アジア・太平洋戦争(アジア・たいへいようせんそう、英: Asia-Pacific War)は、1941年(昭和16年)12月8日から1945年(昭和20年)9月7日にかけて大日本帝国が遂行した戦争の呼称。
「太平洋戦争」や「大東亜戦争」に代わる呼称として提唱された。
この項目では「アジア・太平洋戦争」(アジア太平洋戦争)という呼称に関する議論について記述する。
戦争の経過や使用兵器・人物などに関しては「太平洋戦争」を参照。また、呼称に関する議論については「支那事変」「大東亜戦争」も参照。
戦争当時は「大東亜戦争」が公式名称であり、敗戦後は連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) の指令により「大東亜戦争」の呼称が軍国主義と切り離せないという理由により使用が禁止されたため、「太平洋戦争」という呼称が広く使用されるようになり、「大東亜戦争」という呼称は主に大日本帝国や大東亜共栄圏を肯定する論者によって用いられている。しかし、「太平洋戦争」はもっぱら対米戦争の局面のみを示し、この戦争が中国・東南アジアを含む戦争であったことを正しく反映していない、他方「大東亜戦争」は「大東亜共栄圏」を正当化する名称で現在では不適切であるとして、「アジア太平洋戦争」の呼称が1980年代に提唱された[1]。
「アジア太平洋戦争」、「アジア・太平洋戦争」の両方の表記がある。もともと上記の理由で「太平洋戦争」に代わる呼称として提唱されたが、満洲事変から敗戦までを含む戦争全体の呼称として用いる者もいる。
このほか、第二次世界大戦より前の1879年(明治12年)に「太平洋戦争 (Guerra del Pacífico)」と呼ばれる戦争が南米で発生しており、日本語名を見ただけでは区別できず、非常に紛らわしいという大きな欠陥を抱えている。先に「太平洋戦争」と呼ばれるようになったのは当然ながら南米の太平洋戦争である。しかも南米の太平洋戦争と第二次世界大戦の太平洋戦争には全く関連性がない。「アジア太平洋戦争」はこれらの呼称上の問題点を解決しているといえる。
また、1931年(昭和6年)の満洲事変から太平洋戦争までを一体のものと捉える「十五年戦争」という呼称があるが、徳田秋声の『縮図』にも、1941年(昭和16年)のことを書いたときに「戦争が足かけ5年続いている」という表現をとっているなどの証言がある。この呼称は岩波書店の出版する図書のタイトルや、左翼的な考えを持つ一部の歴史教科書などにおいて使用されている。また、文学研究者では西田勝なども使用している。
この戦争の性格として次の3点が挙げられる。一つ目は対英戦と対米戦の関係、二つ目は日米戦における戦争責任問題、三つ目はこの戦争を日本側から見た時、欧米列強のアジア支配からの解放を主張して開始されたのかという問題である。
戦争目的については、1941年(昭和16年)12月8日の午前11時40分に公表された宣戦の詔書では「帝国の存立亦正に危殆に瀕せり。事既に此に至る。帝国は今や自存自衛の為、蹶然起って一切の障礙を破砕するの外なきなり」と宣言されており、明らかに自衛のための戦争という認識であった。また、「宣戦の布告に当り国民に愬う」(12月8日の午後7時30分からのラジオ放送で発表された奥村喜和男情報局次長の談話)では「国民諸君、同朋諸君 今正に時は至ったのであります。われらの祖国日本は今、蹶然立って雄々しく戦いを開始いたしたのであります。(中略)アジアを白人の手からアジア人自らの手に奪い回すのであります。アジア人のアジアを創りあげるのであります」とアジア解放のための戦争という位置づけをしている。「自衛のための戦争」論と「アジア解放の戦争」論が併存していた。
一方で問題点も指摘されており、太平洋戦争の期間だけでなく日中戦争の期間を含めてこの名称を用いるものがいるなど混乱が見られることや、「太平洋戦争」や「大東亜戦争」という名称を否定し置き換えるという観点から新たに作られた用語であるため、「歴史的状況から離れている」、「「大東亜戦争」とは逆のイデオロギー性を含んだ言葉である」という批判もある。
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