株式会社ジャパンディスプレイ(英称:Japan Display Inc.
種類 | 株式会社 |
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機関設計 | 指名委員会等設置会社 |
市場情報 | |
略称 | JDI |
本社所在地 | 日本 〒105-0003 東京都港区西新橋三丁目7番1号 ランディック第2新橋ビル |
設立 | 2002年(平成14年)10月1日 (株式会社日立ディスプレイズ) |
業種 | 電気機器 |
法人番号 | 6040001059563 |
事業内容 | 中小型ディスプレイデバイス及び関連製品の開発、設計、製造、販売 |
代表者 | スコット・キャロン(取締役代表執行役会長兼CEO)) |
資本金 | 1億円 (2022年3月31日現在) |
発行済株式総数 | 普通株式8億4,616万5,800株 優先株式16億9,200万株 (2020年3月31日現在) |
売上高 | 連結:2,707億46百万円 (2023年3月期) |
営業利益 | 連結:▼443億86百万円 (2023年3月期) |
経常利益 | 連結:▼429億24百万円 (2023年3月期) |
純利益 | 連結:▼258億18百万円 (2023年3月期) |
総資産 | 連結:2,226億96百万円 (2023年3月31日現在) |
従業員数 | 連結:4,600人 (2023年9月30日現在) |
決算期 | 3月31日 |
会計監査人 | 有限責任あずさ監査法人 |
主要株主 | いちご78.19% 株式会社INCJ 5.51% 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 1.79% 日亜化学工業株式会社 0.9% 羽田タートルサービス 0.25% 内海章雄0.24% (2023年9月130日現在) |
主要子会社 | JDI Display America,Inc. 100.0% JDI Europe GmbH 100.0% JDI Taiwan Inc. 100.0% JDI Korea Inc. 100.0% JDI China Inc. 100.0% JDI Hong Kong Limited. 100.0% Suzhou JDI Electronics Inc. 100.0% Nanox Philippines Inc. 81.0% (2022年3月31日現在) |
関係する人物 | 大塚周一(初代社長兼CEO) 本間充(元会長兼CEO) 有賀修二(元社長兼COO) 月崎義幸(元社長兼CEO) 菊岡稔 (元社長兼CEO) |
外部リンク | www.j-display.com |
特記事項:主要株主は所有議決権数割合による |
日本の大手ディスプレイメーカーで、主に車載などに使われる小型液晶ディスプレイ(LCD)を製造している。2021年度のディスプレイ売上高ランキングでは世界9位で、約1.73%のシェアを占める。かつてはスマホ向けディスプレイメーカーとして知られ、2018年まではApple社の高級スマートフォンで当社のLCDが採用されていたことにより、小型LCDの出荷額で世界1位を誇った。しかし、2019年以降にモバイルにおいて有機ELディスプレイ(OLED)の普及が進むにつれて、当社のLCDのシェアは減少し、また当社はスマホ向けOLEDの量産ができないため、2023年にモバイルから撤退。それ以後は車載および他社への技術ライセンシング事業に主軸を移している。
韓国・台湾勢との競争による液晶パネルの価格下落で、赤字が続いていた(2012年当時)日本の各電機メーカーのディスプレイ事業のうち、スマホ向けに利益が見込める中小型液晶パネル事業のみを、日本政府系の投資ファンドである産業革新機構の主導で再編した会社である。これによって、中小型液晶パネルで世界シェア1位(2013年当時)の「日の丸液晶」パネルメーカーが誕生した。
しかし誕生後も黒字化した年度はなく、1度も配当はなく、2018年には株価も100円を切り、「上場企業の体を成していない」と、経営陣の責任感欠如を厳しく指摘されている。官民ファンドから4000億円以上の支援を受けながら、7年で債務超過1000億円に達し、それでも国策会社としてつぶすわけにいかないという、2020年の時点で日本を代表するゾンビ企業とされ、日本の経済誌である週刊ダイヤモンド誌および週刊東洋経済誌はいずれも「ゾンビ」と評価している。
