『宇宙戦艦ヤマト 完結編』(うちゅうせんかんヤマト かんけつへん)は、1983年公開の劇場用アニメ映画作品。
宇宙戦艦ヤマト 完結編 | |
---|---|
Final Yamato | |
監督 | 西崎義展 勝間田具治 白土武(チーフディレクター) 高山秀樹(エッフェクトディレクター) 松本零士(監修) 舛田利雄(総監修) |
脚本 | 山本英明 笠原和夫 山本暎一 舛田利雄 西崎義展 |
原作 | 西崎義展 松本零士 |
製作 | 今田智憲 山本暎一(アソシエイト・プロデューサー) 佐伯雅久(制作担当) |
製作総指揮 | 西崎義展(企画も担当) |
ナレーター | 仲代達矢 |
出演者 | 富山敬 麻上洋子 仲村秀生 ささきいさお 青野武 永井一郎 寺島幹夫 緒方賢一 神谷明 野村信次 安原義人 林一夫 古谷徹 納谷悟朗 坂本千夏 小林修 伊武雅刀 田島令子 |
音楽 | 宮川泰 羽田健太郎 |
主題歌 | 「 「ラブ・シュープリーム 〜至上の愛〜」(八神純子) |
撮影 | 清水政夫 |
編集 | 千蔵豊 |
制作会社 | 東映動画 |
製作会社 | ウェスト・ケープ・コーポレーション |
配給 | 東映洋画 |
公開 | 1983年3月19日(35mm版) 1983年11月5日(70mm版) 1985年8月10日(特別篇) |
上映時間 | 152分(35mm版) 163分(70mm版) |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 10億1000万円 |
前作 | ヤマトよ永遠に |
次作 | 宇宙戦艦ヤマト 復活篇 |
通称「完結編」「ヤマト完結編」「ファイナル・ヤマト(Final Yamato)」。ナレーションは俳優の仲代達矢。
宇宙戦艦ヤマトシリーズの第8作目、劇場用映画としては第4作目であり、シリーズの最終作品として製作された。ただし、2009年には続編の『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』が製作されている。
キャッチコピーは「宇宙にひろがる永遠のロマン!ファイナル・ヤマトの熱い感動を―いま、あなたに伝えたい…」。
本作が公開された1983年春は、『うる星やつら オンリー・ユー』、『幻魔大戦』、『クラッシャージョウ』と長編アニメーションの公開が重なり、掛け持ち状態の主要スタッフが多かった。
本作の公開は、1981年4月放送の『宇宙戦艦ヤマトIII』最終回で1982年夏予定と告知されたが、プロデューサーの西崎が映画『汚れた英雄』にかかりきりになり、最初の約1年、作業を進めることができなかった。結局『汚れた英雄』自体は頓挫して他の製作陣が受ける格好となったので、ようやく本作の製作作業が進みだすことになった。しかしこの遅れから公開時期は1982年の冬休みとされ、さらに1983年3月12日に再延期された。結果『クラッシャージョウ』『幻魔大戦』と同日公開と決定される。しかしさらに1週間延期されて19日公開と改められるも、音楽ダビングの予定が遅れたことから完成は18日昼過ぎとなり、19日朝からの全国110館での一斉公開は不可能になった。上映プリントの輸送が遅れたのは、北海道、九州が全館、東北、北陸では一部で、約30館が影響を受けた。早いところでは19日中にフィルムが届いて同日中に半日遅れで上映されたが、翌20日からの公開となったところがあった。
後に再編集された70ミリ・6chステレオ版が完全版として1983年11月5日に公開されている。
劇中音楽では、それまでピアニストとしてヤマトの音楽を支えてきた羽田健太郎も、宮川泰と共に作曲に参加している。羽田の起用は、宮川泰、田代敦巳、西崎義展の3人で話し合い、「マンネリ化を避けるため、新しい血を導入しよう。すべてのジャンルをリフレッシュしよう」と言うことで決まった。ポップス系の音楽家である宮川とは対照的なクラシック音楽出身の羽田の参加、加えて本作自体がスケールの大きいストーリーであることから、本作の音楽は全体的にクラシックの要素を多く取り入れたものとなっている。
