『天使にラブ・ソングを…』(てんしにラブソングを、原題: Sister Act)は、1992年のアメリカ合衆国のコメディ映画。監督はエミール・アルドリーノ、脚本はポール・ラドニック(ジョセフ・ハワードとして)、主演はウーピー・ゴールドバーグ。殺人の現場を目撃したしがないクラブ歌手が、かくまわれた修道院で巻き起こす騒動を描いた。
天使にラブ・ソングを… | |
---|---|
Sister Act | |
監督 | エミール・アルドリーノ |
脚本 | ジョセフ・ハワード |
製作 | テリー・シュワルツ |
製作総指揮 | スコット・ルーディン |
出演者 | ウーピー・ゴールドバーグ マギー・スミス ハーヴェイ・カイテル |
音楽 | マーク・シャイマン |
撮影 | アダム・グリーンベルグ |
編集 | コリーン・ハルシー リチャード・ハルシー |
製作会社 | タッチストーン・ピクチャーズ タッチウッド・パシフィック・パートナーズⅠ |
配給 | ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ・ディストリビューション |
公開 | 1992年5月29日 1993年4月17日 |
上映時間 | 100分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
興行収入 | $139,605,150 $231,605,150 |
次作 | 天使にラブ・ソングを2 |
アメリカでは6か月を記録する大ヒットロングランとなり、ウーピー・ゴールドバーグの人気を不動のものにした。翌1993年には、続編の『天使にラブ・ソングを2』も公開された。2006年以降にはミュージカル化された。
ネバダ州リノのクラブ『ムーンライトラウンジ』で歌う黒人クラブ歌手デロリスは、ネバダ一帯に縄張りを持つマフィアのボス、ヴィンスの愛人。度重なる離婚の要求を受け入れてもらえないことにしびれを切らした彼女は、ヴィンスがご機嫌取りのために妻のお古のコートを贈りつけてきたことに腹を立て、別れて町を出ようと決心する。別れ話を切り出すべくいきりたった様子で彼の部屋に乗り込むものの、運悪く彼が裏切り者を殺す現場を見てしまう。一目散に警察に駆け込んだ彼女は、ヴィンス関連の裁判を有利に進めたいサウザー警部補の思惑の下、証人保護プログラムによってサンフランシスコの女子修道院に匿われることになり、「シスター・メアリー・クラレンス」の名で尼僧としての振る舞いを余儀なくされる。
厳格で高圧的な修道院長が目を光らせる中、不自由で堅苦しい生活に辟易するデロリスだが、聖歌隊の指導を任されるようになったのを機に歌手としての本領を発揮し、下手極まりない聖歌隊を鍛え上げて聖歌をゴスペルやロック風にアレンジし、派手なパフォーマンスを繰り広げて一躍町中の人気者となる。伝統を重んじる保守的な院長との対立をよそに、資金難から閉鎖寸前だった修道院はデロリス率いる聖歌隊の活躍によって息を吹き返す。同時に、デロリスの指導の下、シスターたちは周辺環境の悪化を理由にこれまで禁じられてきた修道院外での奉仕活動に勤しみ、周辺地域の人々との交流を深めていく。その過程でデロリスはシスターたちと心を通わせ固い友情で結ばれていくが、反比例するように院長との対立とすれ違いは深まっていく。
ある日のミサの後、聖歌隊の噂を聞いたローマ法王が、サンフランシスコ訪問の際に聖歌隊の特別コンサートをやってほしいとの要望を寄せていると言う知らせが舞い込む。この上ない名誉と光栄に沸き立つシスターたちだが、伝統的な聖歌を歌うべきだと院長にたしなめられる。難色を示すデロリスたちに対し院長は多数決で決めようと言い出すが、自分に賛同する者がほぼ皆無という現実を突きつけられる。院長が深い失望感から余所へ異動しようと考えるまでになっていたことを知ったデロリスは驚き留まるよう説得するも、もはや自分は時代遅れだと言い切る彼女に拒絶される。
