『魔術の殺人』(まじゅつのさつじん、原題:They Do It with Mirrors、米題:Murder with Mirrors)は、1954年に刊行されたアガサ・クリスティの推理小説。ミス・マープル・シリーズの長編第5作目にあたる。
魔術の殺人 They Do It with Mirrors | ||
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著者 | アガサ・クリスティ | |
訳者 | 田村 隆一 | |
発行日 | ||
発行元 | 早川書房 | |
ジャンル | 推理小説 | |
国 | イギリス | |
言語 | 英語 | |
コード | ISBN 978-4151300394 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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ロンドンに住むアメリカ人ルース・ヴァン・ライドックは、ミス・マープルが若い頃からの友人である。彼女を訪ねたマープルは、ルースが妹のキャリー・ルイーズを深刻に心配していることを知る。彼女はマープルに、キャリー・ルイーズをイギリスの自宅であるストーニーゲートに訪問するように依頼し、マープルは引き受ける。彼女は、キャリー・ルイーズと3番目の夫ルイス・セロコールドが経営する非行少年の更生施設が併設されているビクトリア朝の邸宅を訪れる。キャリー・ルイーズは、孫娘のジーナ、その夫ウォルターと一緒に暮らしている。娘のミルドレッドは、未亡人となった後、故郷に帰ってきた。継子のスティーブンとアレクシス・レスタリックは成長し、邸宅を頻繁に訪問し、マープルと居合わす。セロコールドの秘書を務める青年エドガー・ローソンは明らかに妄想性統合失調症の兆候が見られる。
マープルは、キャリー・ルイーズが老齢に伴う健康上の問題を抱えていることを知る。しかし、キャリー・ルイーズがこれまでのように優しく、理想主義的で、愛情深い人物であることを知り、ミス・マープルは嬉しく思う。
キャリー・ルイーズの最初の結婚相手の継子で、父親が生前に築いた財産で設立した慈善財団の理事を務めるクリスチャン・グルブランセンが突然訪ねてくる。マープルはバードウォッチング用の双眼鏡でセロコールドがテラスでクリスチャンを迎える様子を眺めながら、クリスチャンが突然訪ねてきた理由を探ろうとする。彼女は、二人がキャリー・ルイーズに問題を伏せておき、外部の助けを求めようとしている話し声を聞き取る。二人は夕食を共にし、その後クリスチャンは手紙を書くために自室に引きこもる。
セロコールドのオフィスの鍵のかかったドアの向こうから聞こえてくる口論に他の家族は聞き入る。ローソンが銃を持ってその部屋に入っており、セロコールドを父親だと言って彼からひどい仕打ちを受けてきたと大声で主張している。ローソンは彼を撃つと脅し、セロコールドがなだめようとする声が聞こえる。
停電で大広間が真っ暗になり一同が緊張する。ウォルターは部屋を出て、ヒューズを直して戻ってくる。ローソンがセロコールドにわめき散らしている間に家族は銃声を聞き、書斎のドアを開けようとする。何人かにはさらに銃声を聞く。やっとの思いで扉を開けると、セロコールドはその対応を笑うが、壁に銃弾が当たっているのがわかり、ローソンは泣き崩れて謝罪する。
一方、家政婦でキャリー・ルイーズのコンパニオンであるジュリエットは、事務所の鍵を探しに出かけていた。彼女はクリスチャンが自室で銃で撃たれて死んでいるのを発見する。
セロコールドはクリスチャンの部屋に行き、キャリー・ルイーズとマープルがそれに続く。アレックス・リスタリックが家に到着する。そこには既に弟のスティーブンがおり、夕食後にピアノを弾いていた。そこへ警察がやってくる。
カリィ警部は、非行少年の施設の関係者はもちろん、使用人も一切関与していないことをすぐに立証する。カリィは、ジョリーが死体の部屋に入ったとき、タイプライターの中に一枚の紙があったことを突き止める。セロコールドは、妻がそれを読んで、何者かがキャリー・ルイーズに毒を盛っているとクリスチャンが心配してこの館を訪れたということを妻が気づくことを恐れたのだと説明し、そのメモを取り除いたことを認める。セロコールドは、毒は彼女の薬に含まれているのではないかと示唆し、その薬はヒ素を含んでいることが判明する。
マープルは、ウォルターが犯人だとなれば家族のほとんどが喜ぶだろうとコメントするが、クリスチャンはウォルターの銃ではなく、休憩中にローソンが手にしていた銃で殺されていた。警察は、ピアノ台の中の楽譜の下から凶器を発見する。
アレックスは、家までのドライブが霧で遅くなったこと、霧の中で見たもの、聞いたもの、例えば銃声や誰かが走る音などから、舞台装置のアイデアを得たと説明する。アレックスが家を舞台に見立てた話を聞いて、マープルは殺人事件に対して違う考えを持ち始める。翌日の夜、アレックスと少年アーニー・グレッグは舞台の重石で殺される。
マープルは、セロコールドの書斎からクリスチャンの部屋まで、テラス沿いに2分足らずで走れる立場にいたのは、セロコールド一人であると警察に説明する。ローソンは自分自身とセロコールドの二役を演じており、その間にセロコールドはクリスチャンを殺し、息を切らして戻ってきたのであった。キャリー・ルイーズの毒殺疑惑はセロコールドが作り出した偽装であった。クリスチャンが館を訪れた本当の理由は、セロコールドがグルブランセン信託から横領していることを知ったからである。また、ローソンは統合失調症のふりをしていただけで、実際はルイスの隠し子であることも読者は知ることになる。
警察に詰め寄られたローソンは家から逃げ出し、敷地内の湖を渡るために古いボートに飛び乗る。ボートが沈み始めたのでセロコールドは息子を助けるために湖に飛び込む。二人は湖に立ち並ぶ葦に捕まり、警察の手が届く前に溺死してしまう。これらの死の場面は、キャリー・ルイーズが娘のミルドレッドと屋内を歩くところで終わり、母と娘の新しい連帯が生まれる。キャリー・ルイーズの孫娘ジーナは、アメリカ人の夫ウォルターとアメリカに戻ることに同意し、別居の危機を回避する。
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