安倍晋三銃撃事件(あべしんぞうじゅうげきじけん)は、2022年(令和4年)7月8日11時31分ごろ、奈良県奈良市の近畿日本鉄道(近鉄)大和西大寺駅北口付近にて、元内閣総理大臣の安倍晋三が選挙演説中に銃撃され死亡した事件。
安倍晋三銃撃事件 | |
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事件現場(2022年7月8日18時ごろ撮影) | |
場所 | 日本 奈良県奈良市 近畿日本鉄道(近鉄)大和西大寺駅北(奈良市西大寺東町二丁目1番63号先東側路上) |
座標 | 北緯34度41分38.62秒 東経135度47分01.98秒 / 北緯34.6940611度 東経135.7838833度 東経135度47分01.98秒 / 北緯34.6940611度 東経135.7838833度 |
標的 | 安倍晋三 |
日付 | 2022年(令和4年)7月8日 11時31分ごろ (UTC+9) |
概要 | 選挙演説中に発生した元内閣総理大臣への銃撃事件 |
原因 | 「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と「標的」が深い関係性を持っていたと被疑者が考えたため |
攻撃手段 | 銃撃 |
攻撃側人数 | 1人 |
武器 | 手製銃 |
死亡者 | 1人(安倍晋三) |
犯人 | 男1人(刑事裁判で係争中:実行犯 節参照) |
動機 | 「世界平和統一家庭連合」への恨み |
対処 | 実行犯の男を殺人未遂で現行犯逮捕 |
刑事訴訟 | 実行犯の男を殺人罪、銃刀法違反などの罪で起訴(第一審の公判開始前) |
影響 | 影響 節参照 |
管轄 |
事件当日は第26回参議院議員通常選挙(2022年6月22日公示・7月10日投開票)の選挙期間中で、安倍は連日、自由民主党公認の立候補者の応援演説を行っていた。
安倍は7月8日夕方に長野駅前で、長野県選挙区に出馬した自民党の新人・松山三四六の応援に入る予定であった。ところが、6日に松山の女性問題や金銭トラブルを週刊誌2誌が電子版で記事にしたことから、7日、応援演説を取り止めることが決まった。安倍の空いた予定を調整するために新たな応援先が検討された結果、終盤の情勢調査で立憲民主党の候補の猪奥美里や日本維新の会の候補の中川崇との接戦が報じられていた奈良県選挙区が選ばれた。7日12時50分頃、自民党奈良県支部連合会は、奈良県警察にその旨を伝えた。
奈良県選挙区に立候補していた自民党の現職・佐藤啓は8日午前、近鉄学園前駅の界隈を選挙カーで回る計画だったが、奈良1区選出の衆議院議員・小林茂樹のスタッフと話し合い、場所を近鉄大和西大寺駅北口に差し替えた。関係者はのちに「平日の昼間でも人が集まる場所。それがどこかと考えれば、大和西大寺駅北口しかなかった」「安倍さんクラスが来るのに、聴衆が少ないのは避けたかった」と証言している。
安倍が選挙期間中に奈良県に入るのは2度目で、6月28日に大和西大寺駅南口と、近鉄生駒駅前の2か所で演説を行っていた。読売新聞の報道によれば、安倍派に所属する佐藤から会長の安倍に直接応援要請があったとも言われている。
京都府選挙区新人の吉井章の選挙対策本部長を務めていた安倍派の西田昌司もかねてより安倍の来援を要請しており、これに応えて奈良に次いで京都にも応援に入ることが決まった。吉井は7日15時48分、Twitterを更新し「安倍晋三元首相来る! 7月8日12時30分、四条河原町にて」と書かれた画像を掲載した。安倍は8日夕刻に、参議院比例区から出馬している自派閥の現職・山谷えり子の応援演説を埼玉の大宮駅西口で行うことが以前から決まっていたが、この予定は変更されず据え置かれた。こうして、8日の安倍の遊説先は奈良、京都、埼玉の3府県に確定した。
7日16時半頃、自民党奈良県連は大和西大寺駅北口で街頭演説を行う旨を奈良県警に伝えた。
佐藤陣営の選挙カーは車上から演説できる構造になっていなかったため、陣営は勘案した結果、交差点中央のガードレールで囲まれた約50平方メートルの安全地帯で演説することを決めた。ここは自民党幹事長の茂木敏充が6月25日に応援演説した場所でもあった。7日17時過ぎ、自民系の地元議員に、安倍来訪の案内をファックスで一斉に送信。自民党は特設ウェブサイトにおいて党役員の演説会スケジュールを随時更新しており、安倍の8日の予定もほどなく公表された。
大和西大寺駅およびその周辺区域をこの当時管轄していた奈良県警奈良西警察署は、その頃、署内で発生した不祥事の対応に追われていた。知らせを受けた7日、奈良西警察署は、翌8日の不祥事事案の報道発表に向けて、県警本部と調整を行っていた。不祥事事案の業務と並行して、急いで演説会の警護警備計画の策定に取り掛かり、陣営スタッフとともに現場を訪れ、安倍が立つ位置などを確認した。当初、奈良県警が警護警備計画の策定に取り掛かったのは「夕方から」とされていたが、8月25日に警察庁がまとめた検証結果の報告書によって「19時頃から」に修正された。すなわち自民党奈良県連が「演説場所を駅北口の交差点中央のガードレールで囲まれた安全地帯とする」旨を県警に伝えたのはその日の19時頃であったためであり、これらは警察庁の報告書により初めて明らかとされた。
立憲民主党代表の泉健太が同年4月に同じ場所で演説したいと申し出たときは、県警は「後方の警備が難しい」と指摘し、あわせて、車の上で演説することや、車を防弾パネルで覆うことなどを要請した。そのため泉はやむを得ず少し離れた場所で演説を行った。県警の警備部警備課は、6月25日に茂木が演説した際に策定された「警護警備実施計画」を基に、配置する警察官をわずかに増やして、計画書を作成した。
演説会当日7月8日、警備課は執務時間が始まった直後に、警護の統括責任者である警備部参事官に「警護警備実施計画」を提出。警備部長、鬼塚友章本部長の順に決裁された。
映像外部リンク | |
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事件発生時の映像(1分44秒) Wall Street Journalによるアップロード動画 |
7月8日10時5分、安倍は羽田発の航空便で伊丹空港に到着した。
11時10分、佐藤の街頭演説会が開始。演説会は大和西大寺駅北口から東に50メートルほど離れた、交差点中央のガードレールで囲まれた安全地帯(ゼブラゾーン)で行われた。安全地帯の真南には県道104号谷田奈良線が通っていた。駐車スペースがないため、選挙カーは安全地帯から北に約20メートル離れた場所に止められた。実行犯の男は、演壇の右斜め後ろ(南東)約15メートルの歩道に立っていた。
演説台のそばでは、警視庁警備部警護課のSPを含む4人の警察官が警護に当たっていた。そのうち3人はガードレールの内側におり、1人はガードレールの南東の外側で後方を警戒していた。県警は長年の前例を踏襲し、現場には制服警察官を配置しなかった。自民党県連は聴衆の整理のため、スタッフ15人を配置していた。また佐藤陣営は、県道104号谷田奈良線の交通量が多いため、5人の警備員を雇って交通整理に当たっていた。
11時18分14秒頃、安倍は警察官とともにガードレールの内側に到着。安倍が姿を現すと、前方の聴衆が増え始める。
11時23分25秒頃、佐藤自身による演説が開始。ガードレール内にいた県警の警察官は、後方の警戒を担当していた警察官に対し、11時26分頃までにガードレール内に入るよう指示。後方担当の警察官は聴衆が増えてきた前方右手(東側)の警戒を主に行った。他の場所にいた統括役の警察官には、この変更は無線で伝えられなかった。そして後方だけを警戒する警察官がいなくなった。
11時28分42秒頃、安倍は佐藤とグータッチを交わしたあと、高さ約40センチメートルの台の上で、駅のロータリーを背に応援演説を開始。被疑者の男はその直前に歩道と車道の切れ目あたりに移動した。
11時29分51秒頃、被疑者の男は歩道角で周囲を見渡していたが、11時30分0秒頃から、バスロータリー沿いの歩道を、徒歩でゆっくりと南進し始めた。
11時30分18秒、安倍の真後ろにいた選挙スタッフの男性が演壇の右方向(東方向)に移動し、脇から安倍をカメラで撮影。このため安倍の後ろががら空きになった。
11時30分43秒頃、自転車に乗った男性が車道を東進し、ゼブラゾーンにさしかかる。男性は同51秒頃、ゼブラゾーン上に一時停車し、その後、再び低速で東進した。また、台車を押す男性が車道を東進し、ゼブラゾーンに到達。同58秒頃、自転車の男性の南側を追い抜いて通行した。後方担当の警察官は、この男性2人の姿に気を取られ、目で追っていたために、斜め後ろから被疑者が近づいてきたことに気付かなかった。
11時30分56秒頃までに被疑者はロータリーに侵入。11時31分頃、被疑者は左右を確認することなく、車道を横断し、車道のセンターラインを超えたあたりで立ち止まった。
11時31分3秒頃、被疑者は演壇に近づきながら、たすきがけの黒いカバンから、筒状の銃身を粘着テープで巻いた手製の銃を取り出した。11時31分5秒頃、安倍に照準を合わせた。
11時31分6秒頃、安倍が「彼(佐藤)はできない理由を考えるのではなく…」と語った瞬間、被疑者は1発目を発射した。安倍と被疑者の距離は約7メートルであった。1発目は誰にも当たらなかったが、爆破音のような大きな音とともに白煙が上がり、安倍は左後方へ振り返った。
被疑者は1発目の発射から約2.7秒後の11時31分8秒頃、警察官が止めに入る前に更に安倍に近づいて2発目を発射。この時点で安倍と男の距離は約5メートルであった。2発目は、安倍の首の右前部と左上腕部に着弾する。安倍はよろめきながら演台から降りると、膝をついてその場に倒れ込み、やがて意識を失い、心肺停止状態になった。
警察の調べでは、被疑者が車道に歩き出してから1回目の発射までの間隔は「9.1秒」とされた。警察庁がまとめた報告書により、1発目と2発目の間隔は「2.7秒」とされた。
被疑者は奈良県警に取り押さえられ、11時32分に殺人未遂の現行犯で逮捕された。
奈良市消防局が公開した救急隊員らの活動報告書によると、同日11時32分に救急車の出動要請があり、程なくして救急車2台、ドクターカー1台を含む車両計7台が出動した。その間、現場に居合わせた看護師らが救命措置を施し、11時37分に先発の救急隊が到着、11時41分には次の隊が到着した。安倍は道路に仰向けの状態で倒れており、自動体外式除細動器(AED)を用いるなどして救命措置が行われていたが、この時点で心肺停止の状態であることを確認していた。その後、11時43分、救急車が安倍を収容し、11時54分に現場からドクターヘリの着陸先である平城宮跡歴史公園に向かった。この時点で消防は右首の銃創、左胸の皮下出血を確認した。12時9分に安倍がドクターヘリに収容され、12時13分、ドクターヘリが離陸。12時20分、安倍は橿原市内の奈良県立医科大学附属病院高度救命救急センターへ搬送され、100 単位以上にわたる輸血と、止血術や蘇生的開胸術などの蘇生措置が行われた。
16時55分、一報を受けて東京都渋谷区富ヶ谷の安倍の私邸を出た妻・昭恵が奈良県立医大附属病院に到着。医師が輸血を大量に行うなど蘇生措置を実施したことおよび容態を告げ、最終的に「蘇生は難しい」と昭恵が判断。17時3分に死亡が確認された。
首相経験者に対するテロとしては、1936年2月26日の二・二六事件で高橋是清と斎藤実が陸軍青年将校らに殺害されて以来の出来事であった。内閣制度発足以後、殺害された現職首相・首相経験者としては伊藤博文、原敬、高橋是清、濱口雄幸、犬養毅、斎藤実に続いて7人目(「殺害された日本の内閣総理大臣の一覧」参照)、戦後の国会議員としては浅沼稲次郎、丹羽兵助、11代目山村新治郎、石井紘基に続いて5人目である。G7首脳経験者では、イタリアの元首相アルド・モーロが1978年に殺害されて以来となった。首相経験者の60歳代での死去は池田勇人、小渕恵三、橋本龍太郎に次ぐ戦後4人目である。