2019年よりいちごアセットグループの支援を受け、経営再建を試みている。2023年現在、10期連続赤字見込で6000億円近くの損失を出しながらも、いちごの支援により、東証プライムの上場企業として無借金経営となっている。
2023年現在、大株主のいちごが株式の殆どを握っており、株式の流動比率の低下により東証プライムにおける上場維持基準未達の状態ではあるが、あくまで経営再建のための一時的な状態としている。次世代 OLED「eLEAP」や超高速バックプレーン技術「HMO」等の「世界初、世界一」の独自技術を多数所有していることから、黒字化の見通しは付いているとのことで、2022年5月に公表した成長戦略「METAGROWTH 2026」に基づき、2026年度に営業黒字化、2028年3月末までに上場維持基準への適合に向けた計画を進めている。
2020年まではApple社との取引が大きく、2016年には依存率が5割を超え「iPhone一本足打法」と評された。アップルとしてもサムスンディスプレイ、LGディスプレイ、シャープなどと並ぶ液晶ディスプレイの主要サプライヤーであった当社に支援を行い、2016年に稼働したJDI白山工場(現・シャープ白山工場)の建設に際してはアップルより約1700億円の融資を受け、また国策ファンドおよび民間のスポンサーの撤退により経営危機に瀕した2019年にはアップルより約400億円の支援を受けた。
Apple社とのビジネスは、元々は東芝モバイルディスプレイ社(TMD)がアップル社の資金提供により建設した石川工場(現・JDI石川工場)においてiPhone用ディスプレイを製造しており、それをJDIが引き継いだ形である。TMD社は2008年発売のiPhone 3G以降のスマホにおいて、ECBモード(TN-TFTに広視野角位相差フィルムをつけたもの)の液晶ディスプレイをLGDとともに提供していた。
TFT液晶を高精細化する低温ポリシリコン(LTPS)の技術は、東芝が1997年に世界で初めて実用化した。また、アクティブマトリックス液晶の一種である広視野角の横電解方式であるIPS方式は、日立製作所が1995年に独メルクとともに世界で初めて実用化した物であり、これらを組み合わせた高品位な液晶パネルは、東芝モバイルディスプレイ及び日立ディスプレイズがJDI設立前より主力としてきた。さらに、液晶パネルとタッチセンサーを一体化したタッチパネルの技術「Pixel Eyes」(TFTアレイ基板上の画素内部にタッチセンサー機能を組み込んだ「インセル型」)を、ソニーモバイルディスプレイ(SMD)がソニー厚木研究所で開発していた。
これらの技術を持つディスプレイメーカーを2012年に全て統合したJDI社は、2012年には競合他社に先駆けてインセル型LTPS液晶の安定量産に成功する。これは液晶パネルの上にタッチパネルを外付けする従来の「外付け型」や、タッチセンサーを液晶の偏光板とガラス基板の間に載せた一体型タッチパネルの「オンセル型」よりも薄く明るいスマホを作れるため、Appleが2012年に発売したスマートフォンiPhone 5から2016年のiPhone 7まで、Apple社の最上位スマホで採用されていた。
しかし2017年発売のApple社の最上位スマホ「iPhone X」では他社製の有機ELディスプレイ(OLED)が採用されたことにより、JDI製液晶の採用は下位スマホでの採用に留まった。その後もiPhoneシリーズにおけるOLEDの採用が拡大するにつれて、サムスンD、LGD、BOEのようなOLEDの技術を持たない当社はApple社との取引が縮小し、2021年には1500億円を失注するなど、元々悪い経営がさらに悪化した。
2023年には車載に集中するという名目で、ついにモバイルからの撤退を発表した。
