持続可能な開発目標(じぞくかのうなかいはつもくひょう、英語: Sustainable Development Goals、略称: SDGs(エスディージーズ))は、2015年9月25日に国連総会で採択された、持続可能な開発のための17の国際目標である。その下に、169の達成基準と232の指標が決められている。
2000年9月、アメリカ・ニューヨークでの『国連ミレニアム・サミット』にて採択された国連ミレニアム宣言を基に、「ミレニアム開発目標」(MDGs)が成立した。だがMDGsは2015年までの期限付きであり、2011年、南米コロンビアのフアン・マヌエル・サントス政権にて、期限が近づいても未達成の目標があったことや、それと同時に持続可能な開発をどう進めるかについての議論が提案された。発案はコロンビア外務省経済・社会・環境の女性局長であるパウラ・カバジェーロによるものである。女性外務大臣のマリーア・アンジェラ・オルギンへの稟議を通じて採択された。
案はグアテマラ等、中南米のいくつかの開発途上国の支援を得たのち、2012年6月にブラジル・リオデジャネイロにて開催された国際サミット『国連持続可能な開発会議』(リオ+20)にて、「2015年以降の次世代MDGsの目標と、持続可能な開発の議論を統一」させることをコロンビア・グアテマラ両国が推奨した。サミットでいかに成果を生み出すかに迷走していたブラジルは、両国の案に乗り、開催されたリオ+20では、その制定への決議を主要な成果として終了した。
2015年9月25日、国連総会にて、持続可能な開発のために必要不可欠な向こう15年間の新たな行動計画『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development、または単に「2030 Agenda」とも)が採択され、2030年までに達成するべき持続可能な開発目標(SDGs)として、17の世界的目標と169の達成基準が示された。
SDGsは、以下の17の目標から構成されている。その他、169項目など全文はウィキソースの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を参照。
- ■ 貧困をなくそう (英: No Poverty)
- 「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」
- ■ 飢餓をゼロに (英: Zero Hunger)
- ■ すべての人に健康と福祉を (英: Good Health and Well-Being)
- ■ 質の高い教育をみんなに (英: Quality Education)
- ■ ジェンダー平等を実現しよう (英: Gender Equality)
- ■ 安全な水とトイレを世界中に (英: Clean Water and Sanitation)
- 「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」
- ■ エネルギーをみんなに、そしてクリーンに (英: Affordable and Clean Energy)
- 「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」
- ■ 働きがいも経済成長も (英: Decent Work and Economic Growth)
- ■ 産業と技術革新の基盤をつくろう (英: Industry, Innovation and Infrastructure)
- ■ 人や国の不平等をなくそう (英: Reduced Inequalities)
- 「各国内及び各国間の不平等を是正する」
- ■ 住み続けられるまちづくりを (英: Sustainable Cities and Communities)
- 「包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現する」
- ■ つくる責任 つかう責任 (英: Responsible Consumption and Production)
- ■ 気候変動に具体的な対策を (英: Climate Action)
- 「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」
- ■ 海の豊かさを守ろう (英: Life Below Water)
- 「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」
- ■ 陸の豊かさも守ろう (英: Life on Land)
- ■ 平和と公正をすべての人に (英: Peace, Justice and Strong Institutions)
- 「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」
- ■ パートナーシップで目標を達成しよう (英: Partnerships for the Goals)
- 「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」
日本では主要マスコミが国際連合広報センターによる「世界中の報道機関とエンターテインメント企業に対し、その資源と創造的才能をSDGs達成のために活用するよう促す」ことを目的とした「SDGメディア・コンパクト」に参加している。SDGsを理由に推進されているモノとして、太陽光発電、昆虫食などがある。マスコミでSDGsが大きく取り上げられているが、視聴率は芳しくない。SDGs関連の中でも「食糧問題の解決に期待されている」との理由でコオロギ食を高校の給食メニューの1品として提供するといった昆虫食の推進には一部にて大きな反発と批判が起きている。2021年にはには紙ストロー、袋有料化、サステナブル・マウンティングなどへの反発が見受けられた。
中小企業基盤整備機構の調査によると、企業の約99.7%を占める中小企業の内3割がSDGsへ取り組んでいる、取り組む予定があると回答している。
近年、大企業だけでなく、中小企業や零細企業もSDGsや脱炭素に積極的に取り組む事例が増えている。例えば、夫婦2人で経営する革製品ブランド「ラファエロ」を運営する株式会社FrankPRは、外務省のジャパンSDGsアワードや環境省のグッドライフアワードを受賞するなど、規模の小さな企業でも大企業のようにSDGsへ大きく貢献できることを示している。
一方で、帝国データバンクの調査によると、中小企業の半数が資金不足や人材不足の壁に直面し、SDGsに十分に取り組めていないのが現状である。しかし同時に、SDGsに取り組んでいる企業の約7割が、企業イメージの向上や従業員のモチベーション向上、売上増加など何らかの効果を実感しているという。
