航空機 J-31: 中華人民共和国が開発中の戦闘機

FC-31は中国瀋陽飛機工業集団が自己資金で開発した第5世代ステルス戦闘機技術の検証機で、本機を原型とした輸出用ステルス戦闘機FC-31が計画されている。コードネームは「鶻鷹」(シロハヤブサ)、社内では開発プロジェクト名称の「310工程」に因んで「310検証機」と呼ばれている。

中華人民共和国の旗Shenyang FC-31 鶻鷹

2014年の中国国際航空宇宙博覧会で公開された31001号機

2014年の中国国際航空宇宙博覧会で公開された31001号機

本機は2011年1月に初飛行を行ったJ-20に続いて存在が確認された、中国で2番目のステルス戦闘機であり、J-20が全長20mを超える大型機であるのに対し、本機は全長17m程度の中型の双発戦闘機である。2012年に試験中の映像が流出し存在が確認された後も、本機についての情報は公式には殆ど明らかにされなかったため、軍の関与しないメーカーの独自プロジェクトとする情報がある一方で、中国軍の採用を前提として、J-20とハイ・ローミックスの運用を行う、あるいは建造中の航空母艦の艦載機として用いるなどの観測もなされていた。名称も不明であったため、当初はF-60やJ-21(殲-21)とする説もあったが、「310工程」の01号機の意味で機首に描かれ書かれた「31001」から推測された殲-31-31)またはJ-31の呼び名が一般に定着した。

2014年11月11日から16日に開催された中国国際航空宇宙博覧会で初めて一般公開され、本機が中国軍の採用を前提としない機体であり、輸出用戦闘機としての名称がFC-31であることも明らかにされた。

2015年に量産型のFC-31は2019年の初飛行、2022年にIOC、2025年のFOC獲得を予定している。

概要

中国では2000年代半ばないし後半に第5世代(以前の中国では四代(第四世代)と呼んでいた)戦闘機計画(J-XX)の設計コンペが行われ、成都飛機工業公司の設計案(後のJ-20)が採用された。敗者となった瀋陽飛機工業集団は、J-XX用に開発した技術を用いた新しい検証機を自己資金で開発することとした。瀋陽飛機工業集団のJ-XX案もJ-20と同様の大型機であったが、そのままでは中国軍に採用される見込みが薄いことと、中型機であれば海外にも一定程度の輸出需要が見込まれることから、この検証機は旧F/A-18相当の中型の機体となった。検証機は2012年までに飛行試験用の機体(31001号機)と静態試験機が製作されたとみられる。

2012年夏頃より検証機の画像がネットに流出し始めた。2012年9月には瀋陽飛機工業集団の飛行場で駐機中の本機の流出画像がネットで確認された。機首両側面に「31001」という数字が、双垂直尾翼には「鶻鷹」のエンブレムが描かれている。

中国のメディアは、「2012年10月31日午前10時32分頃(中国時間)、J-11BS付き添いの下、J-31が初飛行に成功した」と報じた。

中国網2013年1月17日付けは、J-31の写真が再び流出したと報じた。

2013年11月11日、J-31の戦闘爆撃機型と思しきCAD画像が流出したことが報じられた。同報道によると画像の機体は、F-22の発展型として計画されたFB-22と同様に胴体が延長され、カナードが付加されている。ただし、画像はJ-31の発展型ではなく、J-31の開発母体となった瀋陽飛機のJ-XX案の可能性もある。

中国網2014年4月18日付けは、WS-13エンジンを搭載したと思われるJ-31が確認されたと報じた。

2014年11月に開かれた中国国際航空宇宙博覧会において初めて一般公開され、31001号機による飛行展示が行われた。同時に本機を原型とした輸出用戦闘機FC-31の1/2スケールの大型模型が屋内展示された。FC-31は外形、装備とも31001号機との相違点が多い。

FC-31はJ-20と並行して開発されたため、J-20とハイ・ローミックスの補完関係にあるとするもの、開発中の航空母艦用の艦上戦闘機として、将来的にJ-15を置き換える、あるいはJ-15とハイ・ローミックスの運用を行うとするものという説が流れたが、2013年9月に中国海軍の張召忠提督は「J-31は輸出用戦闘機であり、中国軍での使用を意図しておらず、艦上戦闘機になることはないだろう」と発言しこれらの説を否定している。2014年の中国国際航空宇宙博覧会で行われた主任設計者孫聡(スン・ツォン)へのCCTVのインタビューで、本機が輸出用の戦闘機であることが確認された。