御前コンサートの前日を迎えたある日。警察内部に潜む内通者によって情報がヴィンスに漏れ、デロリスが拉致されてしまう。院長の口からデロリスの素性を知らされたシスターたちは動揺するが、彼女のことを立派な尼僧として強く慕っていた見習いシスターのメアリー・ロバートは院長に対し毅然とした態度で、私たちの手で救わなければと進言する。動揺していたシスターたちも彼女の言葉に満場一致で賛同し、その様子を見た院長はデロリスの救出へ行くことを即決する。院長の引率の下、シスターたちは自分たちを教え導いてくれたデロリスを救うため、一丸となってヴィンスのアジトであるムーンライトラウンジに乗り込んでいく。時を同じくしてデロリスは辛くもヴィンスの下から逃げ出し、クラブの中を逃げ回るが退路を塞がれてしまい、あわや捕まると思われたところで駆けつけてきたシスターたちと合流する。尼僧姿を利用して追っ手をかく乱しデロリスの手引きで店の奥の空き部屋に隠れる一行だが、逃げ込むところを見られついに追い詰められてしまう。仲間たちを守るためデロリスは独りでヴィンスに対峙する。部下へ下した殺害命令を拒否されたヴィンスはデロリスは尼ではないと怒鳴るが、院長はとっさにその言葉を否定し、彼女は聖キャサリン修道院のシスター・メアリークラレンスであり、愛と高潔と寛容を体現する立派な尼僧であると主張する。その主張に戸惑いながらもヴィンスはデロリスの眼前に銃を向けるが、駆けつけてきたサウザー警部補に肩を撃たれ怯んだ隙に逮捕される。デロリスは院長と和解を果たし、自分を救うために命がけで駆けつけてくれた仲間たちに心からの感謝の意を述べる。院長は笑顔で異動を撤回して修道院に留まる意思を示し、全ては丸く収まった。
こうして、デロリスはシスターたちとと共に法王を迎えての御前コンサートに臨んで全力でパフォーマンスをやりきり、院長と修道院のシスター達、司教、サウザー警部補をはじめとする全ての聴衆たちから熱狂的なスタンディングオベーションを送られる。ゆっくりと立ち上がり、聴衆と共に惜しみない拍手を送る法王を見たデロリスが、シスターたちに満足そうな微笑みを見せるところで物語は幕を閉じる。
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
---|---|---|---|
ソフト版 | 日本テレビ版 | ||
デロリス メアリー・クラレンス | ウーピー・ゴールドバーグ | 後藤加代 | 中村晃子 |
修道院長 | マギー・スミス | 京田尚子 | 藤波京子 |
ヴィンス | ハーヴェイ・カイテル | 堀勝之祐 | |
メアリー・パトリック | キャシー・ナジミー | 信沢三恵子 | さとうあい |
メアリー・ロバート | ウェンディ・マッケナ | 石川悦子 | 矢島晶子 |
メアリー・ラザラス | メアリー・ウィックス | 牧野和子 | 河村久子 |
エディー・サウザー警部 | ビル・ナン | 西村知道 | 玄田哲章 |
ジョーイ | ロバート・ミランダ | 山下啓介 | 西村知道 |
ウィリー | リチャード・ポートナウ | 曽我部和恭 | 千田光男 |
オハラ司教 | ジョゼフ・メイハー | 小林修 | |
クラークソン | ジム・ビーヴァー | 秋元羊介 | |
テイト | ガイ・ボイド | 仁内建之 | 筈見純 |
ミシェル | ジェニファー・ルイス | 杉村理加 | 喜田あゆ美 |
ティナ | シャーロット・クロスリー | 田辺静恵 | 野沢由香里 |
アニー | マックス・グローデンチック | 石井隆夫 | 梅津秀行 |
TVリポーター | ロバート・ヒメネス | 八代駿 | 福田信昭 |
コニー・ラ・ロッカ | トニ・カレム | 太田淑子 | 中澤やよい |
パイロット | ケビン・ボーランド | 林一夫 | 荒川太郎 |
デロリスの教師 | ロイス・デ・バンジー | 香椎くに子 | |
デロリス(幼少時代) | アイシス・カーメン・ジョーンズ | 押谷芽衣 | 矢島晶子 |
メアリー・イグネイシャス | ルース・コバルト | 島美弥子 | 香椎くに子 |
メアリー・エマニエル | カルメン・サパタ | 丸山裕子 | |
シスター・アルマ | ローズ・パーレンティ | 台詞なし | |
修道女たち | スーザン・ジョンソン | 具体的な台詞なし | |
スーザン・ブロウニング | |||
エディス・ディアス | |||
ダーリーン・コルデンホーヴェン | |||