奈良県警察本部刑事部捜査第一課により公表された安倍の検視結果によると、左肩に銃創1か所、右前頸部に楕円形の銃創2か所が確認されている。警察庁刑事局により公表された司法解剖の結果によると、死因は左上腕部射創による左右鎖骨下動脈損傷に基づく失血死である。警察庁は、銃弾が身体を貫かずに体内でとどまっている盲管銃創が確認されたと説明している。当初、奈良県立医大附属病院は右前頸部に銃創2か所が確認され、首から心臓に向かう弾道であり、大血管や心室に損傷を与えたことによる失血死と説明していた。左上腕部の銃創は、射出口の一つとみられるとしていたことから、首から心臓への弾道は不可解とされ、正面からの狙撃や倒れ込んだ際に何者かに銃撃された可能性が一部で指摘されていた。
7月29日、体に2発受けたとみられる銃弾のうち1発が見つかっていないことが報じられた。司法解剖などで医師が調べた際にはすでに体内から見つかっておらず、蘇生措置などの際に体の外に流出した可能性が考えられるという。事件から5日後の13日に現場検証が行われ、この時点でも銃弾は見つかっていないが、奈良県警捜査本部は「遺体の状況や体に2発受けたとみられる銃弾のうち1発は確認できており、事実関係の立証に支障はない」としている。警察庁も「銃弾の形状については丸薬のような直径10ミリほどの球体であり、解剖では発見されていない」と説明している。
本事件を受け、政府は8日11時45分、首相官邸危機管理センターに官邸対策室を設置した。また、警察庁も警備局長の櫻澤健一をトップとする対策本部を設置した。
12時50分頃、内閣官房長官の松野博一は首相官邸で記者団の取材に応じ、安倍の容体は不明とした上で、参院選に伴う各地での応援演説が予定されていた内閣総理大臣の岸田文雄が、緊急で官邸に戻ることを明らかにした。また、「応援演説などで各地にいる閣僚については、直ちに東京に戻るよう指示を出した」と述べた。
岸田は、正午頃に山形県寒河江市にある道の駅寒河江にて応援演説を行う予定であり、演説前に「ただいま安倍元総理が負傷されるという不確定ですが情報が入りました」とのアナウンスが入った後に岸田が約13分間の演説を行った。演説後、自民党選挙対策委員長の遠藤利明が岸田へ「総裁、急用ができましたのですぐ解散いたします。ご了解いただきたいと思います」と伝えた後、支援者と触れ合うことなく車に乗り込み、同県東根市の陸上自衛隊神町駐屯地へと向かった。その後航空自衛隊松島基地、羽田空港を経由し陸上自衛隊ヘリコプターで14時29分に首相官邸へと戻った。首相官邸へ戻ると共に、G20会合のためインドネシアを訪問中だった外務大臣の林芳正を除く全閣僚に対して速やかに選挙応援を中止し帰京するよう改めて指示を出した。13時過ぎ、自民党総務会長の福田達夫は、元文部科学副大臣の田野瀬太道に搬送先の奈良県立医大附属病院で情報収集を行うよう指示した。病院に到着した田野瀬は「搬送された時点で心肺停止状態」「輸血を続けている」という状況を福田に報告し、岸田にも共有された。一方で、男が動機として旧統一教会への恨みを口にしていることも間を置かずに秘書官から岸田に伝えられた。14時46分、岸田は記者団の取材に応じ、犯行を「卑劣な蛮行」と非難した上で、「今(容体が)深刻な状況にあると聞いている。今現在、懸命の救急措置が行われている。まずは安倍元首相が何とか一命を取り留めていただくよう、心から祈りたい」と声を震わせながら語った。
16時30分、緊急の関係閣僚会議が行われ、国家公安委員会委員長の二之湯智は会議後、記者団に対し「首相から閣僚らへの警護・警備を一層、強化し、選挙を公平に実施できるように要請があった」と述べた。また、二之湯から、警察庁に警護および警備の強化を指示したことを明らかにした。総務大臣の金子恭之は「このような蛮行があっても、しっかり選挙を行う体制を整える」と述べ、総務省の選挙担当部署に対策強化の指示を出す考えを示した。
18時55分、岸田が記者会見し、「偉大な政治家をこうした形で失い、残念でならない」などと述べ、安倍の死去を伝えた。
11日にはこれまでの功績を受ける形で、死去した8日付をもって、安倍を従一位に叙するとともに大勲位菊花大綬章及び大勲位菊花章頸飾を追贈することを持ち回り閣議に於いて決定した。戦後の首相経験者で最高位の勲章である大勲位菊花章頸飾が授与されるのは中曽根康弘(2019年11月死去)以来4人目。
8日午後、衆議院第一議員会館にある安倍事務所には、経済産業大臣の萩生田光一が入り、安倍事務所の秘書らと情報収集に当たったほか、安倍内閣で内閣官房参与などを務めた元参議院議員の荒井広幸や首相補佐官などを務めた内閣官房参与の今井尚哉らも入った。また、奈良県立医大附属病院には安倍派会長代理の塩谷立、同事務総長の西村康稔、安倍内閣で首相秘書官、内閣情報官、国家安全保障局長を務めた北村滋、前内閣総理大臣の菅義偉らが入った。のちに北村は内閣官房参与の今井から事件の一報を受けて、同病院に急行したと明かしている。また、菅も参院選の応援演説のため沖縄県に向かう予定であったが、事件の一報を受けて演説の予定がなくなったため、同病院に急行したと明かしている。その後、同病院に内閣官房長官の松野が入った。
安倍の遺体は司法解剖に付された後、妻の昭恵とともに翌9日5時55分、奈良県立医大附属病院を出発した。遺体を乗せた車の前後に5台の関係車両がつき、そのうち1台には元防衛大臣の稲田朋美の姿もあった。同日13時35分、東京都内の私邸に無言の帰宅を果たした。到着時には自民党政務調査会長の高市早苗と自民党総務会長の福田達夫、前国家安全保障局長の北村、警視総監の大石吉彦、外務審議官の鈴木浩、親交が深かったフジサンケイグループ会長の日枝久らが出迎え、その後、選挙応援の合間を縫う形で岸田のほか、元内閣総理大臣の森喜朗、小泉純一郎、衆議院議長の細田博之、参議院議長の山東昭子、元自民党幹事長の二階俊博、側近で経済産業大臣の萩生田、国土交通大臣の斉藤鉄夫(公明党所属)、東京都知事の小池百合子らが弔問に訪れた。
10日は、自民党幹事長の茂木敏充や、元衆議院議員の亀井静香、楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史らが安倍の私邸を弔問した。また、駐日アメリカ大使のラーム・エマニュエルは家族や大使館関係者を連れて、弔問に訪れた。
15日は、奈良県警察本部長の鬼塚友章や刑事部捜査第一課長らが事件現場を訪れ、銃撃地点からおよそ90メートルほど離れた立体駐車場の壁に見つかった銃弾の痕跡を確認し、献花台で手を合わせた。
事件現場では、連日献花に訪れる参列者で長蛇の列を成した。事件後、市が設置した献花台は18日に撤去されたが、その後も献花が続き、奈良市は「お花とお供えなどは、故人へのお気持ちと共にお持ち帰りください」との張り紙を現場に掲示した。また、11日から15日にかけて、自民党本部でも追悼の献花と記帳を受け付けることとなり、自民党幹事長の茂木は19日の記者会見で、5日間で約18,000人が訪れたと述べた。さらに、同記者会見で茂木は、自民党本部にて、100を超える国や地域の要人の献花や記帳があったとしている。
11日、通夜が東京都港区の増上寺において関係者のみで執り行われた。喪主は妻の昭恵。天皇・皇后が香典にあたる祭粢料、御供物の品と花1対を賜い、名代として侍従が焼香した。また、岸田や前内閣総理大臣の菅、自民党副総裁の麻生太郎、駐日アメリカ大使のエマニュエル、アメリカ財務長官のジャネット・イエレン、日本銀行総裁の黒田東彦、立憲民主党代表の泉健太、国民民主党代表の玉木雄一郎、フジサンケイグループ代表の日枝、楽天グループ会長兼社長の三木谷、トヨタ自動車社長の豊田章男、セガサミーホールディングス会長の里見治ら、国会議員や各国大使、ゆかりのある経済人や文化人約2,500人が焼香に訪れた。
12日に葬儀・告別式が行われ、この日までに259の国や地域、機関から約1,700件の弔意のメッセージが届けられた。葬儀では自民党副総裁で、安倍内閣では副総理兼財務大臣や外務大臣などを務めた元内閣総理大臣の麻生が「友人代表」として弔辞を述べた。葬儀後に安倍の棺を載せた霊柩車が自民党本部、議員会館、首相官邸、国会議事堂を回り、岸田や自民党幹部をはじめとする国会議員、官邸職員など関係者のほか、沿道で多数の一般市民が見送り、桐ヶ谷斎場に到着し荼毘に付された。
後日、東京都内と出身地の山口県内でお別れの会が実施される予定であり、山口県知事の村岡嗣政が県や県議会、市長会などが主催する形で「県民葬」を実施する意向を表明し、後述の国葬後の10月15日に山口県下関市の海峡メッセ下関で「故安倍晋三先生県民葬儀」が執り行われ、約2000人が参列した。
安倍が死去して以降、各国から弔問を希望する連絡が外務省へ相次ぎ、さらに自民党内や保守層から弔問希望を求める声が高まったことから、政府は14日、2022年秋に安倍の国葬を行う方針を固め、当日の岸田の記者会見にて発表した。岸田は記者会見に於いて安倍について「卓越したリーダーシップと実行力で首相の重責を担った」と説明した。また、国葬を以て安倍を遇する理由として、東日本大震災からの復興、経済再生、日米関係を基軸とした外交の3点を挙げ、「大きな実績を様々な分野で残した」と述べた。安倍は各国首脳ら国際社会から「極めて高い評価を受けている」とし、国葬を執り行うことにより「日本は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」とした。22日、政府は、国葬を日本武道館で同年9月27日に行うことを決定した。葬儀委員長は岸田、友人代表は前内閣総理大臣の菅が務めた。
内閣総理大臣経験者の国葬が行われるのは、1967年に死去した吉田茂以来となり、戦後2人目となる。
現場となった大和西大寺駅北口では、整備計画を一部修正して慰霊碑を設置する案もあったが、交通安全上の理由などから慰霊碑設置に慎重な意見が多いことから、奈良市長の仲川げんは、慰霊碑を設置せず車道として整備し、近くに花壇を設ける方針であると10月4日に発表している。
事件当日の演説は交差点中央のガードレールで囲まれたエリアで行われた。演説台のそばには、警視庁警備部警護課のSPを含む4人の警察官が配置されていた。本事件は「演説会場の選択」「当日の警察官の対応」の2つの側面で、それぞれに問題点があったことが指摘されている。
特徴 | 回数 | 都道府県 |
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選挙カーの上 | 24回 | 東京都(4)、大分県(3)、大阪府(2)、新潟県(2)、千葉県(2)、兵庫県(2)、石川県(2)、 埼玉県(1)、福岡県(1)、愛知県(1)、三重県(1)、北海道(1)、宮城県(1)、神奈川県(1) |
屋内会場 | 12回 | 東京都(3)、兵庫県(2)、三重県(2)、山口県(1)、福井県(1)、大分県(1)、北海道(1)、岡山県(1) |
後方に壁や車両がある | 9回 | 福島県(3)、奈良県(2)、愛媛県(2)、宮城県(1)、神奈川県(1) |
その他 | 2回 | 奈良県奈良市(1)、山口県長門市(1) |
映像外部リンク | |
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【安倍元首相】銃撃までの2分26秒 映像で見えた「警備の穴」(3分55秒) 日本経済新聞社によるアップロード動画 |
7月9日夕方、奈良県警察本部長の鬼塚友章は会見し「警護、警備に問題があったことは否定できない。本部長として痛恨の極みで、27年余の警察官人生で最大の悔恨だ」と謝罪した。安倍の警護計画書については自らが事件当日に承認したと説明し、「警護の態勢か配置状況なのか、個々の警護員の能力なのか、さまざまな問題点を早急に確認し、対策の見直しをはかっていく必要がある」と述べ、警察庁と連携して検証する考えを明らかにした。
