バーネット・ニューマン: 1905-1970, アメリカの抽象表現主義美術家

バーネット・ニューマン(Barnett Newman、1905年1月29日 - 1970年7月4日)は、アメリカの美術家。抽象表現主義とカラーフィールド・ペインティングの代表的存在。

バーネット・ニューマン
Barnett Newman
バーネット・ニューマン: 生涯, 主要作品, 参考文献
誕生日 1905年1月29日
出生地 ニューヨーク
死没年 1970年7月4日(1970-07-04)(65歳)
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
運動・動向 抽象表現主義カラーフィールド・ペインティング
芸術分野 美術家
テンプレートを表示

生涯

ニューマンはロシア系ユダヤ移民の子としてニューヨークに生まれた。ニューヨーク市立大学で哲学を学んだ後、父親の服飾業を手伝った。1930年代から絵を描き始めた。そのころの作品は表現主義風だったというが、後に彼はそれらをすべて処分した。

1940年代には最初はシュルレアリスムを試しながら、やがて独自のスタイルを築きあげた。その画面は、ニューマンが「ジップ zip」と呼ぶ細い縦線で巨大な色面が区切られるのが特徴である。ジップを用い始めたころの作品では、色面はまだらになっていたが、やがて色面は単色で平坦なものになった。ニューマン自身は1948年以降の「ワンメント Onement」シリーズによって自己のスタイルが確立されたと考えていた。

生涯を通じて、ジップは彼の作品の主役であった。1950年代の作品には、「ワイルド The Wild」(203cm×4cm、ニューヨーク近代美術館)のように、ジップそれ自体が作品となったものもある。ニューマンはまた、ジップの3次元版とでもいうべき彫刻もいくつか制作している。

ニューマンの絵画は純粋に抽象的に見えるうえ、当初は「無題」とされた作品も多かった。彼はのちにそれらの作品に題名を与えたが、それらが示唆するものは、しばしばユダヤ的な主題であった。例えば1950年代に制作された「アダムとイヴ」がそうである。「ウリエル」(1954年)もそうだし、また「アブラハム」(1949年)というとても暗い絵画は、聖書の登場人物でありまたニューマンの父(1947年に没した)の名でもある題名を与えられている。

「十字架の道行 The Stations of the Cross」シリーズ(1958年-1964年)はモノトーンの連作絵画である。この連作はニューマンが心臓発作から回復してすぐに制作されたもので、一般にはニューマンの画業の頂点を示すものとして認識されている。この連作は「レマ・サバクタニ(なぜ我を見捨て給う)」という副題がつけられている。十字架上のキリストが叫んだ言葉である。ニューマンはこの言葉が、彼の時代にとって普遍的な重要性を備えていると感じていた。

ニューマンの晩年の作品は「誰が赤、黄、青を恐れるのか Who's Afraid of Red, Yellow and Blue」シリーズに見られるように、純粋で鮮やかで色を巨大なカンヴァスの上に用いるものが多くみられる。「アンナの光」(1968年)は幅7.1m、高さ2.3mあり、彼の作品中最も大きい。題名は1965年に没した彼の母の名に由来している。晩年は「シャルトル Chartres」(1969年)をはじめシェイプト・カンヴァス(四角形以外のカンヴァスを用いた絵画)や、滑らかな鉄片を用いた彫刻にも取り組んだ。初期の油彩と異なり、晩年の作品にはアクリル絵具が用いられた。

バーネット・ニューマン: 生涯, 主要作品, 参考文献 
ブロークン・オベリスク (ヒューストン、ロスコ・チャペル)

彫刻作品では、ピラミッドの頂点にオベリスクを逆さに立てた「ブロークン・オベリスク」が良く知られている。リトグラフの作品には、連作「18 Cantos」(1963-64年)などがあり、また数は少ないがエッチングの作品もある。

ニューマンは1950年代のニューヨークでの活動において、他の美術家と共に、ヨーロッパ絵画の様式に拠らない独自の抽象表現を築き上げたことで、一般的には抽象表現主義の美術家として認識されている。しかし、クリフォード・スティルやマーク・ロスコら他の抽象表現主義の美術家が用いたような表現主義的な筆触を拒絶し、はっきりした輪郭と平坦な色面を用いたことからすると、ニューマンの作品はポスト・ペインタリー・アブストラクションミニマリズムの嚆矢と見ることができる。

ジャクソン・ポロックのように話題性に満ちた人物と比べると、ニューマンの生前の評価は低かった。クレメント・グリーンバーグはニューマンを熱烈に支持したが、晩年になるまで彼の作品が真剣に取り上げられることは少なかった。しかし、彼はより若い世代の画家に対しては大きな影響を与えてきた。

ニューマンは1970年、心臓発作のためニューヨークで没した。

主要作品

バーネット・ニューマン: 生涯, 主要作品, 参考文献 
十字架の道行
バーネット・ニューマン: 生涯, 主要作品, 参考文献 
アンナの光

参考文献

  • バーネット・ニューマン『崇高はいま』 三松幸雄(編集・翻訳)、東京パブリッシングハウス、2012年。
  • 多木浩二『神話なき世界の芸術家 バーネット・ニューマンの探究』 岩波書店、1994年。

関連項目

外部リンク

Tags:

バーネット・ニューマン 生涯バーネット・ニューマン 主要作品バーネット・ニューマン 参考文献バーネット・ニューマン 関連項目バーネット・ニューマン 外部リンクバーネット・ニューマン1905年1970年1月29日7月4日アメリカ合衆国カラーフィールド・ペインティング抽象表現主義美術家

🔥 Trending searches on Wiki 日本語:

SixTONESシンガポール沢城みゆき田口壮小林製薬Stray Kids天才てれびくんシリーズの出演者・登場キャラクター多部未華子上白石萌歌宇多田ヒカルDJ松永雪印集団食中毒事件Omoinotake浦西ひかる花咲舞が黙ってない宮世琉弥中央学院高等学校松本典子伯桜鵬哲也明日海りお森喜朗オーガズム青井実ゴーストバスターズ/フローズン・サマーZ世代青の祓魔師ダン・ミセリ古川優奈松嶋菜々子堤真一鳥肌実リバン・モイネロ森口瑤子ONE PIECEの登場人物一覧BLUE GIANTガリレオ (テレビドラマ)坂本勇人種﨑敦美岸田文雄水上恒司徳川将軍一覧ヒモムシ小林明子HYBE上坂すみれベニコウジカビアメリカ合衆国陸奥亮子ガクテンソクバツイチ島津有理子小関舞真空ジェシカちゅらさん魔都精兵のスレイブ日本航空ハイジャック事件東京ブギウギ影山優佳近未來通信UNIS大石昌良阿部慎之助でか美ちゃんアジアン名探偵コナン徳川治休吉田羊ONE PIECEあきまんイギリス南雲穂波タンネンベルクの戦い (1410年)鬼滅の刃河野太郎フィット (芸能プロダクション)間宮祥太朗マット・デイモン真野響子飯塚事件🡆 More