ヴァルティー BT-13 ヴァリアント (Vultee BT-13 Valiant) は、第二次世界大戦期にアメリカ合衆国のヴァルティー・エアクラフトで開発され、アメリカ陸軍航空隊(後のアメリカ陸軍航空軍)およびアメリカ海軍航空隊で運用された基本練習機である。
ヴァルティー BT-13 ヴァリアント
基本練習機 (Basic Trainer, BT) は、初等練習機 (Primary Trainer, PT)と高等練習機 (Advanced Trainer, AT)の中間に位置する2段階目の練習機で、同時期の初等練習機としてはPT-13/PT-17 ステアマンやPT-19 コーネル、高等練習機としてはAT-6 テキサンなどが広く使用されていた。
1938年、ヴァルティーの開発責任者であったリチャード・パルマーは単発戦闘機の開発を始めていたが、同じ頃にアメリカ陸軍から高等練習機の要求仕様書の提示が行われた。パルマーは設計中の戦闘機を高等練習機に設計変更し、V-51と呼ばれる試作機を完成させた。試作機V-51は出力600馬力のプラット・アンド・ホイットニー R-1340を搭載した全金属製の機体を持ち、1939年3月24日に初飛行に成功した。V-51はBC-51の形式名が付けられアメリカ陸軍航空隊での評価試験が行われた。
この評価試験で、アメリカ陸軍はノースアメリカン製のBC-2 (後のAT-6テキサン)の採用を決めたが、BC-51の方も引き続いて評価運用試験のため使いたいという事でBC-3という形式名が与えられた。
V-51がアメリカ軍に制式採用されなかった事を受け、パルマーはV-51を再度改設計し、出力の低いエンジンを搭載した輸出市場向けの練習機としてVF-54を製作した。しかしながら、VF-54の採用国は現れなかった。
パルマーはVF-54を更に設計変更し、着陸脚を固定にしてエンジンを出力450馬力のプラット・アンド・ホイットニー R-985-T3Bに変更したVF-54Aを製作した。するとこの機体がアメリカ陸軍航空隊の基本練習機として採用される事になり、1939年8月にBT-13の形式名が与えられて300機の発注が行われた。BT-13の最初の量産機はプラット・アンド・ホイットニー R-985-25を搭載し、1940年6月にアメリカ陸軍航空隊に納品された。
続いて大量生産されたBT-13Aはエンジンをプラット・アンド・ホイットニー R-985-AN-1に変更したほか、主脚カバーを省略するなどのマイナーチェンジを行ったバージョンで、6,407機が生産された。また、BT-13AのDC12V電装系をDC24V系に変更したBT-13Bが1,125機生産された。また、生産数増加によりプラット・アンド・ホイットニー R-985の調達が追いつかなくなり、同じ出力450馬力のライト R-975-11エンジンを搭載したBT-15が1,693機生産された。
また、アメリカ海軍はBT-13AをSNV-1として1,350機導入し、またBT-13BをSNV-2として650機導入した。
これらのBT-13には"ヴァリアント"という公式の愛称が付けられていたが、一方で兵士からは"バイブレーター"のあだ名でも呼ばれた。これにはいくつかの理由があり、失速する寸前になると機体が激しく振動する、空中で激しい機動を行うと風防が振動する、離陸する際に地上の建物の窓を振動させる、などであった。
終戦に伴いBT-13の多くはアメリカ軍から民間や輸出市場に放出され、あるものは強力なエンジンを他の農業用機などに載せ換える目的で購入され、またあるものは外国の軍で練習機として使用されたりした。現在も少数のBT-13が外国の政府機関や軍で引き続き使用されていると見られる。
BT-13Aの諸元
1970年に公開されたアメリカ映画「トラ・トラ・トラ!」において、BT-13を改造して製作された九九式艦上爆撃機が、T-6 テキサンを改造して製作された零式艦上戦闘機と共に出演している。また、同じくこの映画に登場する九七式艦上攻撃機は、BT-13とT-6の機体を繋ぎ合わせて製作されている。
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