ベス・ファウラー | |||
プルーデンス・ライト・ホームズ | |||
パット・クロフォード・ブラウン | |||
エレン・アルバーティーニ・ダウ | |||
シェリ・イザード | |||
ジョージア・クレイトン |
- | ソフト版 | 日本テレビ版 |
---|---|---|
演出 | 谷清次 | 木村絵理子 |
翻訳 | いずみつかさ | 徐賀世子 |
調整 | 伊藤恭介 | 山田均 |
録音 | スタジオ・エコー | セントラル録音 |
監修 | 岡本企美子 | N/A |
担当 | N/A | 稲毛弘之 |
プロデューサー | 大塚恭司 小林三紀子 | |
制作 | スタジオ・エコー DISNEY CHARACTER VOICES INTERNATIONAL, INC. | 東北新社 |
1960年代のアメリカのヒットソングが挿入曲として多く用いられている。伝統聖歌「Hail Holy Queen Entrouned above」に加え、「My Guy」「I Will Follow Him」の3曲が聖歌隊の歌唱曲としてアレンジの上で歌われた。
1980年代後半、脚本家のポール・ラドニックは本作のアイデアを思いつき、『お熱いのがお好き』などに触発された第一稿を作成した。それはプロデューサーのスコット・ルーディンに渡され、歌手のベット・ミドラーの起用とディズニー(タッチストーン・ピクチャーズ)の製作が決定した。
元女優で引退後に修道院入りした異色の経歴を持つドロレス・ハートとの面会や実際の修道院の取材などの準備を経て、ミドラーの起用を前提として脚本の修正は書き進められていたが、ミドラーが心変わりから降板するという事態が発生。企画が宙に浮いてしまう。
その後、ウーピー・ゴールドバーグが脚本に興味を示したことで企画は再開するものの、これによりミドラー主演を前提とした書かれた脚本の修正が必要となり、ジム・キャッシュやジャック・エップス・ジュニア、ナンシー・マイヤーズなど6人の脚本家が修正に携わった。そのため、内容は企画当初から大きく様変わりすることとなりラドニックは制作から離れた。ラドニックはこの経緯を理由に名前がクレジットされることを拒否していたが、スタッフからの説得の末、本名を伏せることを条件にクレジットを許可した。脚本でクレジットされたジョゼフ・ハワードはこうした経緯で用いられた変名で、続編でもキャラクター創作者としてクレジットされている。
ウーピーはデロリスの台詞を自ら提案し、それに伴う脚本修正担当としてキャリー・フィッシャーが雇われた。二人は「セックス」など際どい台詞をデロリスに多く言わせようとしたため、ディズニー側の幹部と意見がよく衝突したという。
パトリック役のキャシー・ナジミーはオーディションで歌唱後、審査員のマーク・シャイマンから「他に何か歌えますか?」と聞かれ、友達を笑わせるための持ちネタだったオペラ風の歌声を披露したところ「それだ!その歌い方以外はしないで」と言われ、出演が決まったという。
ラザラスを演じたメアリー・ウィックスは、1966年の映画『青春がいっぱい』で修道女の役を演じた経験が縁で抜擢された。また、当時81歳と演者のなかで最年長である。
シスターを演じるキャストは、バランスに加え何よりも「個性」を最重視して選ばれた。
シスターを演じたキャストは女優が多いが、女優と歌手を両立しているキャストも多い。ダーリーン・コルデンホーヴェンは声楽教師として歌のコーチも請け負っており、エンディングクレジットにおいて音楽指導としてもクレジットされているほか、ロバートの目ざまし時計のアラーム音声も担当している。
法王を演じたユージーン・グレイタックは、当時の法王ヨハネ・パウロ2世に似ていることで有名で、この作品以外でも法王の役を演じている。
舞台は当初シカゴの予定だったが、ウーピー・ゴールドバーグが自身のキャリアをスタートさせたサンフランシスコに変更となった。
舞台となる教会は、サンフランシスコの中流階級の地域であるノー・バレーにあるセント・ポール・カトリック教会を使用。通りの反対側の店は、作品に合わせ荒廃した雰囲気を与えるために改装された。また、リノでのロケ撮影も行われた。