しかし、2020年7月、環球時報の報道により、新型艦上戦闘機が開発中であることと2021年に初飛行する可能性があることが伝えられたが、この艦上戦闘機はFC-31の派生型である可能性が指摘されている。2021年6月、武漢にある実物大の003型空母を模した実験施設上にFC-31と似たモックアップが出現した。同施設は以前にも003型空母に搭載予定のKJ-600早期警戒管制機のモックアップが初飛行前に存在したことなどから、FC-31の派生型が艦上戦闘機となる見方が強まったと報じられた。

名称

本機はJ-31として知られているが、これは公式の名称ではない。本機が初めて一般公開された2014年の中国国際航空宇宙博覧会で31001号機が展示飛行を行った際には、単に「鶻鷹戦闘機」と紹介されていた。また屋内展示された発展型の大型模型の説明板には「鶻鷹 第四代中型多用途战斗机 FC-31 4th-genaration Multi-purpose Medium Fighter」と記入されていた。したがって、少なくとも「鶻鷹」は31001号機だけでなく、本プロジェクト(310工程)で開発される機体全体の名称(愛称)と考えられる。また、「FC」は「Fighter China」の略で輸出用の戦闘機であることを表し、他にもFC-1、FC-20(J-10のパキスタン向けの輸出仕様)などが知られている。軍によって割り当てられる「J(殲)」番号とは異なって、「FC」番号はメーカーが自由に付与できるもので、「31」は通称のJ-31に由来するとみられる。

設計

航空機 J-31: 概要, 設計, 配備 
飛行中のJ-31

FC-31は同じ中国のJ-20やアメリカのF-22F-35およびロシアのSu-57などと同様、ステルス性を強く意識した設計の機体で、RCS(レーダー反射断面積)を低減するため胴体側面を傾斜させ、主翼と尾翼の前・後縁の角度や、機体側面と垂直尾翼の傾斜を極力統一している。J-20がステルス性に疑問の残る先尾翼形式であるのに対し、本機は通常の水平尾翼を持っている。平面形状は単発と双発の差はあるもののF-35に類似しているが、側面形状は垂直尾翼も含めてF-22に似ている。空気取り入れ口にはF-35やJ-20と同じくダイバータレス超音速インレット(DSI)を採用している。機体には複合材料が多量に使用されており、胴体と主翼は一体成型で作られている。そのため、パーツ数はとても少なく第4世代機の半分以下であるとしている。2015年の北京航空ショーで公表されたスペックによれば離陸滑走距離400m、着陸滑走距離600mとかなり優れた短距離離着陸性能を持っていることが明らかとなっている。

2014年の中国国際航空宇宙博覧会で展示されたFC-31の模型では、垂直尾翼がF-35に似た後退翼に変わったのをはじめ、31001号機に比べ主翼や水平尾翼の形状、一体型キャノピーの採用、機首下面への光学照準システムの追加、ステルス性を考慮した主脚格納部形状などの変更点がみられる。

31001号機の胴体下面にはウェポンベイの扉らしきものが見られるものの実際に機能するかどうかは確認されていないが、2014年の中国国際航空宇宙博覧会で展示されたFC-31の模型では、胴体下面に中央で左右に仕切られた大型のウェポンベイがあり、内部にPL-12空対空ミサイルが4発搭載されていた。

コックピットは、2014年の中国国際航空宇宙博覧会で公開された中国空軍の将来コックピットのフライトシミュレータが母体となると思われる。このシミュレータは20×8インチの大型タッチパネル液晶ディスプレイと小型液晶ディスプレイとホログラフィック式の広角HUDで構成されており、HMDとの併用も想定されていた。操縦桿はジョイスティック方式のサイドスティックである。

エンジンはJF-17用にロシアより輸入したクリモフ RD-93 (推力85.4kN) と考えられ、これを横に並べて双発としている。ロシアはJ-31用にRD-93エンジンを供給するとしており、あわせて中国とRD-93をベースとして推力を91kNまで向上させた改良型のRD-93MAの開発契約を結んでいたことから、量産型(FC-31)ではこちらが搭載される可能性もあったが、2015年のドバイ航空ショーで中国製になることが発表された。搭載するエンジンは推力100kNのWS-13の発展型だと思われる。

