力士養成員(りきしようせいいん)は、大相撲の番付で幕下以下(幕下、三段目、序二段、序ノ口)の力士を指す。取的(とりてき)や褌担ぎ(ふんどしかつぎ)と呼ぶこともある。ただし、取的という言葉は、序二段・序ノ口などの特に下級の力士養成員について使うことが多い。2000年代以降は若い衆(わかいしゅう)と呼ぶことが多く、褌担ぎという呼び方は死語になりつつある。
本場所の取組は2日間ごとにいずれか1日(七番相撲の場合は13日目・14日目・千秋楽のいずれか1日)の出場で、原則七番相撲までである。幕下上位や序ノ口では人数の関係上、まれに八番相撲が組まれることもある。取組編成は原則としてスイス式トーナメント方式を取り入れていて、番付と成績により対戦相手は機械的に決定される(ただし同成績者の人数が奇数になったり、6番取り終えた時点で全勝や全敗が同じ部屋の力士だけの場合など、原則通りの取組が組めない場合には星違い対戦が組まれる)。
髷は丁髷姿である。ただし例外として、(幕下力士の)十両力士との取組や、弓取式、初切、断髪式の際は大銀杏を結うことが出来る。断髪の際には関取であれば引退相撲において国技館の本土俵、引退興行をしない場合でも国技館やホテルの大広間等が使えるが、最高位が幕下以下の力士は稽古土俵や部屋の千秋楽打ち上げ会場などで行なわれる。本場所で締める廻しは一般的に黒廻しと呼ばれ、木綿製で黒色で、稽古用と兼用して使われる。さがりは糊付けされておらず紐そのものの状態であるが、色は自由に決められる。取組においては、塩撒きは基本的に行わず(ただし幕下で取組進行が早い場合には時間調整の意味で行うこともある)、また力水も使用しない。
正装は全て着流しだが、三段目以上の力士は羽織の着用が、さらに幕下力士は外套、博多帯(三段目までの帯はレーヨンまたはキュプラ製)がそれぞれ許される。履物についても序二段までは素足に下駄。三段目で雪駄を履けるようになり、さらに幕下では足袋の使用も許される。ただし、雪駄や足袋には厳格な規定があり、規定に合わないものは関取でなければ許されない。
私生活では、ハングリー精神を養い相撲道に専念させるため、関取との徹底した差別化が成されている。ちゃんこ番など部屋での雑用や大部屋生活の強制、付け人として部屋や一門の関取や親方の身の回りの世話、さらには結婚することが許可されないなど、生活のほぼすべてが相撲にかかわることになっている。養成員という立場から、各場所ごとに場所手当と本場所の成績に応じた幕下以下奨励金が支給されるのみで、給与という名目での金銭支給は無く、成果賞金である力士褒賞金も与えられない。場所手当と幕下以下奨励金を合計しても、関取の月額給与・力士褒賞金よりも金額が格段に少ない。力士養成員の敬称は、一般人と同じ「○○さん」が一般的である。一人前でないという理由から、幕下以下の力士はサインはできないという不文律がある(力士単独、力士とファンが一緒に写った写真撮影と握手は可能)。また場内アナウンスでも、番付が紹介されない、外国出身力士の場合出身地の読み上げが国名のみとなる、場内アナウンスの決まり手発表が幕下上位5番を除き簡略化される、物言い後の説明で審判長が四股名を読み上げないなど、関取とは待遇が大きく異なっている。
上記の理由から、東幕下筆頭と西十両最下位の半枚差であっても「天と地ほどの差」と言われている。十両に昇進すると養成員に比べて大きく優遇されるため、引退時の思い出として「十両になれた時が一番嬉しかった」と答える力士も多い。
もっとも、力士は地位に関わらず全員が公益財団法人の専従職員であり(親方や行司等も含め、すべての協会員は協会の職員とされる)、力士養成員は手当や奨励金を除いて無給でありながら健康保険や厚生年金の被保険者である立場は保障されていて、その保険料も全額協会負担であり、地位に関係なく社会保険の恩恵を受けることは可能になっている。
細則上では「養成員」の名称だが、他のプロスポーツと違って、成果を出せないことによる引退強制は無いため、2000年代以降、40歳を超える力士養成員が増加している。この背景として、トレーニングや治療の充実、ちゃんこ長や若手力士の相談相手として重宝される点、マスコミ対応に精通している点などがあるが、前述のように社会保険の恩恵が受けられることも要因と考える人もいる。
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