中小企業がSDGsに取り組むことは、社会課題の解決に貢献するだけでなく、企業価値の向上やビジネスチャンスの獲得にもつながる可能性がある。費用や人材の制約がある中小企業でも、ペーパーレス化やワークライフバランスの推進など、できることから始めていくことが重要だと考えられる。
2015年のSDGs採択以降、日本は企業が積極的に経営に導入するなど、多様な主体で取り組んでいる。政府も実施に向けて国内の基盤整備を推進してきた。
日本政府は、SDGsに係る施策の実施について、全国務大臣を構成員とする「持続可能な開発目標 (SDGs) 推進本部」を設置した。本部は2016年12月22日に「持続可能な開発目標 (SDGs) 実施指針」を決定し、優先課題として、2030アジェンダが掲げる5つのPである、People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ)に対応した8項目が示している。2019年12月の第8回推進本部会合で、2020年のSDGs推進のための具体的対策法を取りまとめた「SDGsアクションプラン2020」を決定した。
2020年7月9日、SDGsのより一層の認知拡大・行動の促進を行うため、ジャパンSDGsアクション推進協議会が発足し、外務省、環境省、経産省、神奈川県など官公庁のほか経団連、慶應義塾大学SFC研究所 X.SDG Lab.など官民一体の15団体が参加した。SDGsアクションに取り組む人を「SDGs People」とし、女優で創作アーティストののんが第一号となった。今後、他のメンバーとともに、SNSなどを通じてSDGs活動の発信に取り組んでいく。会長を務める慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授の蟹江憲史氏。
SDGs未来都市とは、自治体がSDGsの達成に向けた取り組み・提案を行い、国に選定されたものである。SDGs未来都市の取り組みについて、国の支援を得ながらモデルとして普及展開を図り、「持続可能なまちづくり」の実現を図っていくことを目的とする。
内閣府は地方創生に取り組んでおり、SDGsの理念が「政策の全体最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果が期待できる」とし、「地方創生SDGs」を推進している。SDGs未来都市はその取り組みの一つである。
SDGs未来都市はSDGsに積極的に取り組んでいる都市・地域の中で、特に経済・社会・環境・脱炭素化に関する取組(2021年追加)の四つの側面の「統合的取組による相乗効果、新しい価値の創出を通して、持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域」が選定されている。2022年現在、154都市(155自治体)が選出されている。また、環境モデル都市、環境未来都市事業との関連性が強く、2018年に選出された 29都市のうち 10都市が環境モデル都市、環境未来都市事業のいずれかにも選出されている。
SDGs先進都市とは、SDGsにある17の目標すべてに関わる市民活動が活発であることを指している。代表例として、ドイツのフライブルク市がある。
2018年6月15日に、当時の内閣総理大臣の安倍晋三のSDGs推進本部会合における指示を踏まえ公募した結果地方創世分野における日本の「SDGsモデル」を構築していくため、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取り組みを提案する29都市を「SDGs未来都市」として選定した。
SDGs未来都市のうち、先導的な取組を自治体SDGsモデル事業として選定している。自治体SDGsモデル事業は、以下の3点を満たすものである。
日本政府は、SDGs達成に向けた優れた取り組みを行っている企業・団体等を表彰するため、以下のSDGsアワードを実施している。
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省庁 | 取り組み |
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経済産業省 |
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外務省など |
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消費者庁 |
詳細は「エシカル」を参照 |
農林水産省 |
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地方自治体 | 取り組み |
神奈川県 |
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埼玉県 |
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富山市 |
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団体 | 取り組み |
運輸デジタルビジネス協議会 |
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岡山大学 |
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関西SDGsプラットフォーム | |
千葉大学、京葉銀行 |
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東京オリンピック・パラリンピック組織委員会 |
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日本科学未来館 |
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日本経団連 |
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日本ユネスコ協会連盟 |
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NHK |
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企業 | 取り組み |
アルビス |
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共同ピーアール総合研究所 |
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スターバックスコーヒー |
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電通 |
