転向療法

それにもかかわらず、論者と支持者は、同性愛者が異性愛者になるのにある程度の成功を収める、いわゆる「脱ゲイ」（ex-gays）の事例レポートを提供している。米国、英国の医学会、科学者、及び政府機関は、転向療法に対する懸念を表明し、潜在的に有害であると考えている。

アメリカ精神医学会は、同性愛そのものが精神障害であるか、または患者が性的同性愛指向を変えるべきであるという前提に基づく精神医学的処置と、開業医による性的指向を非倫理的に変更しようとする試みに反対している。また、ゲイとレズビアンの人々の統合に関する議論では、「個人の動機や性格を疑問視すること」をまるで科学的なものであるかのように扱うことから、転向療法の進歩は性的指向に関する非科学的見解を広めることによって社会的害を引き起こす可能性があることを強調している。米国外科医のデイビッド・サッチャー（英語版）博士は2001年に「性的指向を変えることができるという科学的証拠はない」との報告を出した。

今日の転向療法の最も重要な推進者は、同性愛治療を「福祉」の問題と捉えるのではなく、治療に対する宗教的正当性を主張する、キリスト教根本主義団体やその他の組織である傾向がある。世俗的に転向療法を推進する主な組織は、宗教団体としばしば提携する、同性愛の研究と治療のための全国協会（英語版）（NARTH）である。

1981年以前の米国および西ヨーロッパで転向療法に用いられた技術には、アイスピックによるロボトミー、ホルモン療法による化学的去勢、「手および/または性器への電気ショックの適用」、「ホモエロティック刺激の提示と同時に投与される悪心誘発薬」のような嫌悪療法、マスターベーションの再製が含まれていた。

1990年代後半には無免許医による嫌悪療法の報告があるが、最近の米国で行われている臨床技術だと、カウンセリング、可視化、社会技能訓練、 精神分析治療、「祈りと集団のサポートと圧力」といった霊的介入などに限られている。「修復療法」（Reparative therapy）という用語は、一般的に転向療法の同義語として使用されてきたが、厳密に言えば、エリザベス・モバーリー（英語版）とジョセフ・ニコロージ（英語版）に関連する治療の特定の種類を指しているとされる。

日本

神道政治連盟などと深く結びつきのある自由民主党の議員などを中心に、「同性愛は心の中の問題であり、先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症」「回復治療や宗教的信仰によって変化する」「世界には同性愛や性同一性障害から脱した多くの元LGBTの人たちがいる」といった転向療法を推奨する言説が広まっていることが、松岡宗嗣などの指摘によって明らかとなっている。この背景には、日本会議系の宗教団体や統一協会、神社本庁など宗教右派と、保守派議員との深いつながりがあることが指摘されている。

• Drescher, Jack; Zucker, Kenneth, eds. (2006), Ex-Gay Research: Analyzing the Spitzer Study and Its Relation to Science, Religion, Politics, and Culture, New York: Harrington Park Press, ISBN 1-56023-557-8 
• Ford, Jeffry G. (2001), “Healing homosexuals: A psychologist's journey through the ex-gay movement and the pseudo-science of reparative therapy”, Journal of Gay & Lesbian Psychotherapy 5 (3–4): 69–86, doi:10.1300/J236v05n03_06 
• Haldeman, Douglas C. (1991), “Sexual orientation conversion therapy for gay men and lesbians: A scientific examination”, in Gonsiorek, John; Weinrich, James, Homosexuality: Research Implications for Public Policy, Newbury Park, California: Sage Publications, Inc, ISBN 0-8039-3764-4, http://www.drdoughaldeman.com/doc/ScientificExamination.pdf 
• Yoshino, Kenji (2002), “Covering”, Yale Law Journal 111 (4), http://www.yalelawjournal.org/article/covering 

• ホモフォビア
• トランスフォビア
• エクソダス・インターナショナル

 

英語版ウィキクォートに本記事に関連した引用句集があります。

Conversion therapy

• 50 Bills 50 States
• Article by Thomas Maier about Masters and Johnson
• Facts About Changing Sexual Orientation: Dr. Gregory M. Herek University of California, Davis
• Interview with Dr. Robert Spitzer, M.D. (retracting his study on conversion therapy) - YouTube
• Investigation into Conversion Therapy The Independent (Archive)
• Psychiatry Giant Sorry for Backing Gay 'Cure' The New York Times
• What does the scholarly research say about whether conversion therapy can alter sexual orientation without causing harm? on the “What We Know” Project (Columbia University)