法人としては、1935年に千葉県茂原市に設立された理研真空工業を源流に持つ。九十九里平野の地下には、古代に堆積したカジメが分解されてできたメタンとヨードが埋まっており、メタンの純度が高い天然ガスが湧くので真空管の製造に適していることから、理研真空工業は、1936年より茂原工場にて真空管及び電球の製造を開始した。1943年に太平洋戦争における戦時統合で日立製作所と合併し「日立製作所茂原工場」となり、1958年よりブラウン管ディスプレイの製造を開始した。茂原市はまた、世界有数のヨードのメーカーが集積しており、地下のかん水に含まれるヨードを液晶の触媒として使えることから、1974年に蛍光表示管の製造を終了して電卓用の液晶パネルの製造を開始、1994年より液晶ディスプレイの製造を開始し、1996年より茂原工場にて世界初となるIPS液晶の量産を開始した。
2002年に日立製作所からディスプレイ事業に関わる部門が分社化し、日立ディスプレイズとなった。日立ディスプレイズ茂原工場は2005年に「IPSアルファテクノロジ」として分社化され、アモルファスのG6ラインは、一時期、パナソニック(パナソニック液晶ディスプレイ)の傘下にあったが、「ジャパンディスプレイ」の名のもとに日本の中小型ディスプレイ会社を集約するため、2012年に産業革新機構が買収し、同G6ラインをテレビ向け大型パネルの製造からスマホ向け中小型液晶パネルのLTPS製造ラインに転換した。
産業革新機構の主導で設立された「ジャパンディスプレイ」社が、ソニー・東芝・日立の3社のディスプレイ部門を事業子会社として引き継ぐ形で誕生し、2012年4月1日に事業活動を開始した。2013年4月、ジャパンディスプレイイースト(旧社名・日立ディスプレイズ)を存続会社として、ジャパンディスプレイおよび事業子会社3社が合併し、各社の統合が完了した。2014年3月19日、東証1部に新規上場。
2009年に東芝に統合されたパナソニックの液晶部門(旧・東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社、その後、東芝モバイルディスプレイ株式会社)、同じく2011年にソニーに統合されたセイコーエプソンと三洋電機の液晶部門(三洋エプソンイメージングデバイス株式会社)など、それ以前に各社に統合されていたメーカーを含めると、ホンハイ傘下となったシャープや、パナソニック傘下のパナソニック液晶ディスプレイ(旧・IPSアルファ。日立、東芝、パナソニックの3社合弁)、京セラ傘下の京セラディスプレイ、三菱電機傘下のMDTIなどを除く日本の大半のディスプレイメーカー(ソニー・東芝・日立・トヨタ・三洋・エプソン・パナソニックの一部・キヤノン)の液晶部門が統合され、さらに政府系ファンドが経営に関与する、文字通りの「日の丸液晶」として設立され、2014年3月19日に東京証券取引所一部上場を果たす。2014年7月よりIPS-NEO(光配向膜技術とネガFFS液晶)の量産を開始し、iPhone 6以降継続生産している。
しかし、元々成長し切った会社の寄せ集めであり伸び代に乏しかったため、設立当初より赤字が続き、設立から5年目となる2017年に構造改革が行われた。設立の経緯上、生産部門以外の機能を自社で持たない、事実上の「国策企業」であるため、経営方針がトップダウン式に決定される競合他社とは異なり、全ての経営計画において経済産業省と産業革新機構の承認が必要という意思決定の遅さがあり、また解雇がそのままアベノミクスの失敗を想起させるため、シャープ以外の日本のディスプレイメーカーのうち、大半の人員と工場を丸抱えしているにもかかわらず、リストラができないという「負の遺産」があるとの危機意識が、2017年の時点で存在した。
スマホ向けの小型液晶で高いシェアを持っていた。主にスマホのディスプレイに使われる低温ポリシリコン(LTPS)TFT-LCDパネルの出荷額ベースの市場シェアは、創業から2018年まで世界1位であった。例えば2018年度の世界シェアは17.6%で、後に2019年度に首位となる京東方科技集団(11.9%)に差をつけて上回っていた(IHS Markit調べ)。また、LTPS TFT-LCDパネルの出荷量ベースの市場シェアでも、創業から2017年まで1位であり、2018年の時点でも1位の天馬微電子(22%)に次ぐ2位の18%という高いシェアを誇った。車載向けの小型液晶でも18.1%で世界1位(2017年度)であった。高級なLTPS TFT-LCDパネルを主軸とするため、LTPS以外も含めた小型LCDパネル市場全体における当社の出荷量ベースの市場シェアは低く、例えば2018年度は5.0%で世界8位であった。