本作では、二人の作曲家から同一メニューによる別の音楽的回答を引き出すコンペ形式を導入し、最終的にベストな楽曲が本編に採用された。結果、羽田は主にディンギル側の音楽と、ヤマトの小曲、ラストのピアノコンチェルトなどを多く担当し、宮川は従来通りヤマト側と戦闘曲、イメージ曲などを担当となり、両者の個性を相乗効果で盛り上げることとなった。また、前作『宇宙戦艦ヤマトIII』に引き続き、宮川泰の息子である宮川彬良も、ノンクレジットではあるが参加しており、父親が用意した2種類のメロディを基に「大ディンギル帝国星」を作曲している。
前述の経緯により、楽曲は多数制作されたが、劇中では一切使用されなかった曲も多い。日本コロムビアのCD『YAMATO SOUND ALMANAC』シリーズに収録されているものだけでも、(ボーカル曲のインストゥルメンタル版や同一曲のミックス違いなどを除いても)曲数は90曲前後、演奏時間は5時間を超えている。また、当時手伝いとして参加しており、後にヤマトシリーズで音響監督を務めることになる吉田知弘は、「10時間分の曲を撮った」と述べている。また、CDなどのメディアに収録される際、アレンジ曲や演奏バリエーション曲は、互いに同じ曲名になっているものも非常に多い。
時系列では直前の作品である『宇宙戦艦ヤマトIII』で艦長に就任した古代進は、冒頭で多数の犠牲者を出してしまったことで引責辞任し戦闘班長に降格している。これに伴い、既に亡くなっていたヤマト初代艦長の沖田十三が「死亡は佐渡酒造の誤診で、地球帰還後に手術を受けて密かに療養していた」との理由で復活、再び艦長に就任しており、劇中でも佐渡が自らの誤診を「全国の皆さんに坊主になってお詫びせにゃならんな」と発言するシーンがある。この展開について、沖田役の納谷悟朗は後年の取材で「あれはびっくりしましたよ。なんでおれが生き返るんだって(笑)」と語っている。
古代がヤマトのパルスレーザー砲を「高角砲」と呼んだり、コスモタイガーIIの塗装がそれまでの銀色から大戦後期以後の日本海軍機色(濃緑色、明灰白色)への変更、随伴して出撃した駆逐艦「冬月」を始め、太平洋戦争末期の戦艦大和最後の出撃に随伴した艦と同じ、あるいはそれに近い艦名が使用されている。
また、ヤマトが都市衛星ウルクに着陸して戦闘する描写は天一号作戦において大和が目指した自力座礁して陸上砲台となるという構想を基としているなど、大和の水上特攻をモデルとする演出が多く見られ、ヤマトの最期であることが示されている。
前作『宇宙戦艦ヤマトIII』は制作当時の設定年代は西暦2205年(劇中のナレーションは西暦23世紀初頭と述べるのみ)であり、本作も制作開始当初は、前作の設定年代を守り、西暦2205年とされていた。
西崎は公式資料集にて、冒頭の銀河の大異変は『ヤマトIII』時に創ったガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦を消し飛ばすために登場させたと述べており、このことからも、西崎は『ヤマトIII』と『完結編』とがつながっていることを意識していることが分かる。
西暦2203年、銀河系中心部の宇宙で大きな異変が生じた。異次元断層から別の銀河が現れ、核恒星系付近で銀河系同士の衝突が起こり、多くの星々が消滅した。古代進は「宇宙戦艦ヤマト」の艦長として地球防衛軍の命を受け、この宇宙災害の調査と、その宙域にある友好国「ガルマン・ガミラス帝国」の本星へ赴いていた。だが、生存者を確認出来ないまま宇宙災害の大爆発に飲み込まれ、やむなく危険を冒して無差別ワープを強行し、この宙域から離脱する。
そんな中、地球から3000光年離れたアンファ恒星系にて、銀河を回遊する水惑星「アクエリアス」が現れ、その第4惑星「ディンギル星」を水没させる。偶然ディンギル星の至近距離へワープアウトしたヤマトは、アクエリアスの水に襲われ逃げ惑っているこの星の人々を目撃する。古代達は決死の救助活動を行うが突如ヤマトを大波が襲い、救助したディンギル星の人々を乗せて着艦したばかりだったコスモハウンドが海に滑落、結局1人の少年を救っただけでヤマトクルーに多大な犠牲者を出す結果に終わってしまった。水没したディンギル星から脱出したヤマトだったが、母星たるディンギル星の最期を見届けていた「ディンギル帝国」の艦隊と遭遇。ディンギル艦隊は突如としてヤマトをハイパー放射ミサイルで攻撃し、奇襲を受けたヤマトは全乗組員が死亡あるいは仮死状態となり戦闘不能に陥るが、墜落した惑星で運よく自動操縦システムが起動し、地球へ向け帰還した。