同月11日、内閣官房長官の松野博一は「重大な結果を招いたことについて政府として大変重く受け止めている」との見方を示し、「警察庁からは、地元の警察の現場での対応のみならず、全国の警察を指導する立場にある警察庁の関与のあり方も含め、今回の警護、警備に問題があったとの報告を受けている」と述べた。
同月12日、警察庁長官の中村格は会見で「警察としての責任を果たせなかったことを極めて重く受け止めている」とした上で、「警察庁の関与のあり方にも問題があった。長官として慚愧(ざんき)に堪えない。責任は誠に重いと考えている」と述べ、警護体制の責任を認める発言をした。
同日、国家公安委員会委員長の二之湯智は会見で「警護警備に責任を有する警察を主管する大臣として非常に重く受け止めている」とした上で、警護警備に関する検証・見直しのための委員会を立ち上げるように指示したことを明らかにした。二之湯の指示を受けて、警察庁は同日、警察庁次長の露木康浩をトップとする警護警備に関する検証・見直しチームを立ち上げ、奈良県警や警視庁警護課の関係者から聞き取り調査を行い、現場の警護警備の体制や配置のほか、都道府県警察の警護計画などに対する警察庁の関与の在り方についても問題点の洗い出しを進め、8月中に警備上支障のない範囲で検証結果を公表するとした。
同月14日、内閣総理大臣の岸田文雄は会見で、本事件について「率直に言って、警備体制に問題があったと考えている」と述べ、警察当局に対し、「世界各国の要人警護の在り方などとも照らしながら、全面的に点検し、正すべきことは早急に正してもらいたい」と求めた。同日、警察庁の警護警備検証チームを奈良県警に派遣し、現地入りした警備局警備企画課長らが奈良県警本部長の鬼塚をはじめ、警護計画の策定に係わった警察官や現場で警護に当たった警察官から当時の状況について聞き取り調査を行った。聴取では、背後の警戒を含めた具体的な配置、役割分担、認識など実際の現場状況について確認したほか、聴取内容と事件当日に聴衆が撮影した映像や防犯カメラを照らし合わせるなど事実関係の把握を進めた。
同月18日、警護・警備に関する警察庁の検証チーム長を務める露木が事件現場を確認し、「360度開かれ、警護上は難しい現場だが、我々は与えられた条件で警護するのが仕事だ。そういったことを踏まえ、今後の警護のあり方も考えていきたい」と述べた。
事件発生から49日後の8月25日、警察庁の検証チームが本事件について警護計画の不十分な対応や現場の警護員間の意思疎通の不徹底など複合的要因があったとする検証結果を取りまとめた。これを受けて警察庁長官の中村が辞意を表明した。中村と櫻澤健一警備局長の辞任は翌26日の閣議で了承された。警察庁長官が個別の事件で引責辞任することは極めて異例のことで、過去にほぼ例がなく、銃撃によって首相経験者が死亡するという重大な結果を重く見たものとみられる。また奈良県警は本部長の鬼塚に減給3か月、警備部長に減給1か月、警備部参事官と現場指揮官だった警備部警備課長を減給1か月、ほかの2人を戒告としたほか、管轄の奈良西警察署長と同署警備課長ら3人を本部長訓戒、本部長注意の懲戒処分を課すと発表したが、同日、鬼塚並びに警備部長、警備部参事官も辞意を表明。
本事件の検証結果を踏まえて、警察庁では『警護要則』の改正に踏み切り、これまで「都道府県任せ」(同庁幹部)だった要人警護を国主導に転換することとした。具体的には警察庁が「警護対象者・場所・聴衆の規模」などの情報について収集・分析を行い、「警護計画の基準」に従って各都道府県警が警護計画を作成し、警察庁が事前審査を行うことで国の関与を強化する。ドローンや3D技術、AIによる異常行動検知システム、警護対象者の周囲に設置する防弾壁や防弾衝立、防弾ブランケット、防弾シェルターなど銃撃から警護対象者を守るための装備資機材を新たに導入するほか、交通規制のための制服警察官の配置、警察庁主導で銃器や突発事案に対処する高度な訓練を充実させることで警護の高度化を図る方針を固めた。本事件のように特定のテロ組織に属さない個人がインターネット上で銃器や爆発物の製造に関する情報を容易に入手できたという問題点を踏まえて、警察庁ではローンウルフを「新たな脅威」と位置づけ、銃器対策やネット上の情報収集を強化する方針も固めた。
12月28日、本事件を受けて、奈良県警は警備部警備課内に警察庁との連絡調整を専門に行う「警衛警護室」を新設する方針を固めた。警察庁が「後方警戒の空白」を事件発生の主な原因とする検証結果を公表したことを踏まえ、県警は要人警護に十分な人員を割く必要性と警護計画の策定に警察庁が強く関与するようになったことから、警衛警護室を新設する組織改編を行うことで警察庁との緊密な連携を図ることとした。また、実践的な警護能力を養うために警視庁警護課への派遣なども行っていく方針を固めた。
2023年1月8日、本事件を受け、警察庁は要人襲撃の予兆となり得るインターネット上の投稿などを収集・分析し、警護現場に活用するためのサイバーパトロールを開始した。従来のサイバーパトロールは違法薬物の売買や児童ポルノなどの摘発が目的であり、要人襲撃に特化した情報収集は行っていなかったが、本事件前に男が「安倍政権に何があってもオレの知った事ではない」などのツイートを投稿していた実態を踏まえ、警察庁はサイバーパトロールを活用することで、要人への不満などを執拗に投稿する人物への情報収集を全国の警察に指示した。情報は警察庁に報告され、同庁が危険度を分析した上で、必要に応じて警護員の増員などを指示する。
1月26日、本事件等を受け、警察庁はインターネット上の違法・有害情報の通報受付やサイト管理者らへの削除依頼の対象として、3月から「爆発物・銃器の製造」「殺人」などを追加し、監視体制を強化する方針を明らかにした。SNSの投稿を分析する人工知能の導入も検討する。
2月16日、一連の捜査が終結したことを受け、警察庁長官の露木康浩は、本事件のようなローンオフェンダーへの対策としてインターネット上の公開情報の収集も含めた情報収集活動の強化と、銃の製造方法などを教える有害情報の削除依頼などの取り組みを強化する考えを示した。
7月3日、警察庁は、本事件のようなローンオフェンダーへの対策として交通違反や警察窓口への相談などで把握した危険度の高い人物の情報を公安部門に集約する方針を固めた。刑事、生活安全、地域などの部門が把握する危険性のある人物の情報を公安部門に一元化し、分析した上で対策を講じる。これまでは警察窓口への相談や交番単位で、世間に強い不満を持つ個人を把握することがあったが、部門間での共有が行われていなかった。銃撃事件前から、警察庁は爆発物の原料となる化学物質を大量購入する不審な人物がいた際、販売事業者に通報を求めてきたが、爆薬の原料が含まれる肥料などは購入に正当な目的があるか店頭では見極めが困難なことから、その効果は限定的だった。そうした中で、ローンオフェンダーによる手製銃や手製爆弾を使用した事件が発生したことから、警察庁は部門による特定の組織を対象とした情報収集や完成銃の対策だけでは警戒の空白が生まれると判断した。事件後に17道県警察で専門の警衛警護室が発足し、警護員は全都道府県警察で増員されたほか、警察庁職員を米国など海外の警護機関に派遣し訓練視察結果を参考に新たな形の訓練も始めた。また、警察庁は与野党に対して演説会場を原則として屋内にすることや屋外の場合は聴衆との距離を設けること、手荷物検査や金属探知検査の実施などを要請している。
実行犯の男は事件当時41歳で、奈良市の集合住宅に住んでいた。
男は1980年(昭和55年)9月10日、京都大学工学部出身の父と地元の公立大を卒業した母との間に三重県で生まれ、母親の実家は建設会社を営む裕福な家庭だった。男には兄と妹がいた。
男が4歳だった1984年(昭和59年)12月に、建設会社の役員を務めていた男の父は当時住んでいた大阪府東大阪市でマンションから飛び降り自殺し、その後一家は母親の実家がある奈良市内へ転居した。1985年(昭和60年)には母親がその建設会社の取締役に就任している。また、男の父親が自殺した1984年から2020年(令和2年)頃までは、伯父が男の家族の支援をしていた。
男の同級生によれば、小中学校時代の成績は優秀で、奈良県内有数の進学校である県立高校に進学した。中学時代はバスケットボール部の主力メンバーで、高校では応援部に所属していた。
男の伯父によれば、男の父の自殺と同時期に男の兄が小児がんを患っており、こうしたことが起因し、男の母親は世界基督教統一神霊協会(旧統一教会、現在の世界平和統一家庭連合〈略称「家庭連合」〉。以下、旧統一教会)に入信した。伯父によれば母親は弟を交通事故で亡くしており、1982年(昭和57年)頃に母親の実母が亡くなったことにもショックを受けていたという。
男の母親の入信時期は、男の伯父が母親本人から聞いた話として、1991年(平成3年)だとしている。一方、旧統一教会側の発表によれば、1998年(平成10年)頃に正会員となったとされる。食い違いの理由として、旧統一教会はスポーツニッポンの取材に対し、「入会の記録は、入会願書が受理されたタイミング。基本的には、ご紹介者を契機とした関係の構築や企画への参加というプロセスがあるため、入会以前に関わりがあった可能性はある」としている。
1998年10月に母親は奈良市内2か所にある宅地を母方の祖父から相続するが、それらの土地と男ら3人の子供と一緒に住んでいた住宅を1999年(平成11年)6月までに売却。統一教会に対し土地などの売却で得た資金や、夫(男の父親)の生命保険金5,000万円など合わせて約1億円を献金した。男の伯父によると、男の母親は1991年の統一教会入会直後に2,000万円、その数日後に3,000万円の献金を行い、1994年(平成6年)頃に1,000万円、1998年以降に4,000万円を献金し、徐々に家計を圧迫したが、旧統一教会側は母親の献金の金額や時期について「確認できていない」としている。
男と旧統一教会との交流は、男が高校生の頃から始まった。1998年、母親が通う旧統一教会のセミナーを受けた。男の母親が通う奈良市内の旧統一教会教会長を務めていた男性によると、男は母親が信仰する旧統一教会とはどのようなものなのかを確かめるために参加したように映ったとしている。 2002年(平成14年)8月、1億円の献金が原因で母親は自己破産した。
1999年3月、男は県立高校を卒業。男は家庭の困窮により大学に進学せず、2002年8月に任期制自衛官として海上自衛隊の佐世保教育隊に入隊。4か月後、呉基地に移り、護衛艦「まつゆき」で艦載兵器を取り扱う砲雷科に配属される。広島県江田島市の第1術科学校の総務課に移り、2005年(平成17年)に任期満了で退職した。男の伯父によると、男は海上自衛隊に所属していた2005年に自殺未遂を起こした。生命保険の受取人を母親から自身に変えた上で、旧統一教会への献金によって生活が困窮した兄と妹に、自身の死亡保険金を渡すことが目的だったとしている。奈良市内の旧統一教会教会長(当時)は、広島で入院していた男を訪ね、「何でこのようなことしたのか」と尋ねると、「少しでも妹の生活の足しになるかと思って」と述べたという。
この頃、男の一家の窮状を知った教会長を窓口に、男の親族側と旧統一教会側との献金の返金協議が開始され、男もこの協議に参加していたとされる。その後、旧統一教会側は2005年から2014年(平成26年)にかけて、計5,000万円を返金したとしているが、親族によればその5,000万円も母親が再び献金したと説明した。返金は月に30万から40万円ほど、現金による手渡しで行われたとされる。