女性の修道者の修道名に「メアリー」が併記されるケースは男性の聖人から名を採った場合に多く見られるもので、劇中で登場するシスターの名前も全て男性の聖人の名前である。
撮影開始に先立ち、ウーピー・ゴールドバーグはセス・リッグスの下で徹底的な歌唱トレーニーングを積んだ。彼女は後に「浴槽で歌う鼻歌がどれだけ気楽か思い知った」と答えつつ、「周りが思ってるよりはイケた(上手く歌えた)」と語っている。
キャシー・ナジミーはパトリックを演じるにあたり、脚本に「唯一の特徴は『明るさ』」と書いてあったことから、偶然つけたテレビに写った元気で明るく陽気なメアリー・ハートがパトリックのモデルだと思い、彼女をモチーフにパトリックのキャラクターを作った。
メアリー・ロバートの劇中での歌唱は演じるウェンディ・マッケナでなくアンドレア・ロビンソンであり、全キャストの中で唯一の吹き替えである。理由は歌声が監督のイメージとは違ったため。マッケナはコメンタリーにおいて「『もちろん歌えるわ』と言って恥をかいた」と語り、「口パクなら任せてよ」と発言している。
「My God」のサビ直前、シスターたちが横を向くシーンでラザラスが逆に向くシーンは、NGシーンをOKテイクとして採用したもの。
ゴールドバーグは撮影中、「修道服から出した手に、ミッキーマウスの手の手袋をしていた」という悪ふざけをしたことがある。
リノでのロケ撮影中、滞在したホテルで同室になったナジミーとマッケナは撮影衣装(シスター姿)のままルームサービスで食事を頼んだ際に、届けにきたホテル従業員へあるイタズラを仕掛けることを思いつく。それは、「ナジミーが従業員(二人の正体を知らない)に、食事を部屋へ運び入れるよう頼み、シスター姿のマッケナがベッドに座りテレビのAVチャンネルを真顔で凝視している様を見せつける」というものであった。ちなみに、マッケナはナジミーの案で従業員が退室するまで笑わずに演技を続けられるかの賭けも行うも耐え切れずに笑ってしまったため、ナジミーに100ドルを支払ったという。
リノに滞在中、多くのキャストは夜や撮影の合間、衣装のシスター姿でカジノやバーに訪れギャンブルを楽しむことが日課だったという。ナジミーは後に「ウェンディはタバコを吸っていたし、修道女の私たちは飲み物を置いて21テーブルでカードに夢中だった。それは面白かったわ」と回想している。
映画公開から17年後の2009年に本作がロンドンのウエスト・エンドでミュージカル化され、2011年にブロードウェイで公演が行われた。映画版の主演を務めたウーピー・ゴールドバーグがプロデューサーとして参加、音楽は『リトル・マーメイド』や『アラジン』などのディズニーのアニメ作品を作曲したアラン・メンケンが担当している。ストーリーの大筋と登場人物は映画版を踏襲しているが、細部の設定やストーリー展開が大幅に脚色されている他、楽曲はすべて書き下ろしで映画版での挿入曲は使用されていない。
2014年6月1日、日本上演。2014年8月3日、千秋楽。2016年5月22日 - 6月20日再演。2019年11月 - 12月再演。
This article uses material from the Wikipedia 日本語 article 天使にラブ・ソングを…, which is released under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 license ("CC BY-SA 3.0"); additional terms may apply (view authors). コンテンツは、特に記載されていない限り、CC BY-SA 4.0のもとで利用可能です。 Images, videos and audio are available under their respective licenses.
®Wikipedia is a registered trademark of the Wiki Foundation, Inc. Wiki 日本語 (DUHOCTRUNGQUOC.VN) is an independent company and has no affiliation with Wiki Foundation.