノマニアン期からチューロニアン期のものであるのに対し、パラリテリジノサウルスはカンパニアン期のものである。これにより、日本においてテリジノサウルス類が生息した時代レンジが拡大することとなった。また、パラリテリジノサウルス以前に命名された日本の恐竜としては2019年のカムイサウルスや2021年のヤマトサウルスが挙げられる。こうしたハドロサウルス科恐竜の他にテリジノサウルス類も遺骸が海へ流出するような沿岸域に生息していたことが示唆され、当時の沿岸域における多様性が示唆されている。
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