2005年頃、男は一人暮らしを始め、アルバイトや派遣社員で生計を立てるようになったが、人間関係がうまくいかず、職を転々とした。自衛官退官後から事件までの17年間の勤務先は10社以上で、人間関係で嫌気がさすと次の仕事が決まっていないのに辞める、ということを繰り返しており、無職期間は少なくとも通算約7年に及んだ。退官後最初にした仕事は2006年(平成18年)12月に始めた測量会社のアルバイトであったが、翌年6月に退職。その後の2年半は無職で、この間に測量士補の資格を取得し、宅地建物取引士やファイナンシャルプランナーの資格も取った。
2009年(平成21年)には、母親が1998年に親族から経営を引き継いだ建設会社が解散した。男は事件までの10年ほどは職場を移りつつ、派遣社員としてフォークリフトを使った仕事に従事していた。闘病していた男の兄は2015年(平成27年)に自殺した。
2020年10月には、大阪府内の人材派遣会社に登録し、同月から京都府内の工場に派遣社員として勤務した。この工場では当初は仕事を的確にこなし、評価も高かったが、2021年(令和3年)春頃からは職場の先輩や社外のトラックドライバーと口論するなどのトラブルも起こしていた。一方で、職場の社長によれば「誰彼かまわずかみつくタイプ」ではないとし、「フォークリフト操縦は衝突や破損事故が頻繁に起きるが、仕事を完璧にこなそうとするタイプの彼については事故報告が1件もなかった。そのため、同僚から意見されるとおまえに言われたくないと反発する。進学校を出ている彼の中には自分はこんなところで働く人間ではないといういら立ちが強くあったのでは」と語っていた。
男は事件後の取り調べでも「母親が旧統一教会に入会し、多額のお金を振り込んだ影響で破産したことがそもそもの元凶」「家庭生活がめちゃくちゃになり、(同団体を)絶対成敗しないといけないと思った」と供述した。
母親は2009年頃に教会と距離を置き始め、活動を離脱していたが、2019年(平成31年・令和元年)に教会員と再び連絡を取り始め、2022年初めごろからは月1回ほど教会のイベントに参加していた。男は事件直後の供述で、「最近も母親と電話で連絡を取っていた」と述べており、母親の宗教活動再開を把握していたとみられる。
2019年(令和元年)10月5日、旧統一教会創設者の文鮮明の妻で、総裁の韓鶴子(韓国在住)が来日。同日に名古屋市のホテルナゴヤキャッスルで開かれた「ジャパンサミット&リーダーシップカンファレンス」に出席するためと、翌6日に常滑市の愛知県国際展示場で開催された「孝情文化祝福フェスティバル 名古屋4万名大会」にメインスピーカーとして参加するためであった。男は6日、火炎瓶を持って愛知県国際展示場に向かうが、「教会のメンバーしか会場内に入れなかったので、行くだけで何もできなかった」という。その後、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、韓が来日する機会は閉ざされ、男も韓国への渡航を諦めた。男は「元凶は韓総裁かと思ったが、韓総裁を日本に連れてきた岸信介元首相の孫ということで、安倍元首相も一緒と思った」と供述。また、「安倍氏が統一教会を日本で広めたと思っていた」と説明した。
2019年10月には男のTwitterアカウントが作成され、常滑市の愛知県国際展示場で開かれた「孝情文化祝福フェスティバル」(男が襲撃に失敗した集会とされる)から7日後の10月13日に初めてのツイートが投稿された。事件までに男が投稿したツイートは計1,363件で、旧統一教会への恨みが繰り返し語られる一方で、安倍への殺害を示唆するような書き込みはなかった。安倍政権の面々が「朝鮮民族主義の極右である統一教会」(同年10月14日のツイート)とつながりを持つのは所詮「金と票」(同)が目的で、「過去の経緯」(同)があるからだという認識を持ちながらも、政権を批判するツイートに対しては「安倍政権の功を認識できないのは致命的な歪み。永久泡沫野党宣言みたいなもの」と返信するなど、安倍政権や自民党を一定評価するものが多かった。
2020年9月2日、国際政治学者の三浦瑠麗が、歴代最長政権を築いた安倍政権に関する論文を産経新聞社のオピニオンサイト「iRONNA」に寄稿。三浦の記事には、日本会議の関連団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が2015年11月10日に日本武道館で開いた集会「今こそ憲法改正を! 1万人大会」の写真が掲載され、「安倍晋三首相はビデオメッセージを通じ『国民的コンセンサスを得るに至るまで(議論を)深めたい』と訴えた」とのキャプションが付された。これを受けて男は、三浦が記事のリンクを貼った投稿をリツイート(拡散)し、「内容に関係ないが、写真が統一教会の大会そのもの。どこまで入り込んでいるのか」と綴った。
2021年3月頃、自宅とは別に、家賃約2万円のアパートを借りた。男は「火薬を乾かすために借りた」と供述している。経済的な理由から9月頃に解約。
同年9月12日、天宙平和連合(UPF)主催の「神統一韓国のためのTHINK TANK 2022 希望前進大会」が韓国・京畿道加平郡の清心ワールドセンターで開催。韓国の会場とオンラインで開いた同大会に、安倍は「今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」「UPFの平和ビジョンにおいても、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします」とのビデオメッセージを送った。同イベントにはドナルド・トランプ前大統領もビデオ出演しているが、米国政府倫理局(OGE)の公文書により、トランプはUPFからビデオ出演3回の講演料として計250万ドルを受け取り、ペンス前副大統領も講演1回で55万ドルの報酬を得ていることが明らかとなっている。ただしUPFは安倍については「報酬は払っていない」と主張している。
集会の様子はインターネット上で視聴可能な状態におかれ、憂慮した全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は安倍の国会事務所と下関市の事務所に内容証明郵便で抗議文を送った。また、集会から5日後の9月17日、オンラインの記者会見で抗議文を公開した。安倍の事務所は抗議文の受け取りを拒否した。ビデオメッセージの件を記事にしたのは、『週刊ポスト』2021年10月8日号、『FRIDAY』同年10月15日号、『実話BUNKA超タブー』同年11月号、『LITERA』同年9月14日、『しんぶん赤旗』電子版の5媒体のみ。「大手メディアがこれを取り上げることはなく、自身の政治生命や党の支持率にはいかほどの影響もない」という安倍の読みは的中した。安倍は11月11日に清和政策研究会の会長に就任し、名実ともに安倍派の領袖となった。
男は「動画を見て、安倍氏と団体につながりがあると思い、絶対に殺さなければいけないと確信した」と供述しており、読売新聞は、男は2021年秋頃に安倍の殺害を決意したと報じた。一方、毎日新聞と朝日新聞は、男が動画を見た時期を「2022年3月〜4月」「2022年春」と報じ、毎日新聞は男が動画を見た、2022年春頃に安倍の殺害を強く決意したと報じた。
アパートを9月に解約した後、男はもう一度火薬を乾かすことを目途として、2021年11月から2022年2月頃にかけて、奈良県内でシャッター付きのガレージを借りた。乗用車が1台止められるほどの広さで、契約額は月額15,000円だった。2021年春から作り始めた銃が2022年春頃に完成する。
2022年4月半ば頃、男は「体調が悪い」と言って職場(前述の派遣先の京都府内の工場)に来なくなり、5月15日に依願退職。その後派遣先の大阪府内の会社で働いていたが、6月上旬に退職し、それ以降は事件まで無職だった。事件当時は消費者金融からの借入金など、少なくとも数十万円の負債を抱えていた。
6月22日に参院選が公示。6月28日、安倍は奈良県入りし、近鉄大和西大寺駅南口と、近鉄生駒駅前の2か所で演説を行った。男は自民党のウェブサイトによって安倍の遊説スケジュールを把握していたが、「このときはやるつもりはなかった」という趣旨の供述をしている。
事件後の7月17日に奈良県警が押収した、男がジャーナリストの米本和広宛てに送っていた手紙(後述)には、男が開設したとされるTwitterのアカウント名が記されていた。同日、朝日新聞と読売新聞は、男のTwitterアカウントを特定したと報道し、投稿された文章を記事に掲載した。この報道後、7月17日朝の時点で0人だったTwitterのフォロワー数は、18日20時時点で約45,000人に急増。それぞれの投稿に対し多数のリツイートや「いいね」がなされ拡散されたが、19日未明から男のアカウントが凍結され閲覧不能となった。Twitter社は報道機関の取材に応じ、「憎悪や差別、新たな攻撃を引き起こしかねない投稿を禁じる」とする同社の規約に違反したと認める一方、「凍結にいたる詳細等についてはお答えできない」とコメントした。
その後、7月31日と翌8月1日にかけて、読売新聞や産経新聞は、前述のアカウント(便宜上、アカウントBとする)を開設した人物と同一人物が別のアカウント(便宜上、アカウントAとする)を開設していたと報じた。アカウントAはアカウントBが開設された、2019年10月よりも前に開設および凍結されていた。凍結の理由として、Twitter社は「特定の標的に対し、殺害の意思を示す」ことなどを禁じる利用ルールに違反していたためとしているが、利用ルールに抵触した内容の詳細については明らかにしていない。
この詳細について、読売新聞と産経新聞は関係者から取材したとされる内容を以下のように報じているが、内容に食い違いが起きている。
同年7月3日から自身のスマートフォンで、安倍の遊説日程を複数回閲覧。安倍の7月7日のスケジュールを見て、このとき男は初めて安倍の殺害を実行に移すことを決意した。7日は(1)15時30分、西宮市、末松信介の街頭演説会→(2)16時45分、神戸市、末松信介の街頭演説会→(3)19時、岡山市、小野田紀美の個人演説会、の順番で3会場を回ることが記されていた。7月6日、男はJR奈良駅の券売機で岡山駅行き新幹線の片道切符を購入した。前職の退職により、「金がなくなり、7月中には死ぬことになると思った」「その前に安倍氏を襲うと決めた」と供述している。
事件前日にあたる7月7日4時頃、男は奈良市三条大路の旧統一教会の建物に対して自作の銃の試し撃ちを行った(後の捜査で壁面などに痕跡のような穴が6箇所確認され、弾丸のような金属片も発見された)。のちに近所の住人が、3時半から4時頃までの間に大きな破裂音を聞いたと証言している。同日、男は3発発射できる銃を持参して新幹線に乗った。JR岡山駅から会場の岡山市民会館に向かう途中、コンビニエンスストアに入り、店内の郵便ポストにジャーナリストの米本和広宛ての手紙(後述)を投函した。
19時、小野田の個人演説会が開幕。安倍は冒頭の10分間、応援演説を行った。男は「手荷物検査などがあって近づけなかった」と供述している。自民党はこの日の午後、8日の安倍の遊説先を長野から奈良に急遽変更した。男は諦めかけていたが、自宅へ帰る途中、翌日に安倍が奈良に来るとの情報を自民党のウェブサイトで知った。
7月8日10時前、男はグレーの半袖ポロシャツに作業ズボン姿で、ショルダーバッグをかけて自宅最寄りの近鉄新大宮駅から近鉄奈良線に乗車。隣駅の大和西大寺駅にて下車し、近くの商業施設に立ち寄るなど現場付近を下見した。11時31分頃、男は犯行におよび、11時32分に殺人未遂の現行犯で逮捕され、奈良西警察署に移送された。
押収された自作銃は岡山に持参した銃とは別のものであった。長さ約40センチメートル、高さ約20センチメートルで、金属製の筒を2本束ね、木製の板やテープで固定されていた。それぞれの筒に6個の弾丸が込められたカプセルが入っており、スイッチを入れることでバッテリーから流れてくる電気で火薬に着火させ、一度の発射で1本の筒から6個の弾丸が飛び出る火縄銃のような仕組みになっていた。本事件では計12個の弾丸が発射され、そのうち少なくとも2個が安倍に命中したとみられる。