一方で、当社は有機ELパネルを生産していないため、中小型パネル市場全体における出荷額ベースのシェアでは、有機ELパネル最大手のサムスンディスプレイに水をあけられていた。例えば2017年度において、中小型パネル市場1位であるサムスンの市場シェアが33%なのに対し、当社の市場シェアは13%で世界2位であった。なお、データの上では「中小型向け液晶でトップ」となっているが、実際はパソコンやタブレットを中心とする中型パネルのシェアは全くなかった。また、大型パネルは生産しておらず、全くシェアが無かった。例えば2016年(平成28年)度において、スマホを中心とするモバイル向けが8割、とりわけiPhoneへの依存率は5割を超えるなど、スマホ向け小型液晶事業に、さらに言うとiPhoneと言う1つのスマホに極度に依存していた。
2016年度には、2017年3月発売予定のゲーム機Nintendo Switchにディスプレイを供給したため、2016年度だけはゲーム機向け液晶でもシャープに次ぐ世界2位のシェアがあった。ただしローンチ版Nintendo Switchの液晶を生産したJDI茂原工場の4.5世代ラインは2016年いっぱいで閉鎖され、その後はスマホ用の狭額縁液晶「フルアクティブ液晶」の生産ラインに振り分けられた。なお、当社が有機ELに対抗するため社運をかけて開発した「フルアクティブ液晶」は、有機ELに匹敵する性能を持ちつつ安価であるため、有機ELへシフトするスマホ業界を液晶へ引き戻す役割を果たすことが2016年12月の段階では想定されており、量産品は2018年発売の廉価版iPhoneである「iPhone XR」などに搭載され、その人気によって当社は2018年度に5年ぶりの最終黒字となることが2018年11月の段階でも想定されていた。
2016年(平成28年)に、主にパソコン向けの中型ディスプレイに参入した。
なお、2019年よりBOEやCSOTなどの中国メーカーがHuawei、Oppo、VIVO向けのLTPSパネルの生産を拡大したことと、中国・韓国メーカーが有機ELディスプレイの生産を拡大したことにより、相対的に中小型パネル市場における当社のシェアは出荷量・出荷金額共に縮小し、そのため2020年現在もiPhone向けの液晶が頼みになっている。
JDIは日本のかつての各ディスプレイメーカーの液晶ディスプレイ部門のみを切り離して統合した、あくまで液晶ディスプレイの専業メーカーであるため、アップル社が自社のスマホに有機ELディスプレイを採用した2017年の時点で、有機ELディスプレイの量産ラインを全く持っていなかった。アップル社との取引が当社の売上高の5割を占めるという一本足経営に加えて、アップル社が2017年度のiPhoneから有機ELモデルをフラッグシップとして販売しているにもかかわらず、当社には有機ELディスプレイを生産する予定が無い点が不安視されていた。
「蒸着方式」の有機ELの研究自体はしており、資金さえあれば有機ELの製造工場を建設して量産化まで到達できる見込みが有ることをアピールしているが、将来の投資資金よりも当座の運転資金を調達すべき状態の当社には有機ELの量産工場を建設できるような資金が無く、2018年時点で既に当社に4000億円以上の投資をしている革新機構としてもこれ以上の投資はしにくく、また仮に量産の「見込みがある」としても、2018年時点では有機ELディスプレイを既に量産しているメーカーは世界中に数多くあり、当社は他社より数年遅れの後発組となるため、あえて資金を投じる外部のスポンサーもいない点が問題となっていた。なお、当社が持つ有機ELの技術に関しては、2013年度中には量産が可能なレベルに達しているとのアナウンスを2011年に出しており、それから8年後の2019年にも量産技術を「ほぼ確立」したとのアナウンスを出していた。
