人工地震(じんこうじしん)は、人工的に起こされる地震動である。主に、地中を探査する人工地震探査のために起こされる。陰謀論の手段となることが多いが、人工地震の規模は自然に発生する地震より小さい。地下核実験で引き起こされる人工地震がもっとも大きな規模となるが、それですらマグニチュード4~5程度であり、大きな被害をもたらすようなマグニチュード7を超える地震とはエネルギーにして約1000倍の差異がある。陰謀論者はこのような根拠の無い情報を信じている。
人工地震は、人工的な発破などにより発生する。一方、通常の地震動を発生させる地震のことを、自然地震と呼ぶことがある。
土木工事などに使われる発破は、地震波を発生させるため、しばしば自然地震と誤認される。ただし地震波には、P波に比べてS波が小さい、表面波が卓越する、すべての観測点でP波初動が押し波となる、P波の波形が単純で立ち上がりが比較的鋭い、震源の深さがほぼ0であるなどの特徴があり、自然地震による地震動との判別は可能である。核爆発によるものも代表的な人工地震のひとつであり、大規模な地震動となった例もある(後述)。こちらも地震波に前述と同じ特徴があるため、識別及び感知が可能であり、地震計による核実験の監視に活用されている。また、自然地震との判別が可能なことを利用して地殻や上部マントルの構造を研究する爆破地震学(制御震源地震学)がある。人工地震による地殻構造の解析は震央・震源時が正確に分かり、地震が発生しない地域でも研究が可能という利点がある。一方で発生する地震波の振幅が小さいなどの欠点も存在する。
人工地震を発生させる装置を人工震源と呼ぶ。地震学での震源とは意味が異なる。
地震波を使って地中を探査する。反射波を捉える反射法と、屈折波を捉える屈折法がある。通常の人工地震によるもの以外に、核実験や自然地震による地震波も、地球深部(核やマントルなど)の探査に使うことができる。
人工地震を観測することで、地下構造の推定に役立てる手法もある。断層運動や火山活動に起因する自然地震に比べて地震波形が単純であるため、地震波トモグラフィーなどに生かしやすいとされる。またこれを応用して、国際的に認められない核保有国が秘密裏に行なう核実験を探知するのに使用される。
地下核実験による人工地震も過去に観測されているが、米軍による過去最大の地下核実験でも地上での地震の揺れは観測できず、北朝鮮の核実験でもマグニチュード4程度と、地上での地震の揺れはいずれも軽微なものであった。
アメリカ合衆国が1971年から1972年にかけて行なった地下核実験(グロメット作戦)のうち、1971年アムチトカ島における地下核実験(カニキン・プロジェクト)においてW71核弾頭が使用された際、核出力は5Mtで地下核実験としては最大規模の記録を出した。実体波マグニチュード6.97の[出典無効]人工地震も記録した。しかし、地上では地震のゆれは観測できなかった。なお、実体波マグニチュード6.97というと相当大きいようであるが、実体波マグニチュードと地震の報道でよく用いられるマグニチュードは算定方法が違う別の単位である。
1973年9月12日に、ノヴァヤゼムリャの北島で行われた核出力4.2Mtの地下核実験では、マグニチュード6.97に相当する揺れが発生したという報道が有るが、科学技術庁原子力局の「原子力委員会月報」1973年9月号にはこの記載がない。。[要出典]
北朝鮮が2017年までに実施した6回の核実験では、いずれもマグニチュード4.0以上に相当する揺れが直後に確認されている。特に2017年9月3日に実施した核実験については、9月23日に2回、10月13日に1回、12月2日に1回観測された地震をも引き起こしたと結論付けられている。
人工震源と異なり、人為的な原因によって引き起こされる自然地震(誘発地震)のことを、同じく「人工地震」と呼称する場合がある。
この誘発地震はしばしば陰謀論に関連付けられ、核実験や二酸化炭素貯留あるいは特定の研究機関が関与しているといった誤情報が拡散されることがある。 現実問題として、地下核実験で東日本大震災クラスの人工地震を引き起こすためには人類史上最大の水素爆弾ツァーリ・ボンバですら足らず、マリアナ海溝に前述の水素爆弾を放り込んだと仮定しても水面には小さい浪とあぶくが立つくらいの威力しか存在していないとされる。
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