同日12時過ぎ、奈良西警察署で男の弁解録取書が作成された。この最初の弁解録取手続で、男は聴取を担当した同署巡査部長に次のように述べた。
「結果的に安倍元首相が死んでも仕方ないという思いで銃を撃ちました」
「安倍元首相ではなく、統一教会のトップ、韓鶴子総裁を撃ちたかった。でも、コロナで日本に来ないので、統一教会と深い関わりのある安倍元首相を撃ちました」
この時点で、奈良県警は旧統一教会への恨みから安倍を銃撃したという犯行動機を把握し、東京・霞が関の警察庁に報告された。奈良県警からの報告を受けたのは、テロ対策を所管する警備局で、当初の情報は「奈良で安倍元総理が撃たれたようだ」「ライフルで撃たれた」というものであった。警察庁では、政治家らの警護警備を所管する警備第一課警護室に警備局長の桜沢健一らが集まった。そして、事件の捜査を所管する警察庁刑事局捜査第一課の担当者が奈良県警との電話連絡に追われ、男の身上や組織性の有無といった情報を収集した。警備局公安課の担当者も過去にテロ行為を企てた人物などがリスト化されている資料を調べたが、そこに男の名前はなかった。男は一人暮らしのマンションで鉄パイプなどを用いた銃を密かに製造し、同じマンションの住人がのこぎりで何かを切断するような音を聞いていたが、警察への通報はなかったことからノーマークの人物だった。警察庁では、組織に属さず人知れず過激化してテロを起こす危険性のある人物をローンオフェンダーと呼ぶが、男もローンオフェンダーだった。
同日15時過ぎ、奈良県警の県民サービス課広報官は捜査第一課の部屋の前で、記者団に対し、「動機について、安倍元首相の政治信条に対する恨みではないと話している」と説明した。ただし、この段階で男は「政治信条」という言葉を使っていなかった。「参院選の投開票日を2日後に控え、安倍元首相と政治信条が近い議員らに動揺が広がらないようにすべきだ」という意見が県警幹部の中であり、意図的な情報操作が行われた。さらにその日の夕方までの取り調べで、男は「もともと統一教会を日本に引き込んだのは、岸信介元首相だ。ただ、すでに死んでいるので、その孫の安倍元首相を狙った」と供述した。取り調べと並行して、捜査1課では男の身上や教団についての確認が進められ、「教団トップの名前も間違っていない。確信犯だ」と受け止める捜査幹部もいたが、後述する記者会見では「旧統一教会」の名称は伏せられた。
同日21時半、奈良県警の記者会見が行われた。刑事部長による事件概要の説明が終わり、質疑応答に入ると、民放の記者が「弁録(弁解録取書)の内容は入っているか」と質問した。捜査第一課長は「特定の団体に恨みがあり、安倍元首相がこれとつながりがあると思い込んで犯行に及んだ旨、本人が供述しております」と机上の資料を読み上げた。「特定の団体というのはどういった系統の団体なのでしょうか」との質問に対し、捜査一課長は事前の協議どおり「それにつきましてお答えを差し控えさせていただきます」と答えた。さらに捜査1課長は「思い込んで犯行に及んだと。もうありのままこの通り申し上げております」と記者に回答した。実際には、男は「思い込んで」とは供述していなかったことがのちに明らかにされている。この警察の忖度について、ジャーナリストの渡辺周は、団体名を伏せたことへの疑問とともに、つながりの程度はともかくとして何も関係がなかったかのような発表はおかしいと、早い時期から批判している。
同日17時15分ごろから深夜にかけて、男の自宅マンションの家宅捜索が行われた。自宅からは作りかけも含めた7丁の手製の銃や爆発物が発見され、近隣住民には一時、避難が呼びかけられた。その後の報道によると、押収されたパソコンには武器製造に関するウェブサイトの閲覧履歴が残っていた。男は「硝酸アンモニウムや硫黄、木炭などを混ぜて黒色火薬を作ったほか、花火から火薬を取り出した」「火薬をつくる方法はネットで調べた」と供述している。事件当時、男の銀行口座の残額は20万円ほどで、カードローンなどの借入金が数十万円あった。
7月9日、フランスの『フィガロ』『レゼコー』『BFM TV』は、被疑者が供述している団体はいわゆる「統一教会」であると報道。米国の『ワシントン・ポスト』は7月9日に配信した記事を10日に加筆修正し、「世界平和統一家庭連合の東京事務所の代表が、容疑者の母親が信者であることを確認した」と報じた。また『フィガロ』は、日本のメディアが団体名を伏せて報じていることを、7月10日と11日に指摘した。
実際には日本のメディアも旧統一教会への恨みで犯行に及んだと供述している情報を得ていたが、供述内容が事実だと確認できるまでは団体名は出さず、9日付の講談社『現代ビジネス』や10日付の新潮社『デイリー新潮』といった一部の雑誌系メディアを除き、教団名を言及せず「特定の宗教団体」等と呼称していた。
同日、世界平和統一家庭連合の米国事務所は声明を発表。暴力を非難するとともに「銃は我々の宗教的信念や慣行と相容れないものである」と述べた。
同日、文藝春秋の情報サイト「文春オンライン」は、「容疑者は母の宗教団体の分派の団体に所属していたようだが、母が所属する団体を恨んで対立が生まれたようだ」という捜査関係者の証言を記事に掲載した。旧統一教会の分派の一つである世界平和統一聖殿の日本支部「日本サンクチュアリ協会」はこの記事にすぐに反応し、「日本サンクチュアリ協会と容疑者は接点も関係も一切ない」「マスコミやその他の推測記事や悪意ある印象操作によるものと断じ、撤回を求める」との声明を発表した。
7月10日午前、奈良県警は容疑を殺人に切り替え、男は奈良地方検察庁へと送致された。同日、世界平和統一家庭連合の東京事務所の代表は、男の母親が信者であることを認めた。同日夜、参院選の開票が実施される。
7月11日14時、世界平和統一家庭連合日本教会会長の田中富広は記者会見を開き、男は在籍していないものの、男の母親は正会員であり、母親は月に1度程度は主催行事に参加していたことを明らかにした。安倍については、「友好団体が主催する行事にメッセージが送られてきたことがあり、『世界平和運動』に関しては賛意を示してくれた」としつつ、「会員や顧問になったことはない」「選挙協力も安倍元首相についてはない」と述べた。また、「過去に献金トラブルもあったが、2009年からコンプライアンスを徹底した。今は献金の強要はしていない」と説明した。
団体名の報道を避けていた日本のメディアは、11日に田中富宏会長が会見し、この日は男の「事件前日に教団の関連施設を銃撃した」という供述通りに弾痕のようなものが確認されて物的証拠も明らかになったことから、「世界平和統一家庭連合」あるいは「旧統一教会」と明記するようになった。
7月12日、旧統一教会の被害救済などに取り組んでいる全国霊感商法対策弁護士連絡会は記者会見を開き、元信者への返金を命じる民事裁判の判決が近年も相次いでいるとして「(同団体による)献金の強要はないという説明はうそ」と述べた。また、同連絡会はあわせて政治家に対して、同団体への支持を表明するような行為を慎むよう求める声明を公表した。
7月17日、男が銃撃を示唆する手紙を松江市在住のジャーナリスト・米本和広に岡山市内から送っていたことが明らかとなった。男はかつて、米本のブログに旧統一教会を批判する書き込みをしていたとされる。男は手紙の中で、統一教会創設者の文鮮明を「世界中の金と女は本来全て自分のものだと疑わず、その現実化に手段も結果も問わない自称現人神」と評し、「私はそのような人間、それを現実に神と崇める集団、それが存在する社会、それらを『人類の恥』だと書きましたが、今もそれは変わりません」と記載した。安倍については「苦々しくは思っていましたが、本来の敵ではないのです」「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」という言葉が綴られていた。奈良県警が押収したこの手紙には、男が開設したとされるTwitterのアカウント名が記されていた(前述)。
7月22日、奈良地方検察庁が奈良地方裁判所に鑑定留置を請求し、11月29日までの約4か月間の留置が認められた。
9月8日、当時付近に止められていた選挙カーを配置し、男が手製銃を撃ったとされる場所に銃の模型や靴を置いて犯行状況を再現し、捜査員がレーザー光線を当てて距離を測る専用機材を使って、男と安倍との位置関係を確認する捜査を行った。
同日、奈良県警が殺人容疑のほか、選挙の自由を妨害したとする公職選挙法違反容疑での刑事責任追及も視野に入れる方針と報じられた。また、旧統一教会の関連施設が入るビルに手製銃で試射し、火薬を製造したとして、建造物損壊や火薬類取締法違反、銃刀法違反容疑でも立件を検討していることが報じられた。捜査関係者によると、事件で使用された手製銃や自宅から押収された手製銃に関しても銃刀法違反や武器等製造法違反容疑での立件も視野に科学捜査研究所などで押収した手製銃の構造や性能の鑑定を行い、発射実験などで発射能力や殺傷能力の裏付けを進めている。
11月8日、奈良県警が銃刀法違反や公選法違反容疑などで追送検する方向で検討していることが報じられた。被害者は1人だが、民主主義の根幹を揺るがす重大事件と捉えて死刑求刑を見据えた捜査とされ、鑑定留置終了後の取り調べを踏まえて検察庁と協議して追送検を最終的に判断する。県警は衆人環視下で銃が発射された事態を重視し、刑が重い銃刀法違反の発射容疑の適用を視野に捜査しているが、銃刀法は既製銃を前提にしていることから、今回の手製銃が発射容疑の適用対象となるのか県警は慎重に検討するとされた。
11月17日、奈良地方検察庁が奈良簡易裁判所に鑑定留置期間の延長を請求し、2023年2月6日までの延長が認められた。しかし弁護側は「通算6カ月以上の鑑定留置はあまりにも長すぎる」として奈良地裁に準抗告を行った。奈良地裁は18日に奈良簡裁の決定を取り消し、同1月10日までに短縮した。
12月7日、男が「母親が旧統一教会の用事に行って授業参観に来なかった」などと、精神鑑定で少年期の不満を漏らしていることが報じられた。男が一方的に教団と母親の行動を関連づけている可能性もあり、奈良地検はこうした事情を確認するため留置期間を延長し鑑定を続け、慎重に事実関係を精査しているとされる。12月19日、奈良地検が奈良簡裁に鑑定留置期間の延長を申請し、1月23日までの延長が認められた。弁護側は「さらに延長すべき必要性は認めがたい」として奈良地裁に準抗告を行い、20日に奈良地裁は延長の決定を取り消した。
12月24日、奈良地検は事前に複数の手製銃を試し撃ちした上で殺傷能力や命中精度の高いものを選ぶなど計画的に事件に及んだ点などから、刑事責任を問えると判断し、勾留期限を迎える2023年1月13日までに男を殺人罪で起訴する方針を固めた。
2023年1月6日、県警は科学捜査研究所などの鑑定で、銃撃に使われた手製銃や押収した手製銃の一部について、殺傷能力があることを確認されたことから、銃としての性能を備えていると判断した。一方、一部の手製銃では殺傷能力が確認できなかったという。この鑑定結果を受けて、県警は公共の場での発射を禁じる「拳銃等」に該当すると結論づけた上で、発射された弾丸がこの手製銃に適合するものだったとして加重所持容疑も適用した。また、自宅にあった銃についても銃刀法違反で、一連の銃と火薬は武器等製造法違反の無許可製造容疑や火薬類取締法違反の無許可製造容疑で追送検し、建物を銃撃した建造物損壊と銃刀法違反の発射容疑でも追送検する方針を固めた。
1月13日、奈良地検は男を殺人罪と銃刀法違反で起訴した。歴代最長政権を担った首相経験者が街頭演説中に襲撃された異例のテロ事件であり、男の目的は安倍を殺害して旧統一教会への社会的な批判を集めることであったことから、検察側は犯行の計画性と執拗性に加えて、民主主義の根幹である選挙期間中に首相経験者が殺害されたという事件の重大性を捉えて死刑求刑も選択肢に入れるとみられる。