試作機のノズル形状はごく一般的なものであり、後方からのRCSの低減や、排気の赤外線対策が行われていないが、2014年の中国国際航空宇宙博覧会で公開されたFC-31の大型模型ではエンジンノズルもステルス性に考慮した形状となっている。また、量産型(FC-31)では推力偏向機能が付加されるとの推測もある。2008年に開催された中国国際航空宇宙博覧会では中国ガスタービン研究所(CGTE)が、推力9,500kg(20,943 lbs)の軸対称推力偏向ノズルのモデルを展示している。また、試作機は予めエンジンの換装を想定してRD-93より径の大きいWS-13に合わせて製作されたため、初期の画像では機体後部の外板とエンジンノズルの間に隙間が見られたが、2014年の中国国際航空宇宙博覧会で公開された際には、隙間はある程度ステルス性を考慮したと思しき形に整形されていた。 またJ35と呼ばれる艦載機試作型にはエアインテーク横のエンジンナセル側面に6角形の蓋らしき設備が見受けられ、側方フェイズドアレイレーダーという説が一般的だが、前方可変ノズルの噴射口の可能性もある。 その場合ハリアーのペガサスエンジンを真似たSVTOLエンジンを搭載している可能性もあり。F35、ハリアーのようなSVTOL機の試作機である可能性もある。

配備

輸出

FC-31はF-35を購入できない国が入手可能な最初のステルス戦闘機として開発が行われており、既に2012年11月に珠海で行われた中国国際航空宇宙博覧会で、海外市場向けのステルス戦闘機のコンセプトモデルとして模型が展示されている。この時の模型は31001号機と大差のないものであったが、2014年の同博覧会で展示された模型は大きく変化しており、その間に31001号機の試験結果も反映させて、輸出専用機として実用化するための作業が進められたとみられる。輸出価格は提示されていないものの1億ドルよりも安いとしている。

本機に対しては、2014年11月時点で、すでに中国製戦闘機を多数採用しているパキスタンが30-40機購入する事を交渉中であると報じられ、2012年にはアルゼンチンが興味を示しているとする報道もあったが、2018年現在では輸出の動きは無い。

要目

情報源

  • 全幅:11.5 m
  • 全長:16.8 m
  • 全高:4.8 m
  • 主翼面積:40.0 m2
  • 空虚重量:12,500 kg
  • 最大離陸重量:25,000 kg
  • 通常離陸重量:17,500 kg
  • 兵器類最大搭載重量:8,000kg
  • 最高速度:M1.8
  • 機内燃料戦闘半径:1,200 km
  • 上昇限度:16,000 m
  • 離陸滑走距離:400 m
  • 着陸滑走距離:600 m
  • Gリミット:+9/-3G
  • 機体寿命:6,000 - 8,000時間(30年間)
  • エンジン:
    • RD-93(アフターバーナー時最大推力85.4kN)×2
    • WS-13 発展型(アフターバーナー時最大推力100kN)×2
  • 武装
    • 6つの外部ハードポイントと4つのウェポンベイ内部ハードポイントを持ち、それぞれ外部に6,000kg、ウェポンベイ内部に2,000kgの兵装を搭載可能。

脚注

関連項目

Tags:

航空機 J-31 概要航空機 J-31 設計航空機 J-31 配備航空機 J-31 要目航空機 J-31 脚注航空機 J-31 関連項目航空機 J-31中華人民共和国の旗

🔥 Trending searches on Wiki 日本語:

オルランド・カリステワシントン・ナショナルズロサンゼルス・ドジャースハンフリー・ボガートClariS一億円拾得事件SHOGUN 将軍ピンクの電話斎藤ちはるジュード・ベリンガム山川穂高BTS (音楽グループ)藤井風寬仁親王中村悠一新世紀エヴァンゲリオン楠木ともり菅野智之アドルフ・ヒトラーTHE YELLOW MONKEY9ボーダー若葉竜也青井実4月25日野茂英雄木村文乃高橋李依彬子女王八神純子目黒蓮TWICE (韓国の音楽グループ)石田ゆり子ポープ・ウィリアム日本保証平野紫耀XVideos英語新垣結衣シティーハンター (2024年の映画)若山詩音澤井杏奈山下智久水崎綾女新選組 (手塚治虫の漫画)山田楓喜ゴジラxコング 新たなる帝国眞栄田郷敦日勤教育亀梨和也ルイス・ネリ尼神インター喧嘩独学あぶない刑事アフリカ文学竹内涼真クリスタルキング西城秀樹オセロ (ボードゲーム)桐野利秋灰原哀栗原恵諏訪部順一声優ラジオのウラオモテフォールアウト (ドラマ)呪術廻戦やす子錦戸亮吉高由里子チェルノブイリ原子力発電所事故西川貴教名探偵コナン 黒鉄の魚影松木玖生IS:SUE杏里柳裕也高畑充希田中史朗スーパー戦隊シリーズ秋元玲奈🡆 More