一方、母星を失ったディンギル帝国の長「ルガール」は新たな移住先として地球に狙いを定め、アクエリアスを人為的にワープさせることで母星と同じように地球を水没させ、地球人類を絶滅させた後に移住することを画策する。ヤマトの情報からアクエリアスの存在を確認した地球人類は、接近してくるアクエリアスによる水没を避けるため地球からの一時避難を開始するが、ルガールの息子であるルガール・ド・ザール率いるディンギル機動艦隊による攻撃によって避難船団は全滅。迎撃のため出撃した地球艦隊までもがディンギル艦隊のハイパー放射ミサイルの前に全滅させられ、地球人類は地球に封じ込められていく。
帰還したヤマトから奇跡的に生還した古代進は、自分の判断ミスにより多くの乗組員の命を犠牲にした責任を取るため艦長を辞任するが、ヤマトの第一艦橋で聞いた初代艦長「沖田十三」の声に、再びヤマトに乗り組む決意をする。ヤマト出撃の日、新たなヤマトの艦長が沖田十三であるという驚愕の発表がなされる。沖田はイスカンダルへの航海の途中に死亡とされたが脳死には至っておらず、地球を救うためヤマトに戻ってきたのだった。蘇った沖田のもと、ヤマトは修理が不完全なまま、アクエリアスのワープ阻止のため発進し、月面基地に駐留していた数少ない地球艦隊の残存艦艇がこれに随伴した。
冥王星まで進んだヤマト以下地球艦隊はそこでディンギル機動艦隊と交戦。戦いで随伴していた残存艦艇が壊滅しながらも、ディンギル機動艦隊を撃破したヤマトは単身アクエリアスへ辿り着くが、ワープシステムらしきものを発見出来ずにいた。だが、そこに現れた女神クイーン・オブ・アクエリアスから、アクエリアスのワープの原因、そしてそれを引き起こすディンギル星人の正体が太古に地球から脱出した地球人の末裔であるという事実を知らされる。一方、辛くも生き残ったド・ザールはルガールから最後のチャンスとして残存艦隊を指揮してヤマトを襲撃するが、ヤマトはディンギル艦隊の切り札であったハイパー放射ミサイルを対策してこれを無力化し、逆に波動砲によってディンギル艦隊を壊滅させる。逃亡するド・ザールはルガールの命令で粛清され、ディンギル帝国の拠点「都市衛星ウルク」へと強行着陸したヤマトはワープシステムの破壊を試みるが、奮戦虚しく失敗に終わる。その戦闘の中で、ディンギル星からただ1人救いあげたディンギルの少年や、古代の親友・島も命を落とす。
アクエリアスを追い、ヤマトは地球へと辿り着くが、もはやアクエリアスの地球への接近を阻止することは不可能だった。誰もが最悪の事態を覚悟する中、沖田と古代はヤマトを自爆させ、アクエリアスから地球へ伸びる水柱を断ち切るという計画を考える。反対する乗組員たちを古代は諌め、誰もが悲しみに暮れる中、ヤマトの自沈計画のため、アクエリアスの海上にディンギル星人が建造したトリチウム採取プラントに降り立ち、準備を進めていく。地球へ到着したヤマトは冥王星での戦いで唯一生き残った駆逐艦「冬月」と合流すると、「冬月」へ乗組員を移乗させ、単艦自沈のために発進する。だが、その第一艦橋には沖田の姿があった。自動制御で行われるはずの計画は偽りであり、実は万が一の失敗を防ぐため、自爆は沖田自身による手動操作で行われるものだった。ヤマト乗組員たちが困惑して騒ぐ中、古代と雪、そして真田と佐渡はヤマトと沖田に向かって敬礼し、他の乗組員たちもそれに従い敬礼で沖田とヤマトを見送る。
地球とアクエリアスの中間点に辿りついたヤマトは、アクエリアスから伸びる水柱を自爆により断ち切ることに成功。その後、行き場を失いアクエリアスと地球の間に広がった水(宇宙の海)からヤマトの艦首が起き上がり、そのまま静かに宇宙の海(復活篇では凍っている)へと沈んでいった。
役名は劇中EDクレジットに準拠。
本作には脚本の段階や、製作中、試写後にカットされたシーンが幾つかある。主なものを挙げる。