2月13日、県警は男を事件前日に旧統一教会の関連施設が入る建物に向けて手製銃を試し撃ちしたとする建造物損壊や銃刀法違反、無許可で銃を製造したとする武器等製造法違反など5つの容疑で追送検した。男は取り調べに対し、選挙を妨害する意思を明確に示してはいなかったものの、公衆の面前で発砲すれば、結果的に演説が中止になるという「未必の故意」があったと県警は判断し、公職選挙法違反容疑でも追送検した。14日に奈良地検は男を大阪拘置所に移送した。弁護側は「遠方の拘置所は弁護活動に支障をきたす」として、15日に奈良地裁に準抗告を申し立てたが棄却された。弁護側は最高裁に特別抗告したが2月28日付で棄却された。
3月30日、奈良地検は男を武器等製造法違反など4つの罪で追起訴した。公職選挙法違反容疑は嫌疑不十分で不起訴とした。本事件で、公職選挙法違反罪の適用の可否が焦点となったのは、事件全体の動機の立証に影響するとの見方があったからとされ、警察当局を中心に公職選挙法違反罪で起訴した方が「民主主義への挑戦と主張しやすく、厳刑につながる」との見方もあった。
2023年4月20日、奈良地方裁判所に対して、司法情報公開研究会共同代表で、神奈川大学特任教授でジャーナリストの江川紹子らが本事件は選挙活動中に行われた政治的テロであり、事件後に多くのデマがSNS上で広がったことからも裁判に透明性が求められるなどとして公判前整理手続きの公開を求める要望書を提出した。
5月18日、奈良地裁は第1回公判前整理手続きの期日を6月12日に指定したと明らかにした。初公判に向けて、争点整理や証拠調べなどが行われる。手続きは非公開で進められ、初公判は2024年以降に裁判員裁判で審理される見通しである。本事件は男の母親が教団に多額の献金をしていたことから、恨みを募らせた末に安倍を銃撃する形で社会の耳目を集めることが目的であったことから、裁判では男の境遇など情状面を踏まえた量刑が争点とみられる。
6月12日、第1回公判前整理手続きが予定されていたが、奈良地裁に不審物が届いたことから、爆発物処理班が出動して不審物の確認作業が行われた。裁判所前は一時騒然となり、その日の公判前整理手続きは中止となった。不審物の中身はインターネット上で集めた約1万3000人分の減刑嘆願書を印刷したものであった。
その後、10月13日に改めて第1回公判前整理手続が奈良地裁にて実施された。男は出席せず、裁判官、検察官、弁護人の3者で20分ほどの間非公開で行われた。また、同日には正面玄関以外の出入り口を封鎖し、金属探知機を設置して来所者の手荷物検査を実施するといった警備を敷いた。
本事件は『読売新聞』が実施した2022年の「日本10大ニュース」読者投票により、全有効投票数(26,606通)の91.2%となる24,254票を獲得し、第1位に選出されている。
2024年3月、文部科学省は2025年度から教育機関で使用される予定の教科書の検定結果を公表。この中で本事件について、自由社と育鵬社が発行する中学用教科書「社会科の歴史と公民」にて記載されていることが明らかになった。
事件当日は第26回参議院議員通常選挙の選挙期間中であり、各政党は街頭演説などの選挙活動を予定していたが、事件を受けて自民党・立憲民主党・公明党・日本維新の会・国民民主党・NHK党は同日中の選挙活動を見合わせた。一方で、日本共産党委員長の志位和夫は「暴力に対して民主主義が屈したという形になってはいけない」として選挙活動を続ける意向を示した。れいわ新選組・社会民主党も選挙活動を続けた。
翌7月9日の選挙活動について、自民党総裁の岸田文雄は、8日の記者会見で「民主主義の根幹である自由で公正な選挙は絶対守り抜かなければならない。暴力に屈してはならない」と述べ、予定通り行うこととし、各党党首も同様の理由で予定通りの選挙活動を行った。NHK党党首の立花孝志は秋葉原での選挙演説の冒頭で黙祷を呼び掛けた。また、会場によっては金属探知機が用意されたり、手荷物検査が実施されたりする場所もあるなど、物々しい雰囲気となった。内閣総理大臣経験者の応援演説では、陣営スタッフは時事通信社の取材に対し、「スタッフの数はいつも通りだが、警察はいつもより多く感じる」と述べた。
総務省は10日に行われる投開票が安全に行えるよう、各地の選挙管理委員会に、警察などとの連絡体制の構築や確認を求めた。
10日、自民党本部の開票センターでは、候補者名が書かれたボードに当選のバラを付ける選挙における恒例行事の前に黙祷が捧げられた。また、バラは「血を連想させる」との理由で赤色からピンク色に変更された。公明党は同バラを党マークに変更した。立憲民主党は従来のバラを使用せず、当選者の名札を貼り付ける形式をとった。一部の当選議員も万歳三唱などを取り止めた。
日本テレビ(NNN)と読売新聞が参議院選挙後の7月11日と12日に行った世論調査では、本事件が選挙の結果に影響したと思うか調査した結果、「大いに影響した」または「多少は影響した」と回答した人が合計で86%に上ったことが12日に明らかとなった。
一方、神戸新聞社が有権者を対象に、7月11日から13日にかけて行ったLINE上での意見調査では、実際に本事件で投票に行ったり、投票先を決めたりすることに影響があったかを質問した結果、「影響していない」または「どちらかといえば影響していない」と回答した人が合わせて8割を超えた。
共同通信社は、比例区の得票数や獲得議席の増減、同社が行った7月11日、12日の全国緊急電話世論調査を鑑み、参院選での自民党の大勝は、日本維新の会に流れていた保守票が事件により自民に回帰した結果だと考察している。選挙戦の終盤では、東京や京都などで自民候補の失速が目立っていたが、保守層が事件によって投票先を変えたことで、勝利につながったとする。維新は参院選の比例得票数では立憲民主党を100万票以上上回り、約784万票と野党第1党であったが、この事件がなければ、結果的に「議席も得票ももっと伸びた」と分析している。
本事件の実行犯の男が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への積年の恨みが犯行の動機になったと報じられたことで、旧統一教会と政治家との関係に注目が集まっている。本事件後、複数の政治家に旧統一教会との接点があったことが明らかになった。弁護団とともに旧統一教会を調査しているジャーナリストの鈴木エイトは、旧統一教会と関係を持つ政治家は自民党を中心に多数いると指摘した。
8月13日、共同通信は全国会議員712人にアンケート調査を行ったところ、期限内に583人が回答し、旧統一教会の関連団体のイベントに出席したり、選挙協力を受けたりした接点のある議員が106人に上ると明らかにした。加えて、その8割近くにあたる82人が自民党所属の議員であると報じた。
本事件発生時の政権である第2次岸田内閣の閣僚は、7月22日に文部科学大臣の末松信介、26日に防衛大臣の岸信夫と国家公安委員長の二之湯智、8月2日に経済産業大臣の萩生田光一と少子化担当大臣の野田聖子、5日に環境大臣の山口壯と経済安全保障担当大臣の小林鷹之が旧統一教会との接点があることを認めた。また、経済再生担当大臣の山際大志郎も関連団体への接点があることが明らかになった。
日 | 役職 | 氏名 | 内容・説明 | 脚注 |
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7月22日 | 文部科学大臣 | 末松信介 | 2020・2021年、旧統一教会の関係者が末松の政治資金パーティー券を計4万円分購入。 旧統一教会側からイベントへの祝電を求められて応じた。 旧統一教会側に便宜を図ったことはなく、常識の範囲内と説明。 | |
7月26日 | 防衛大臣 | 岸信夫 | 旧統一教会の関係者に選挙の際、ボランティアとして手伝ってもらうことがあった。 | |
国家公安委員長 | 二之湯智 | 2018年、旧統一教会の関連団体のイベントで、「実行委員長」を務めた。 名前を貸しただけであり、それ以上の付き合いはないと説明。 | ||
8月2日 | 経済産業大臣 | 萩生田光一 | 旧統一教会の関連イベントで挨拶。 承知の上での付き合いではないと説明。 | |
少子化担当大臣 | 野田聖子 | 旧統一教会の関連団体が主催した会議に祝電を送付。 同会議に、野田の代理として秘書が出席。 「共催」という形であったため見過ごしたと説明。 | ||
8月3日 | 経済再生担当大臣 | 山際大志郎 | 2013年分の政治資金収支報告書に、旧統一教会の関連団体に1万円の会費を支払っていた旨が記載。 神奈川新聞社の取材に対し、「政治資金に関しては、法令に従い適正に処理し、その収支を報告している」とした。 | |
8月5日 | 環境大臣 | 山口壯 | 旧統一教会の関連イベントに、過去数回、祝電を送付。 機械的に出しただけで、意識的ではないと説明。 | |
経済安全保障担当大臣 | 小林鷹之 | 旧統一教会の関連団体に対し、祝電を送付したり、地元の会合で挨拶。 地元の支持者の依頼に対応したと説明。 |
岸田は、7月31日の記者会見で、政治家と旧統一教会との関係について、国民の関心が高いとし、「政治家の立場からそれぞれ丁寧に説明していくことが大事だ」と述べた。また、内閣官房長官の松野は8月8日、岸田の指示として各閣僚に対し、「国民に疑念を持たれることのないよう、政治家としての責任において点検し、厳正に見直しを行う」ことを要請した。
岸田が8月10日に内閣改造を行い、新たに発足した第二次岸田改造内閣の人事について、岸田は「自ら(旧統一教会との関係を)点検し、厳正に見直していただくことが、新閣僚、党役員においても前提となる」と述べ、前述した旧統一教会との接点を認めた閣僚7人を交代させた。しかし、新内閣では発足同日までに、留任した山際に加え、外務大臣の林芳正(前内閣からの留任)、厚生労働大臣の加藤勝信、経済安全保障担当大臣の高市早苗、総務大臣の寺田稔、環境大臣の西村明宏、地方創生担当大臣の岡田直樹の7人が旧統一教会との関係を認めた。さらに、8月15日には、法務大臣の葉梨康弘も旧統一教会との接点があることを認めた。朝日新聞は、15日までに同内閣の副大臣や大臣政務官に任命された54人のうち、4割近くにあたる23人に旧統一教会との接点があることが確認できたと報じた。
政府は8月15日、旧統一教会と閣僚ら政務三役の関係について「個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はない」とする答弁書を閣議決定した。
8月4日、立憲民主党幹事長の西村智奈美は、旧統一協会をめぐる霊感商法や献金などの被害について国会に調査委員会を設置するよう、立憲民主党は自民党に対して要望したが、自民党はこれを拒否したと明かした。
7月26日、自民党幹事長の茂木は、記者会見で「党として(旧統一教会と)組織的な関係がないことはすでにしっかり確認している」と述べた。さらに、8月2日には、党の関係部局に旧統一教会との関係を調査した結果として、「これまで(党としては)一切の関係を持っていないと確認できた」とした。しかし、党所属の国会議員と旧統一協会との接点が次々と明らかになっていることを受け、8日、自民党総裁の岸田が党役員会で旧統一教会との関係を点検し、見直すよう指示し、翌9日、茂木は党所属の国会議員に対し、旧統一教会との関係を点検して見直すとともに、党として把握すべき事案があれば報告するよう文書で指示した。8月13日には前述の通り、共同通信による調査で、82人の自民党所属の国会議員に旧統一教会との何らかの接点があることが明らかになった。
2022年9月8日、自民党の内部調査によって、自民党所属の国会議員379人のうち179人(47%)が統一教会と何らかの接点があったと明らかになった。その中でも、選挙で支援を受けるなどの一定以上の関係を認めた議員は121人に上り、自民党は121人の氏名を公表した。
