水門(すいもん)とは、河川または水路を横断する形で設けられる流水を制御するための構造物のうち河川堤防を分断する形で設置されるもの。河口付近を含む河川や運河、用水路、湖沼、貯水池、港湾などに設けられる。水門は流水を制御するとともに高水時には堤防としての機能をもつ。古くは「水の門(ミナト)」として「港湾」の意味も持ち、『古事記』や『日本書紀』では「水門」と書かれている。
なお、河川または水路を横断する形で設けられる流水を制御するための構造物には水門のほかに樋門があり、本項では樋門も扱う。
流水の制御施設には水門のほか樋門や堰がある。
河川または水路を横断する形で設けられる流水を制御するための構造物のうち河川堤防を分断する形で設置されるもので、水門は堤防機能を有する。
水門には役割に応じて、河川などの計画的な分流のために設けられる分流水門、湖沼の水位操作や塩害の防止のために設けられる調節水門、高潮による河川の水位上昇や津波を防ぎ氾濫(洪水)を防ぐために設けられる防潮水門、支川に本川の水が逆流してくるのを防ぐために設けられる制水門などの種類がある。ただし、実際に設置される水門は複数の目的をもつことが多く、実際にある水門を厳密に分類することにはあまり意味がない。
樋門(ひもん)も水門と同じく河川(合流する河川の支川。水門が架かる河川に比べ小規模)または水路を横断する形で設けられる流水を制御するための構造物(主には河川水の逆流防止機能)であるが、樋門は堤体内に樋管(ひかん)という暗渠を挿入して設置されるものをいい、普段は河川から農業用水などを取り込むための門である。
樋門の設計は、従来は剛構造でなされたが、これでは下に軟弱な地層がある場合などは基礎工を施工して樋門の安定を図るため、樋門と周辺堤防の土とのなじみが悪くなりやすく、亀裂や空洞の発生がみうけられた。 平成10年11月に(財)国土開発技術センターから『柔構造樋門設計の手引き』が発行され、それ以降の樋門構造物はすべてこの手引きに従い、柔構造で設計することとなっている。
樋門・樋管にはフラップゲートの他、よく見かけられるローラーゲート及びスルースゲートが設置され、開閉方式には手動と電動がある。軸構造はラックとスピンドル式があり、前者は閉止速度が速いため水密ゴムが適し、ゴムが破断しないよう戸当りが直線状の四角型のゲートになる。後者は閉止速度も遅く金属面による水密となるため丸型のゲートもある。材質もSS製からSUS、強度向上した二相SUS製もある。
樋門として設置後にその役割を終え、堤体部分を道路として転用し、樋門部分の構造物を道路橋として活用する場合もある。主な樋門を参照。
堰(せき)とは河川の流水を制御するための構造物のうち堤防機能をもたないものをいう。
ただし、水門には河川付近に設置される防潮水門のように外見上は堰(河口堰)と判別しにくいものがある。例えば、隣り合って設置されている常陸川水門と利根川河口堰は、その外見が非常に類似しているが、洪水時、常陸川水門は扉を閉じて水の往来を止めて利根川本川から常陸利根川(霞ヶ浦)への逆流を阻止する(堤防としての機能)一方、利根川本川にかかる利根川河口堰は扉を開放して水をなるべく多く流そうとする(堤防としては機能していない)。
現在日本で設置されている水門の多くは、ローラーゲートといわれる門扉方式を採用している。ローラーゲートは、鋼鉄などでできた開閉用ゲートの板に、ローラが付いたもので、それをワイヤロープなどによって垂直に持ち上げて上下に開閉する。ローラーが付いているため、摩擦抵抗が少なく大きな水圧がかかる大規模な水門にも利用できるほか、構造上止水が容易で信頼性が高いため河川構造物ではよく用いられている。
このほかには、スルースゲート(ローラーがなく単純に板を上下に動かすだけ)、マイターゲート(観音開き式で上部構造物がなくても良いため、運河などで利用される)、セクターゲート(蒲鉾型の扉体が回転する方式。ラジアルゲートともいう)などの方式がある。
2011年の東日本大震災において、三陸地方では津波を防ごうと防潮堤の水門操作に駆け付けた消防団員に多くの犠牲者(岩手県内で48人)が出た。このため岩手県は計画中を含む水門・門扉約520基のうち4割程度(約220基)をJアラートに連動した自動閉鎖式とする。こうしたシステムは南海トラフ巨大地震による津波襲来が想定されている和歌山県や三重県でも一部導入されている。
こうした人による操作を必要としない水門では、水の浮力や津波、高潮の力を利用して陸上・海底から自動的に起き上がるフラップゲート式も実用化されている。
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