また、カットされたシーンとは違うが、1985年にタイトーが製作したレーザーディスクゲーム内にて、ゲーム用の新規映像が一部シーンで作られている(ウルク内侵入シーンなど)。これらの映像も現時点では映像ソフト化はされていない。
本作は異版が幾つも存在する。市販ソフトが今日観られる構成に固まったのは日本コロムビアによる“70mm”版リリースと日本テレビの放送以降で、最初期にバップが発売したビデオカセット版は異版の中では最も短く、ディンギル付近に現れるアクエリアスのアップと水没から離脱するウルク、島兄弟のサッカーなどの場面が存在せず別構図のカット、特殊効果適用前のカットが含まれ、パッケージに「オリジナルサウンド」と明記された音声は1chモノーラルで効果音と劇伴の編集も異なる。DVD普及以降公式ルートのソフト化は無いが、ファンの不評をうけ公開期間中に除去された古代と雪のラブシーンが収録されているのはこのヴァージョンだけである。
本作品の第一稿では原稿用紙500枚分という、4時間を超える分量のストーリーが用意されており、編集前のラフ・カットは白身部分を含めて3時間28分に及んだ。
本作は全作画工程を同時進行させるという、これまでに無い製作システムが採られた。これは、絵コンテから仕上げまでの全パートが同時に作業を進めるといった、途方も無いものである。
作画監督の1人である金田伊功は、本作の製作前に先駆けて、通称「ヤマト百態」と呼称される膨大な量のイメージイラストを描いている。これは作画サイドから「これまでに無いヤマトの姿を描きたい」という提案を受けてのもの。
本作ではヤマトシリーズとしては初めてCGを使っている。ヤマト発進の際、真田の席のパネルに映る曲線ゲージがそれである。当時のCGはまだ簡単な模様しか作れなかったが、技術的な背伸びをせずに使うべき箇所に使い、後年に観ても違和感の無い効果を上げている。
アクエリアスから都市衛星ウルクが延々とワンカットでの引きで現れるシーンは、サイズの異なるウルクの背景をマルチで組み、オーバーラップさせながら合成してまとめ上げている。当時はまだコンピュータでカメラを制御しておらず、撮影用の目盛りと撮影スタッフの職人的な勘が頼りだった。結果、途中でややスピードが変わったり、オーバーラップがうまく重ならなかったりと限界があった。しかしこの東映動画の技術は後に改良され、『聖闘士星矢』や『ドラゴンボール』の劇場版で完成型を見ることになる。
アクエリアスに向けた発進シークエンスでは主翼収納など数カット『さらば~』からの流用がみられる。地球を背にしたカットは『さらば』の終盤から持って来ており、船体は損傷し主砲も折れ曲がり、穴が幾つも開いている。
西崎は『完結編』と銘打ったもののヤマトのシリーズ自体はキャラクターを全員入れ替えて続けるつもりだった。そのため舛田利雄らが出した「ヤマトを自沈させる」案には当初難色を示していた。なお本作の絵コンテ担当として安彦良和の再起用も考えていたが、安彦からは「ヤマトからはもう何も吸収するものがありませんので」と断られている。
This article uses material from the Wikipedia 日本語 article 宇宙戦艦ヤマト 完結編, which is released under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 license ("CC BY-SA 3.0"); additional terms may apply (view authors). コンテンツは、特に記載されていない限り、CC BY-SA 4.0のもとで利用可能です。 Images, videos and audio are available under their respective licenses.
®Wikipedia is a registered trademark of the Wiki Foundation, Inc. Wiki 日本語 (DUHOCTRUNGQUOC.VN) is an independent company and has no affiliation with Wiki Foundation.