8月2日、立憲民主党幹事長の西村は所属国会議員と旧統一教会との関係を調査した結果を公表し、金銭の授受や選挙での支援はなかったと発表した。しかし森田俊和や中川正春ら8人に関連団体の会合に祝電を送るなどの接点があったと明かした。さらに後日、次期幹事長の岡田克也・次期国会対策委員長の安住淳・元代表の枝野幸男・次期選挙対策委員長の大串博志など6人も旧統一教会と関連があるとされる「世界日報」の取材を受けるなどの接点があったことが分かり、何らかの形で旧統一教会と関わりがある議員は14人となった。その翌日、参議院選挙で当選し、国政に復帰したばかりの辻元清美元国会対策委員長も旧統一教会の関連団体「世界平和女性連合」が主催した勉強会に出席していたことが明らかになり、関わりのある議員が15人となった。
8月5日、公明党幹事長の石井啓一は、党所属の国会議員1人が、旧統一教会の関連団体のイベントに出席したと明かした。それ以外の党所属の国会議員には、旧統一教会や関連団体との関わりはないとした。
日本維新の会は、旧統一教会との関係について、全62人の所属国会議員を対象に調査したところ、8月5日時点で14人に関連団体へのイベントに出席するなどの接点があったと公表した。
7月19日、国民民主党代表の玉木雄一郎は、旧統一教会と関連があるとされる「世界日報」の元社長から、2016年に計3万円の寄付を受けていたことを明かした。その上で、適正に処理されたとし、返還しない考えを示した。玉木は「私としても国民民主党としても、旧統一教会あるいは後継組織の集会やイベントに参加したことはない」とした。8月2日、幹事長の榛葉賀津也が「世界日報」に取り上げられたことがあり、代表代行の前原誠司が同じく旧統一協会と関連があるとされる「ワシントン・タイムズ」に広告を出していたと明らかにした。5日、玉木は、党内に旧統一教会の問題についての調査会を立ち上げると発表し、フランスなどの法規制を参考に、法整備も含めた対策を検討するとした。
8月5日、れいわ新選組政策審議会長の大石晃子は、旧統一教会との関係について、全8人の所属国会議員を対象に調査したところ、旧統一教会やその関連団体との接点は確認されなかったと発表した。
本事件により、日経平均株価は上げ幅を縮小した。円が対ドル、対ユーロなどで1 円程度急騰した。
本事件発生後、日本放送協会(NHK)や民放のテレビ各局は、ゴールデン・プライムタイムを含む8日の番組編成を急遽変更し、報道特別番組に切り替えた。また、テレビ局によっては、キャスターが喪服で出演した。また、NHKニュース・防災アプリやTVerなどで報道特別番組のリアルタイム配信が行われた。
ラジオ局においても、TBSラジオやTOKYO FMなど、通常編成を中断し報道特別番組を放送した局もあった。なお、NHKは11時41分からラジオ第1放送で速報と11時41分からはFM放送とのサイマル放送で本事件を報じたが13時5分からは『第26回参議院議員通常選挙政見放送(比例代表)』を放送する関係でFM放送のみで伝え政見放送終了後再びサイマル放送で伝えた。
安倍のものまねで知られる、ビスケッティ・佐竹正史が出演するラジオ番組『JPとビスケッティ佐竹の「どよめく化け者」』は「諸事情により」、同日の放送を見送った。
TOKYO MXなどで同日深夜(翌日9日未明)に放送予定であった、テレビアニメ『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』の第2話が諸般の事情によりとの理由で放送中止となり、第1話の再放送に差し替えられた。本編には、大統領暗殺計画を阻止する内容があるため、本事件を配慮したものとみられている。なお、翌週16日は第3話が放送され、第2話のあらすじは公式ウェブサイトから一時削除された。第2話は同年9月10日以降に順次放送・配信されたが、BS日テレのみ過去回の再放送となり欠番とされた。
吉本興業などの芸能事務所、映画会社などが相次いでイベントの開催を中止した。また、一部のYouTuberは8日の動画配信を取り止めたほか、タレントの香取慎吾は、20時から予定していたTikTokでの生配信を取りやめると、16時に発表した。さらに、アイドルグループの乃木坂46は予定していたSHOWROOMでの生配信を取りやめたほか、櫻坂46は22時に公開予定であった、新曲「摩擦係数」のミュージック・ビデオの公開を延期した。ヴィジュアル系エアーバンドのゴールデンボンバーは、19時から予定していた喜矢武豊が出演する生配信を中止した。
事件発生から一夜明けた9日以降は一部の事前収録の情報番組を生放送に差し替えた事例や以下の事例を除き、テレビ各局共にほぼ通常通りの編成に復帰した。
また、本事件発生後から数日間、報道特別番組編成の影響並びに続報における報道内容考慮などを理由として、一部の企業のテレビCMが自粛され、ACジャパンのCMに差し替えられた。CM総合研究所によると、ACジャパンのCM放映数が平時の50倍超に増加しており、企業CMの自粛が相次いだ東日本大震災(2011年)以後では最多としている。
安倍が銃撃されてから間もない7月8日11時55分頃と12時25分頃に、当初安倍が応援演説に向かう予定だった長野県選挙区の松山三四六の事務所に「次はお前だ」などと襲撃を予告する脅迫電話があった。長野中央警察署は翌日に静岡市在住の67歳の男を脅迫容疑で逮捕した。
8日17時20分頃、Twitter上の群馬県公式アカウントの投稿に対して、県知事の山本一太に危害を加えることをほのめかす書き込みがされた。書き込みは「安倍(中略)の次はお前だ」などとした上で、山本を名指しするものであった。県は翌9日に前橋警察署に被害を届出し、26日、群馬県警察は伊勢崎市在住の58歳の男を脅迫容疑で逮捕した。山本は29日の定例会見で、「(本)事件の直後だったため、身の危険を感じてすぐに警察に相談した」と述べている。
7月26日5時20分頃、兵庫県明石市長の泉房穂の殺害を予告するメールが、明石市ではない別の県内自治体に送信された。メールには「泉房穂の辞職を求める」「さっさと辞職しないとこっちも強硬手段にでる」とし、安倍を殺害したとして逮捕された男の名前をあげ、「参考にして自作銃を作った」と記された。メールには辞職しなければ自作銃を用いて泉を殺害する意向が記されていたが、泉は翌27日の記者会見で、「市長の立場からして辞職するわけにはいかない。警察に対応を求めたい」などと述べた。
8月5日、名古屋市に河村たかし(名古屋市長)の殺害を予告するメールが届いていたことが判明した。本事件を引き合いにした内容で、愛知県警察は被害届を受理し、脅迫容疑で捜査している。
かつて安倍と親しかった一部の保守論客より、公式の死亡発表以前に「安倍が死亡した」とする未確認情報がSNSで拡散される事態が起きた。
ジャーナリストの山口敬之は公式発表前の15時36分に自身のFacebookにおいて「信頼できる情報筋から、救命措置の甲斐なく安倍晋三元首相がお亡くなりになったとの情報が入りました。悔しく、残念です」と投稿した。また、作家の百田尚樹も16時59分に自身のTwitterにおいて「安倍晋三さんが亡くなられました。悔しいの一言です。今からYouTubeでライブ配信を行ないます」と投稿した。
これらの投稿は世論から批判を浴びたほか、国際政治学者の三浦瑠麗からも「仮に知っていたのだとしても、つれあいの到着を待つべきだと思った。安倍さんを敬愛していたのならば、まずは昭恵さんのことを思うはずだ。どんな思いだろう、と。とりわけ彼(安倍)は妻を慈しんでいた人なのだから」と自身のTwitter投稿で批判した。
その後、百田は「そうですね。気が動転して、そうした配慮を失念していました。多くの関係者が知っていたことだったので、ご夫人も既にご存知のことだったと思い込んでいました。反省です」と反省の意を表した。一方の山口は「私は独自のルートを使って、ご家族にこの事実が確実に伝わっている事を確認して、さらに安倍さんの他の近親者や関係各位にも確認をした上で、皆さんに報告しました」「各方面に二重三重の確認を取った上で公開したのであって、ご家族への配慮や情報リテラシーの面でも問題があったとは思いません」と自身の情報の正当性を主張したが、その後11日になって「発信時点では、関係者から生還不能状態であり、家族の到着を待って蘇生措置を終了するという情報を得た」と状況を説明した上で、16時過ぎに「昭恵夫人が奈良に到着し、対面後蘇生措置を止めた」という情報を得たことで訃報を発信したものの、実際は昭恵は奈良に向かっている途上で結果的に誤報であったとし、加えて正確な情報確認を怠っており、発信についても冷静さを欠いていたとして謝罪した。
また、これらと類似する報道機関による誤報も発生した。毎日放送は8日14時55分頃、同社が運営するニュースサイト「MBS NEWS」や「Yahoo!ニュース」に掲載された記事で、安倍の「死亡が確認された」と誤って配信し、約25分後の15時20分頃に「心肺停止」に訂正された。原因として同社は、報道情報局所属のニュース配信の担当者が、独自取材によって死亡を確認したと勘違いし、当初「心肺停止」としていた部分を書き換えたとしている。なお、この時点でテレビでは「死亡」と報じていなかった。同社の代表取締役社長である虫明洋一は20日の記者会見で、「重大な事案について、誤った内容を配信したことは誠に遺憾であり、ご覧頂いた方々を混乱させるに至ったと深く反省しております。今後は、チェック体制を重層化し、再発防止に努めてまいります」とした。
SNS上では、実行犯の男と同姓同名の大学教員を容疑者とする虚偽の投稿が流れた。
実行犯が統一教会の分派であるサンクリチュアリ教会の信者だとする噂も出回ったが、同教会は安倍を支持しており、首相時代は官邸前で応援する街宣活動を隔週で行っていた。
フランスの極右政治家ダミアン・リュウは、日本のゲームクリエイター小島秀夫の写真と「極左が殺した」というコメントを添えて、あたかも小島が犯人であるかのようなデマをTwitterで発信。その後デマは削除され、リュウは小島とそのファンに対し謝罪した。ギリシャのテレビ局ANT1、イランのニュースサイトMashregh Newsも、同様のフェイクニュースを発信した。VICEの報道によると、デマの出所は4chanの/pol/であるとされる。小島が代表を務めるコジマプロダクションはフェイクニュース・デマへの抗議を表明すると同時に、法的措置を検討することを示唆した。
7月8日、SNS上で「奈良医大にクレームの電話が殺到してる」という噂が流れ、「クレーム」「クレームの電話」がトレンド入りした。7月9日、小説家で医師の知念実希人は「奈良医大にクレームが入っているようですが、絶対に辞めて下さい。(中略)(病院の対応は)全て完璧です。救命できなかったのは外傷が余りに重かったからです」とツイートした。同日、中日スポーツと日刊スポーツは、これらネット上の言説を取り上げて「クレームの電話が殺到してる」とする記事を作成して配信した。しかし、7月9日13時にSmart FLASHが奈良医大に電話で取材したところ、大学側はクレーム殺到の事実はないと否定した。
7月13日、ジャーナリストの阿比留瑠比が、文化人放送局のYouTubeチャンネル上に「銃撃事件を巡っては単独犯ではないのではないか。これはインターネット上に出回っている動画でも最初から最後までまったくブレずに一発目失敗した時も動かさず、二発目成功した動画で容疑者を綺麗に映すというあらかじめそこを狙っていて、それを報告するために撮った画像がある。この画像を当局が解析して調べたら、転載を繰り返しているが、元を辿ればウルグアイの放送局に行き着く。この事件はまだ背景のある話なのではないか。このことは警察も把握している」との動画を投稿し、一部ユーザーによって拡散された。
