龍宮(りゅうぐう、竜宮とも書く)または竜宮城(りゅうぐうじょう)、水晶宮(すいしょうきゅう)、水府(すいふ)は、中国や日本各所に伝わる海神にまつわる伝説に登場する海神の宮。日本風のよみをして龍の宮(たつのみや)、龍の都(たつのみやこ)、海宮(わたつみのみや)などとも呼ばれる。
日本各地の昔話に登場するが、湖沼や川、洞窟が龍宮への通路となっているものも存在しており、伝承地は必ずしも臨海部であるとは限らない。
海の中に存在すると考えられているものであり、多くは海神あるいは水にまつわる神などがその場の主(ぬし)として存在している。多くの伝説・昔話に共通する点に、おもむいた者へ宝物(多くは礼品として)を与えるという点がある。
但し、必ずしも海中に存在しなければならないものではなく、日本の中世文学である『平治物語』や『源平盛衰記』では、滝壺の奥にある陸上に竜宮が存在する設定となっている。
中国の伝説や物語では、竜王があるじであるとして登場する。海域などによって各地にいくつもの竜王が存在する(四海竜王など)とも語られる。仏教や道教・陰陽道の説話にも広く龍宮は見られる。
「わたつみのかみのみや」とよむ。わたつみは「海の神霊」の意味で、海宮また海神宮、海童宮 とも書かれ「わたつみのみや」とも称される。『古事記』や『日本書紀』 にみられる海神の住んで居る宮殿の名称。記紀神話や寺社関係の文書類において記されるが、宮殿の描写などには中国文化を通じて摂取された龍宮の影響が色濃く強くみられる。
浦島太郎に登場する『万葉集』における浦島太郎のことをうたった歌のなかでも、龍宮が海若神之宮(わたつみのかみのみや)と表現されている箇所もある。いっぽうで、12世紀に原本がつくられたとされる『彦火火出見尊絵巻』では「海の神」について「龍王」 という表現を用いており龍宮と海宮が早い段階から同一の存在としてあつかわれていたことが考えられる。日本各地で水の中の世界を「龍宮」と称する呼び方が多用されているのも、その延長線上にある。
乙姫あるいは龍王が統治する世界として水中に存在するとされている宮殿あるいは世界。日本の物語(『お伽草子』など)や昔話・伝説では「わたつみのみや」などにくらべ「龍宮」であるとする設定が数多くみられる、そのため、龍宮と通じた場所であるとする伝説が残されている地は各地にひろく点在しており、以下にあげた例以外にも全国各地に無数に存在している。能では「上は非想の雲の上。下は下界の龍神」(『和布刈』)など、下界(げかい)という言葉が使われたりもする。これは仏教における上界(浄土や天道)との対語であり龍たちの世界が欲界に属するというもので、仏典に由来するもの。
「にらい」とよむ。奄美や沖縄などで語られる海の向こうにあるとされる異世界・ニライカナイをさす言葉であるが、昔話の中では龍宮と同義語として使われることもある。
日本各地の神社や寺院には、その建立の由来を説いた物語の中に龍宮を登場させるものが数多く存在する。いずれも龍宮と関与することにより何かしらかの宝物を授与されたあるいは獲得して来たことが話のなかに組み込まれていることが多い。龍樹の経典入手や孫思邈の医術獲得などインドや中国での先行する説話からの影響も、日本で説かれていった縁起物語の中には色濃くうかがえる。また、龍宮からの要請で建立されたと説かれている神社もあり、寺社縁起のひとつである『広瀬社縁起』では池の八万由旬もの深さの底に存在する龍宮城から来たと名乗る異装の麗人があらわれて建立の要請をしている。
中国において神仙たちの住む地とされた蓬萊(ほうらい)などの仙境は海の果てにある島であると考えられた。海中に存在するという点からその中に龍宮が取り入れられ、道教や説話文学などを通じ中国から移入され、「浦島太郎」や「海彦と山彦」における龍宮はかたちづくられていると考えられる。
中国の洞庭湖周辺に伝わる龍女説話と仙境淹留(えんりゅう)説話に分類される伝説を下地に、日本化された物語が「浦島太郎」であると推察されている。中国での説話は、いずれも溺れる少女を救い、その恩返しとして、水中の別世界に案内され、結婚に至り、日が過ぎて、故郷を懐かしみ、贈り物をもらい故郷へ帰るという展開である。
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