一方、JDIとは別に、日本のかつての各ディスプレイメーカーの有機EL部門を切り離して政府系ファンドの主導で統合した「日の丸有機EL」であるJOLED社があり、当社は長年にわたりJOLEDと戦略的提携を行っていた。当社はJOLED社の株式を最大で27.2%保有しており、JOLED社は当社の持分法適用関連会社であった。JOLEDの有機ELディスプレイの量産計画は順調に進んでおり、またJOLEDの「印刷方式」は当社の(競合他社から数年遅れでありながら、いまだ量産化の目途が立たない)「蒸着方式」と異なり世界初の技術であり、コスト的にも有利であるため、JOLED社の株式を51%まで追加取得し、子会社化することで有機ELディスプレイ事業に進出する計画が一時はあった。しかし、資金不足のため、2018年3月に断念したことを発表した。JDIによると、JOLEDとは「すでに強固な協力関係を構築しており事実上のシナジーの実を確保している」ため子会社化する必要はないとのことで、また車載やVRなどで液晶事業の今後の成長が期待されるので「液晶の需要は底堅い」との見通しを2018年の段階では示していた。なお、当社の経営悪化に伴い、2019年には447億円の支援と引き換えにJDIの持つJOLEDの全株式が産革に譲渡された。
産業革新機構からは、2014年(平成26年)の設立時に2000億円、2016年(平成28年)から2017年(平成29年)にかけても750億円の投資が追加でなされており、赤字の民間企業に数千億円もの国の金を投入し続けることに対して、「国がやるべきことなのか」との批判もあった。2017年には1070億円の融資がなされ、2018年にも200億円の支援がなされた。
2017年(平成29年)には、有機ELパネルと同様に曲げることができる液晶パネル「フレキシブル液晶パネル『フレックス』」や、2017年時点の有機ELパネルを超える透過率80パーセントの液晶パネルを開発するなど、有機ELに関してはともかくとしてLTPS液晶の技術に関しては世界最先端のメーカーの一つであるということをアピールしていた。2018年より、当社は「脱スマホ依存」を進め、液晶パネルにバス停を組み合わせた「スマートバス停」や、ヘルメットに液晶パネルを取り付けたヘッドマウントディスプレイなど、自社の液晶パネルを用いたBtoCの新分野の開拓を盛んに進めていた。またセンサーデバイス事業に取り組む予定を発表するなど、ディスプレイ専業から脱却の動きもすすめていた。
2018年9月25日、産業革新機構を改編した産業革新投資機構(INCJ)が発足したが、JDI以外にもルネサスエレクトロニクス等、経営不振の会社への投資を強いられる産業革新投資機構の取締役陣と、経済産業省の対立が表面化し、2018年12月10日、産業革新投資機構の民間出身の取締役全員が辞職。辞職した元・社外取締役の星岳雄が「ゾンビ企業の救済機関」と批判した革新機構は、ついに機能を停止した。同日、2014年の上場時の公募価格が900円で始まった当社の株価が、ついに50円台となった。
2019年4月11日、中国最大の投資ファンド・嘉実基金管理(ハーベスト・ファンド・マネジメント)系の投資会社であるハーベスト・テック、台湾の電子部品メーカー宸鴻光電科技(TPK)、台湾の金融大手富邦金控(Fubon Financial Holding)グループの創始者である蔡一族による、投資ファンドの3社で構成される中台企業連合「Suwaコンソーシアム」は当社に対して800億円の金融支援を行い、それまでの筆頭株主であった産業革新投資機構に代わり、議決権の49.8%を持つ筆頭株主になることで当社と合意した。
中台企業連合の支援を受けることで一旦は合意したものの、当社は事実上の政府支援が付きながら「自己資本比率は視力検査並みの水準」と東京商工リサーチが評価するほどの経営状態であり、想定以上の経営の悪化から、中台企業連合が支援を取りやめる可能性もあった。そのため、2019年4月には産業革新投資機構から200億円の融資、5月には450億円の支援を受け、またアップル社からも3か月ごとの借金返済(もし返済が滞ればアップルがJDI白山工場を差し押さえる契約)を猶予する約束を取り付けるなど、関連組織から支援を得たうえで、改めて中台企業連合の傘下に入ることを目指すこととなった。
2019年4月12日、2019年夏を目途にJDI茂原工場にて有機ELの量産を行うことを発表。アップルウォッチの2019年秋発売モデル向けに量産を開始した。
韓国・中国メーカーのスマホ向け有機ELの量産拡大により、液晶の需要回復の見込みが立たないことから、2019年7月にJDI白山工場を停止し、1200人のリストラを行う。