7月15日、元陸上幕僚長の岡部俊哉が、言論テレビのYouTubeチャンネル上に「私自身が事件の映像を見た感想では、映画のワンシーンを見ているような感じがして、逆に言えばそれがあまりにも違和感を感じた。これだけ大きな衝撃音があった場合というのは普通の人であればビクッとなるが、この映像からは見て取れない。こういう綺麗なと言うか、動かない映像というのはなかなか撮れない。二つ目は録画している人の注意が安倍前首相の姿から全然外れていない。あれだけ大きな音、それに爆炎がドーンと出てきた、それも2回も。それなのにずっと安倍首相を注視している。これだけ冷静にあれだけ周りの人が逃げまどって、しゃがんだり色々している状況の中で、かのカメラだけが冷静に安倍前首相をずっと撮り続けている。そして安倍前首相の姿が視界から消えた後に、ゆっくり犯人逮捕の方にターンしている。この動画はエクアドルの放送局経由で日本に拡散されたもので、エクアドル自体は情報機関が多く集まっている」との動画を投稿し、一部ユーザーによって拡散された。
8月6日、ジャーナリストの山口敬之が、文化人放送局のYouTubeチャンネル上に「悪意を持ったスナイパーがガリウム弾を打ち込んで、安倍氏の心臓を激しく損傷して即死させた上で、その痕跡を消す為に生きている事にして長く輸血をしたという仮説が成立する。この仮説で最も恐ろしいのは、政府の誰かの指示でやった事になる。少なくとも政府、あるいは奈良県警、奈良の救急救命本部が誰かの指示で無駄な輸血を長くした事だけは間違いない。スナイパーがガリウム弾を撃ったとの筋書きで物を見ると、無駄な輸血とか、なぜ臨空じゃなくて奈良県立医大だったのかとか、ドクターヘリに乗せるまで50分かかっているという様々な疑惑が容疑者ではない別のスナイパーが発した銃弾によって心臓を激しく損傷し即死したと仮定した時に色々な疑問点が解消される」との動画を投稿し、一部ユーザーによって拡散された。山口は、奈良県警の発表では男が発砲した銃弾のうちの2発が安倍の左腕部と右前頸部に命中したとしているが、男のいた位置から首の右側面に命中させることは不可能であるという点を根拠の一つに挙げている。しかし県警は首の中央線よりわずかに右寄りの位置が命中箇所であり、少し振り返れば当たる場所と説明した上で3D映像による再現実験も行ったほか、男の撃った弾丸が安倍の首に命中したことが複数の防犯カメラ映像の解析でも確認されていることから、第三者の関与はあり得ず、男の立ち位置と命中箇所に矛盾点はないとしている。また、男は旧統一教会に傾倒した母親が多額の献金をしたため生活が困窮し、教団と関係の深い安倍を銃撃したとされる。こうした動機には論理の飛躍もみられ、山口は男が別の共犯者から指示を受けたとの見方も示しているが、県警はスマートフォンの連絡先や検索履歴を消去分も含め全て捜査した上で、単独犯であると結論付けている。捜査幹部は「単独犯の確たる証拠はあるが、すべてを発表すれば公判に影響し、不利になる可能性もある。歯がゆい思いだ」と明らかにしている。
夕刊フジは、日米情報当局から入手した情報として「中国は『安倍氏を台湾に行かせるな。強行するなら報復する』と、日本を水面下で脅迫していた。中国やロシア、北朝鮮の工作員まで動いていた。安倍氏も、官邸も、警察当局も把握していた。一方で、奈良県警の〝手抜き警備〟は前代未聞だった」とし、米国や英国など、各国の情報機関は安倍の暗殺を単独犯行で終わらせようとする日本の当局に重大疑念を持っているとした上で、「容疑者に協力者がいた可能性があること、死因について救急救命医と奈良県警の発表に食い違いがあること、致命傷を与えた銃弾1発が体内で消えて捜査当局は説明をしていないこと、危機管理上問題がある場所で街頭演説が行われたこと、情報機関が使う特殊弾丸には体内で溶けるものがある」と報じた。
8月16日、YouTube上に「事件現場近くのあるビルの屋上にスナイパーが狙撃するための小屋が設置されていた」との動画が投稿され、一部ユーザーによって拡散された。ところが、18日、オンラインメディアのBuzzFeedは、ビルの関連会社に問い合わせた結果として、この投稿はデマであると報じた。お笑いタレントのほんこんが、このいわゆる「スナイパー小屋」の情報を自身のTwitterなどで拡散したとして批判が集まり、ビル関係者による法的措置が検討され、20日、自身のYouTubeチャンネルで謝罪・撤回する事態となった。
8月16日、アサ芸プラスは「米国のナンシー・ペロシ下院議長が8月2日に台湾を訪問。中国がこれに反発し、大規模な軍事演習を行った。実は同時期に、安倍氏も訪台する計画だった。訪台を阻止したかったのは中国だけではなく、米国も同じでペロシ氏の訪台は4月から持ち上がっており、中国と手打ちするシナリオを作っていた。安倍訪台でそれをかく乱されてはたまらないと、不快感を示していた」とし、米中双方にとって安倍の存在が邪魔であったことと、致命傷を与えた弾丸1発が発見されずに体内で溶けた可能性が考えられることから、情報機関員が使用するガリウム銃弾と呼ばれる特殊な弾丸が使用されたとの見方を報じた。
また、他にもTwitter等のSNS上で「安倍氏事件はヤラセ」「自作自演だ」「銃撃された人物は影武者だ」「暗殺されたのは、世界経済フォーラム(WEF)の命令に従わずにワクチンを義務化せず、国民にイベルメクチンを配布したからだ」等の陰謀論が多数発信された。
インターネットセキュリティー企業のSola.comの分析によると、安倍晋三銃撃事件に関するデマを広めていた主要なアカウント5つは、ロシアによるウクライナ侵攻に関してロシア側の主張に基づいたデマや、それ以前には新型コロナワクチンに関して、「人口削減計画の一環」と訴えたりするデマを積極的に発信していた。また「親ロシア」「反ワクチン」といった特徴を持つグループと繋がり相互にリツイートする連携も見て取れた。同社の担当者は「投稿内容が日本になじみがないものだったり、投稿時間がロシアのサンクトペテルブルクのビジネスアワーと一致したりするなど不審な点が複数みられた」と指摘しており、安倍氏銃撃を巡る陰謀論の拡散に、海外の勢力が関与している可能性があるとした。
2023年1月、公安調査庁経済安全保障特別調査室に所属する公安調査官が陰謀論をメールで送付していたことが報じられた。調査官は「(安倍晋三銃撃事件の)真犯人は別のスナイパー」「ディープステート(闇の政府)が米国を裏で支配している」「トランプの選挙不正は事実」等の陰謀論を同僚に送ったとされ、取材に対し「メールを自分が出したかどうかはノーコメント」と答えている。
2月16日号の週刊文春の記事は、警察が詳細な検証を行ったのか国民に情報を公開していないことが「スナイパー説」「警察が真実を隠している」などの陰謀論を生んでいるとして、徹底した検証と情報の公開を求める声を掲載している。
2月17日、アサ芸プラスは、西側諸国の国際諜報活動に詳しい専門家の証言として「被告は3年間、任期自衛官として海上自衛隊に勤務しており、艦載武器を扱う砲雷科員として護衛艦『まつゆき』にも乗艦し任期満了で退職したが、防衛機密の一端を知る人物をターゲットに中国がハニートラップを仕掛けてくることは、かねてから指摘されていたこと。そんな中、中国共産党が時間をかけて被告を籠絡した上で、習近平の指示のもと、中共の敵である右派の安倍元総理を暗殺した」と報じた。
本事件発生の瞬間を直接目撃したり、テレビ報道やSNSなどで視聴・閲覧した人々の心の不調も発生しており、奈良市が7月10日に開設した電話相談窓口には同月13日までの時点で82件の相談が寄せられ、その内の4割が奈良市民であったこと翌14日に奈良市長の仲川げんが明らかにしている。また、同月15日までの時点では同窓口に104件の相談が寄せられた。さらに、奈良県は7月11日に本事件を目撃し不安やストレスを感じている人などの相談に乗るための電話相談窓口を設置し、同月29日までの時点であわせて23件の電話が寄せられた。
日本放送協会 (NHK) や朝日新聞・産経新聞・毎日新聞・時事通信などの報道各社は本事件に関する映像を見過ぎることはストレスを高める要因になり得るとの旨を報じ、注意を呼びかけた。NHKは、本事件の速報を伝えるニュースの中で、事件発生時の映像が放送される直前に、「銃声が流れます」などとテロップ等で伝えた。また、7月9日に放送された、TBS系列の『情報7days ニュースキャスター』では、本事件に関する映像が放送される直前に、司会の安住紳一郎(同局アナウンサー)より「大変ショッキングな事件です。映像を見るのがつらいと感じている人は無理はしないでください」と呼びかけられた。7月10日に放送された、テレビ朝日系列の『サンデーLIVE!!』でも同様に、同局アナウンサーの野上慎平より、「これからご覧頂く映像には銃声の音も含まれます。映像をご覧になって不安やストレスを感じる方は視聴をお控えください」と呼びかけられた。
8月5日、奈良市消防局は本事件における救急活動の報告書を開示し、本事件の現場に出動した救急隊員や消防隊員ら24人のうち、6人 (25%)が心的外傷後ストレス障害 (PTSD) と見られる症状を訴え、産業医の面談を受けたと明らかにした。6人の症状については「比較的安定しており、現時点(8月5日時点)では通常通り業務に従事している」としている。市消防局の担当者は多くの観衆の面前で元首相の救命活動を行うという特殊性ゆえに、「精神的なショックが大きかったのだろう」と指摘した。
本事件を受け、各界の多くの著名人が反応を寄せた。本項ではその一部を掲載する。なお、本項で述べている「選挙」や「遊説」、「応援演説」は特記がない場合、本事件の2日後に投開票が行われた、第26回参議院議員通常選挙によるものを指す。
安倍が生前、最重要課題としてあげ、父・晋太郎の秘書時代から取り組んできた、北朝鮮による日本人拉致問題の被害者ならびにその家族の反応は以下の通り。
アメリカ合衆国
カナダ
イギリス
ドイツ連邦共和国
フランス
イタリア
バチカン
ロシア連邦
ウクライナ
ベラルーシ
セルビア
アイルランド
ベルギー
スイス
スペイン
ポルトガル
中華人民共和国
大韓民国
中華民国(台湾)
モンゴル
タイ王国
ベトナム
シンガポール共和国
マレーシア
インドネシア
フィリピン
カンボジア
ミャンマー連邦共和国
インド
パキスタン
ブータン
モルディブ
アフガニスタン
トルコ
イスラエル
パレスチナ
イラン
アラブ首長国連邦
サウジアラビア
クウェート
カタール
バーレーン
オマーン
ヨルダン
エジプト
南アフリカ共和国
ボツワナ
オーストラリア
ニュージーランド
パラオ
ブラジル
アルゼンチン
キューバ
ペルー
エルサルバドル
国際連合
国際オリンピック委員会
国際パラリンピック委員会
NATO
奈良県警本部では、この事件の発生を受け、大和西大寺駅界隈及びその周辺区域における警察署の管轄区域を変更して同区域での警備を強化することを、2023年11月30日に公表した。それによると、選挙の際の演説で大和西大寺駅前を使用する機会が多く、その要人の警備上の負担を軽減することと、奈良西警察署管内の人口が増え、それに比例して業務量も増加している背景があった(2023年時点での奈良西警察署管内の警察官1人当たりの受持人口は、奈良警察署を比較対象とし、同警察署を1倍とすると奈良西警察署は1.65倍となっていた)一方で、奈良警察署管内では、2023年時点においての人口が、微々たるものながらも減少していたことから、大和西大寺駅界隈及びその周辺区域の警察署の管轄を2024年3月28日より奈良西警察署から奈良警察署へ移管した。これにより、新たに同区域を管轄する奈良警察署では、警備体制の強化および演説時に発生した場合を含む事件と事故の対処を、奈良西警察署管轄時代と比較して、可能な限り迅速化させるようにするとともに、警察官の増員を実施した。
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