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中部電力ミライズ |
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東京書籍、積水化学、日経BP |
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東急電鉄 | |
阪急阪神HD | |
静鉄グループ |
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三菱UFJ銀行 |
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ユーグレナ |
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ユニクロ |
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吉本興業 |
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2015年のエコノミストによる解説では、SDGsの169の達成基準は多すぎると主張し、ミレニアム開発目標(MDGs)と比較して、「無秩序で、誤った考え」で「乱雑」だと述べている。 そしてこうした達成基準は地域の文脈を無視しているとした。他の16の目標はすべてSDG1「貧困を終わらせる」の達成を条件としている可能性があり、これは非常に短い目標リストのトップにあるべきものであったという。
17のSDGsの間のトレードオフは、持続可能性のための難しい障壁であり、その実現を妨げる可能性がある:66 。例えば、次に示すものはトレードオフを考える上で難しいものである。「飢餓の撲滅は、環境の持続可能性とどのように調和させることができるのか? (SDGsターゲット2.3、15.2) 経済成長はどのように環境の持続可能性と両立させることができるのか? (SDGsターゲット9.2、9.4) 所得の不平等と経済成長はどのように折り合いをつけることができるのか?(SDGsターゲット10.1、8.1)」。
学者たちは、持続可能な開発目標について、惑星、人々、繁栄の問題はすべて一つの地球システムの一部であり、プラネタリー・バウンダリーを保護することは手段であってはならず、それ自体が目的であるべきだと認識されていないと批判している:147。SDGsの主要な懸念は、経済成長が持続可能な開発のすべての柱を達成するための基盤であるという考えに固執したままであることである:147。こうしたSDGsの環境保護への舵取りに対する疑念は、その舵取り能力からだけでなく、そもそも環境保護を優先していないように見えることから生じている:144。
包括的な環境目標や「惑星的」目標は存在せず、その代わりに環境保護は、目標13、14、15にある環境に焦点を当てたSDGs群に委ねられている。これらの明確な環境目標を含めることで環境保護が進むかもしれないが、目標13、14、15は環境問題(気候、土地、海洋)を区分けする可能性があるという意見もある。これらの目標は、プラネタリー・バウンダリーを追求するものではないが、気候、陸地、海洋などの環境面を保護することについて、その重要性は認識されている:144。
SDGsは、単に現状を維持するだけで、野心的な開発アジェンダを実現するには至らない可能性がある。現在の現状は、「人間の福利と環境の持続可能性を切り離し、ガバナンスを変え、トレードオフ、貧困と環境悪化の根本原因、社会正義の問題に注意を払うことに失敗している」と言われている。
3%の世界経済成長の継続(目標8)は、生態系の持続可能性の目標とは両立しない可能性がある。なぜなら、世界の生態系経済の絶対的なデカップリングの必要率は、過去にどの国も達成したことがないほど高いからである。人類学者は、GDPの総成長を目標とする代わりに、目標は一人当たりの資源使用量を目標とし、「高所得国での大幅な削減」を提案した。
SDGsの中では、環境制約や惑星の境界線が十分に表現されていない。例えば、現在のSDGsの構成は、環境の持続可能性とSDGsの間に負の相関関係をもたらしている。つまり、SDGsの環境持続可能性の側面が過小評価されているため、すべての人、特に低所得者層の資源確保が危険にさらされている。これは、SDGsそのものを批判しているのではなく、その環境条件がまだ弱いという認識に基づいた批判である。
SDGsは、生物多様性を保護することができないという批判がある。持続可能な開発の名の下に、意図せずして環境破壊を促進しかねない可能性がある。
科学者たちは、SDGsにおける環境の持続可能性に関する弱点に対処する方法をいくつか提案している。
SDGsの倫理的方向性には懸念がある。SDGsの焦点は依然として「資源の成長と利用......そして(それは)集団的視点ではなく個人的視点から出発する」ようであり、「開発に関する(西洋)近代に見られた強い概念、つまり、環境に対する人間の主権(人間中心主義)、個人主義、競争、自由(義務ではなく権利)、自己利益、集団的福祉につながる市場への信頼、(法制度によって保護される)私有所有権、能力に基づく報酬、物質主義、価値の数量化、労働の道具化といった概念に支えられている」ものであると言える:146。
SDGsの目標に関して、一般的に「実施手段」と成果を結びつける根拠が弱い。 「実施手段」に関する目標(例えば、ターゲット6.aのように文字で示されるもの)は、概念化が不完全で、策定が一貫しておらず、その大部分が定性的な指標の追跡は困難であると考えられている。
これまでのSDGsのインパクト、特に惑星の完全性を守るというアレーに欠けているところがある:161 。目標の数,目標の枠組みの構造(例えば非階層的構造)、目標間の一貫性、目標の具体性あるいは測定可能性、本文で使用されている言語、そして、その中核的な方向性として新自由主義経済開発指向の持続可能な開発への依存など、いくつかの設計要素は当初から欠陥があったかもしれない:161。
SDGsが持続可能な経済発展を重視していることは、経済成長の限界と貧富の差の「発展的」な除去の両方を必要とする、惑星の完全性と正義にとって必然的に有害であると主張する者もいる:145。
実態がないのにSDGsに熱心であることを発信している、実態以上にSDGsに熱心であることを発信している、取り組み自体は本当だが不都合な事実を伝えず良い情報のみを伝達している、といった企業に、「SDGsウォッシング(SDGsウォッシュ)」だという批判が起きることがある。SDGsウォッシングが懸念されている例には以下のものがある。
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