2019年6月、中台企業連合の1社であったTPKが出資を取りやめ、富邦グループも離脱を表明。同月、中国の嘉実基金は522億円の出資を実施した、アップルがこのうち107億円を負担すると発表された。さらに香港のファンドであるオアシス・マネジメントからの161億円の出資も受け入れ、同年8月7日に中国香港企業連合と正式に資金支援契約を締結したことを発表した。
2019年8月9日、6月末の時点で772億円の債務超過に転落したことを発表。9月26日、嘉実基金管理グループが支援見送りを表明。同日、アップルが支援を200億円に積み増すことを発表。10月、アップルが支援をさらに200億円追加することを発表。
2019年12月、約5億7800万円を着服した元幹部が自殺。この職員が経営陣の指示によって不適切な会計を行っていたという不正会計疑惑が明るみに出る。これを受け、第三者委員会が立ち上げられて調査が行われた。2020年4月に公表された調査報告書によると、上場直後から不正会計が行われており、2019年3月末に自己資本がマイナスに陥っていたことなどが判明したが、経営陣の責任は「意図的に行われたものであるかは不明」ということで不問となった。
具体的に判明した不正は以下の通りである。
自殺した元幹部は同僚に慕われ部下からの信頼に厚かった人物であったといい、一連の不正会計は会社やCFOを守りたいという善意が暴走した末の出来事であったという。また、元幹部以外に経験豊富な経理が会社におらず、その影響で内部監査が機能していなかったという統制上の問題も指定されている。
2020年1月31日、独立系投資顧問会社であるいちごアセットマネジメント株式会社が当社に対して最大計1108億円の金融支援を決定し、いちごを筆頭株主として改めて再建を目指すこととなった。さらに2020年8月に行われた株主総会で、いちごから最大604億円を調達することなど決めた。これにより、債務超過は解消された。
2020年8月、休止中のJDI白山工場をアップルとシャープへ713億円で売却することを発表。同年10月に売却を完了させた。
いちごアセットとしては、2020年8月の時点で「2年以内の黒字化」を目指していたが、その後も黒字化の目途は立たず、2021年には2152億円の資本金を取り崩して1億円に減資、2023年2月にはいちごトラストから1016億円の支援を受けた。
なお、創業以来赤字であり、本来なら決算資料において赤字の要因と経営再建の見通しを株主に明確に説明すべきであるのに「人々の生き方をより豊かにするPersonalTech企業へ」「唯一無二の技術」などと抽象的な言葉を並べる、ポエムすぎる「決算資料」が2021年頃より話題となり、投資家に動揺が走った。
2023年3月27日、JOLEDが民事再生手続きの申し立てを行い、JDIはJOLEDの事業を承継すると発表した。これにより、JDIが2019年に447億円の支援と引き換えに切り離したJOLEDの資産が再びJDIの物となった。
2022年6月、JDIは「次世代有機EL」と称する技術「eLEAP」を発表。創業以来8年連続で赤字が続くJDIとしては、これを黒字転換のための「ゲームチェンジャー」と想定し、他社との協業や技術のライセンス販売を強化する戦略を打ち出した。
2023年4月、JDIは中国のディスプレイメーカーであるHKC社との提携を発表した。HKC社は2023年時点で液晶パネルの出荷規模で世界3位の大手ディスプレイメーカーで、政府系機関が2割の株を持ちながら未だに液晶頼みで有機ELの量産化に踏み切れておらず、ディスプレイ売上高では中韓台大手に引き離されるなど、ディスプレイ業界においてJDIと大体同じ地位にあるが、「次世代有機EL」の技術を持つとされるJDIと組むことで巻き返しを図る。共同で中国に工場を建設し、量産化は2025年頃と想定している。
しかし、2023年9月、HKCとの交渉が合意できず、提携の覚え書きMOUを解除したと発表された。
2023年12月、経済産業省系の投資ファンドであるINCJが保有株を売却し、保有比率は大量保有報告書への報告義務のない5%以下となったことが判明。これにより投資家心理が悪化し、株価が10円台となった。
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