川上四郎

1889年（明治22年）、新潟県古志郡上組村大字摂田屋（現・長岡市摂田屋）の豪農であった川上半四郎（屋号「川半」）の四男として生まれる。兄の川上漸は医師で慶應義塾大学医学部教授（病理学）を務めた。写真家、自動車評論家、モータージャーナリストの川上完は親戚（兄弟の孫）。

新潟県立長岡中学校（現・新潟県立長岡高等学校）を経て、1913年（大正2年）東京美術学校西洋画科卒業。在学中は藤島武二や黒田清輝に学んだ。美校の同級生には牧野虎雄、河目悌二、平澤文吉らが、上級生には岡本一平、池部鈞、藤田嗣治、田中良らがいた。卒業後、榛原郡立榛原中学校（現・静岡県立榛原高等学校）で美術教師を務める。この時の教え子に三木卓の父がいる。学校内で対立が起こり、校長と共に退職。

1916年（大正5年）美校の先輩の木元平太郎が社主を務めるコドモ社に入社、木元の後を継いで独逸学協会学校（現・獨協中学校・高等学校）の美術教師を務める傍ら、同社の絵画部員として『コドモ』『良友』などに挿絵を描いたのち、1919年（大正8年）退職。翌年コドモ社が創刊した雑誌『童話』に挿絵を描いて以後、『赤い鳥』（赤い鳥社）、『金の船』（キンノツノ社）、『金の星』（金の星社）、『コドモノクニ』（東京社）、『少年倶楽部』『少女倶楽部』『こどもクラブ』（講談社）、『よいこのくに』（学研）、『ひかりのくに』（昭和出版）、『キンダーブック』（フレーベル館）、『幼稚園』『良い子の友』（小学館）、『コドモアサヒ』（朝日新聞社）、『子供之友』（婦人之友社）、『幼年の友』（実業之日本社）、『コドモのテキスト』（日本放送協会）など各種の雑誌に表紙画や挿画を描いている。荻窪に住み、近所には河目悌二や千葉省三、太田三郎、北島浅一などがいた。赤い鳥を中心に巻き起こった童話や童謡を巡る児童文学運動（童心主義も参照）の影響を受けて、児童向けの絵画の芸術的地位を高めるため、「童画」という言葉を作り、振興に努めた。このことから、「童画の父」「日本童画の父」とも呼ばれる。

 

1926年（大正15年）に童話作家協会の『日本童話選集』のために当時の童画家が一堂に会したのがきっかけとなり、翌1927年（昭和2年）に初山滋、武井武雄、岡本帰一、深沢省三、村山知義、清水良雄らとともに「日本童画家協会」（第1次）を結成。童画第一世代と呼ばれる。戦時政策として日本童画協会が1941年（昭和16年）に日本少国民文化協会に併合された後、戦後の1946年（昭和21年）には日本童画会の発起人メンバーの一人となり、同会に所属した。1961年（昭和36年）に日本童画会が解散した後、翌1962年（昭和37年）結成の日本童画協会（第2次）にも参加した。童画協会では毎年日本橋の白木屋で展覧会を開いた。

 

• 1942年第2回野間挿画奨励賞受賞
• 1970年久留島武彦文化賞受賞

1923年（大正12年）頃から念仏信仰（阿弥陀宗）に心が向かい、良寛の研究なども行うようになる。1943年（昭和18年）に念仏同行衆の道場が新潟県湯沢村に建つと、東京と往復するようになった（千葉省三も同じ頃に湯沢に疎開）。戦争の激化に伴って川上の家族も湯沢に疎開し、住居とアトリエを建て、晩年まで過ごした。1983年12月30日、自宅にて心不全のため死去。

湯沢町では川上を顕彰し、没後10年にあたる1993年（平成5年）に「日本童画の父 川上四郎展 よみがえる雪国のふるさと湯沢」が開かれたほか、1997年（平成7年）から毎年「川上四郎記念 越後湯沢全国童画展」が開かれている。また町内の役場庁舎や公民館、温浴施設、雪国館などの公共施設に複製原画が飾られている。これらのことから「童画のまち 湯沢」を標榜している。2006年（平成17年）発行の「湯沢町史」の表紙にも川上の作品が用いられている。

出身地の長岡市では1987年（昭和62年）3月6日に開館した市立図書館で「川上四郎回顧展」がオープニングイベントとして催され、同館に「川上四郎文庫」が作られた。市内の学校町のシンボルロードを中心に川上の作品をモチーフにした銅像多数。

• 単著『童謡画集 (新・講談社の絵本) 』講談社 ISBN 978-4061482692　(2003/2/20)
• 単著『さるとかに (小学館の育児絵本 (43)) 』小学館 ISBN 978-4097560432　(1971)
• 浜田広介 著『椋鳥の夢―ひろすけ童話 (わくわく!名作童話館 (7))』日本図書センター ISBN 978-4284700245　(2006/04)
• 千葉省三 著『ワンワンものがたり (わくわく!名作童話館 (5))』日本図書センター ISBN 978-4284700221 (2006/04)

• 日本童画家協会
• コドモノクニ

• 宿場の湯「日本童画の父　川上四朗　原画・復彩画常設展」
• 川上四郎記念・越後湯沢全国童画展
• 川上四郎文庫 - 長岡市立図書館
• 川上四郎 - 足立美術館
• 『川上四郎』 - コトバンク