佐世保女子高生殺害事件(させぼじょしこうせいさつがいじけん)は、2014年(平成26年)7月26日、長崎県佐世保市で発生した殺人事件である。佐世保高1同級生殺害事件とも呼ばれる。
佐世保女子高生殺害事件 | |
---|---|
場所 | 日本・長崎県佐世保市 |
日付 | 2014年(平成26年)7月26日 20時から22時ころまでの間 (UTC+9) |
概要 | 殺人事件 |
武器 | ハンマー、犬用リード、ノコギリ |
死亡者 | 1名(当時15歳女子高校生) |
犯人 | 同級生の女子生徒 |
動機 | 快楽殺人と見られる |
対処 | 医療少年院(第3種少年院)送致 |
少年審判 | 長崎家庭裁判所 |
管轄 | 長崎県警察佐世保警察署 |
友達の家に遊びに出掛けた高校1年生の女子生徒(当時15歳)が、同級生の女子生徒に首を絞められるなどして殺害された。その後、首や左手首が切断された状態で発見され、現場付近にいた女子生徒が殺人を認めたため緊急逮捕された。
残忍な殺害方法や事件の背景などから世間に衝撃と波紋を広げた。
2014年(平成26年)7月26日の夜、長崎県佐世保市島瀬町のマンションで友人の家に遊びに出かけた女子高校生(当時15歳)が殺害された。
帰りを心配した両親が捜索願を出し、翌日27日午前に、警察官が友人宅を訪れたところ、女子高生がベッドで頭と左手首が切断された状態で仰向けになり倒れて死亡しているのを発見した。当初マンション入口付近にいた友人の女子生徒は、被害者の行方について「知らない」と答えていたが、その後、殺人を認めたため緊急逮捕された。長崎地方検察庁は精神鑑定を検討し、8月には佐世保簡易裁判所が精神鑑定留置を認め8月から3カ月間、精神鑑定のため医療機関に鑑定留置された。
2015年(平成27年)1月20日、前年の3月2日に佐世保市花園町の自宅で就寝中の父親の頭などを金属バットで複数回殴るなどして殺害しようとした殺人未遂の容疑で、女子生徒を再逮捕した。女子生徒に対し長崎家庭裁判所は、医療少年院(第3種少年院)送致とする保護処分の決定が出された。
事件現場となったのは、佐世保市にあるマンションである。JR佐世保駅から北に1kmで、繁華街に近い国道沿いでありマンション周辺は野良猫の多い地域であった。加害者の女子生徒は4月から市内の親元を離れ一人暮らしをしていた。
被害者生徒は以前から同級生に「会いたい」と誘われており、26日午後3時頃、家族に友人と遊ぶと伝え同級生の家(マンション)へ遊びに出かけた。2人は佐世保市内の繁華街で買い物を楽しんだ後、加害者のマンションに戻った。午後6時40分頃、母親宛に「7時ごろに帰る」とメールが届いたがその後帰ってこなかった。そのため両親は数日前に遊びに行くと聞いていた同級生の女子生徒に電話をした。これに対し女子生徒は「午後6時半くらいに別れた」と答えている。
午後8時ごろ、女子生徒の後頭部を工具で複数回殴り、リードで首を絞めるなどして殺害した(加害者が供述)。被害者の死因は頸部圧迫による窒息死であった。
両親は午後11時頃に捜索願を提出し、27日午前3時20分ごろ、警察官が生徒宅のベッドで仰向けに寝かされて死亡している女子高生を発見した。マンションの入口付近にいた女子生徒は当初は被害者について「知らない」と答えていたが、その後、殺害を自供したため緊急逮捕された。
遺体は、仰向けの状態で頭と左手首が切断されており、胴体部分に刃物で切ったとみられる複数の傷と腹部が大きく切り開かれていた。室内からはスレート切断用のこぎり(刃渡り約15cm)、石頭ハンマー、テストハンマーが見つかっており「自分で買った」と供述している。発見された凶器のうち、のこぎりはベッドの上、ハンマーはベッドの脇と下から見つかった。そして冷蔵庫からは猫の頭蓋骨が見つかった。事件直後に衣服を着替えて身体を洗い、また、スマートフォンが敷地内で発見されマンションの5階から投げ捨てたと見られており、証拠隠滅と疑われる行為が見られた。
取り調べに対し「殴ってから首を絞めた。すべて私が1人でやりました。誰でも良かった。」と犯行を認めるものの、受け答えは淡々とした様子で応じていた。長崎県警察は7月29日午前に「2人の間にトラブルがあったとみられる」と公表していたが、同日午後には「間違いだった」と訂正した。女子生徒は「体の中を見たかった」「人を殺して解体してみたかった」などと供述しているが、2人の間の具体的なトラブルなどは確認できなかったとしている。
長崎地方検察庁は精神鑑定を検討し、8月8日には佐世保簡易裁判所が精神鑑定留置を認めたと報道された。8月から3カ月間、精神鑑定のため医療機関に鑑定留置された。
8月2日、被害者の両親が代理人弁護士を通じてコメントを公表した。
大切に育ててきた、またこれからも育てていくつもりの娘との突然の別れがどうにもまだ信じられずにおります。少しずつですが娘を失った事を実感するのがやっとで他のことは何も考えられずにいます。 そしておそらく自分の身に何がおこったのかわかっていないであろう娘がただただかわいそうです。 私達の最愛の娘の命と将来を奪った犯人を決して許すことができません。 今は、今後の捜査の行方を静かに見守りたいと思います。 警察関係の皆様や操作に御協力いただいている皆様や
私達家族の事心配してくださっている皆様には感謝の気持ちで一杯です。
8月4日、加害者側の父親は代理人の弁護士を通じ、「複数の病院の御助言に従いながら、私たちのできる最大限のことをしてまいりましたが、私の力が及ばず、事件が発生したことについては、誠に残念でなりません」とする謝罪文を公表した。
9月18日、被害者の両親が代理人弁護士を通じて再度コメントを公表した。
両親は「悲しみ、寂しさ、悔しさもかわらず、毎日、涙があふれます」とし、娘の命を奪った行為を「決して許す事はできません」と記した。母親は夜も寝付けず、外出がつらい状態が続く。父親は少しずつ出勤しているが、仕事中に娘を思い出して集中できないでいるという。
一方で「家族みんなで前に進む気持ちも芽生えて」いるともつづった。生徒の2人の弟は通学しており、「先生や友人の優しさにふれながら日常を取り戻す第一歩を踏み出した」という。
事件の原因や経緯については「詳しく知らされていませんが、防げたのではないか」と指摘。学校には、事件前の少女の問題行動について警察や児童相談所に通報してほしかった、としたうえで「同じ事件を繰り返さない教育や対応を望みます」と求めた。
朝日新聞デジタル Withnews 原文ママ
10月5日、加害者側の父親が自宅で首を吊った状態で死亡しているのが発見された。発見したのは父親の知人で、遺書はなく、自殺とみられる。代理人弁護士によると、父親は事件後「私は生きていていいんでしょうか」と話すなど落ち込んでおり、弁護士は「生きていてもらわないと困る」と答えている。10月3日に電話で話したのが最後となった。
2015年(平成27年)1月20日、前年の3月2日に佐世保市の自宅で就寝中の父親の頭などを金属バットで複数回殴るなどして殺害しようとした殺人未遂の容疑で、女子生徒を再逮捕した。
2015年(平成27年)7月13日、長崎家庭裁判所は加害者に対し、医療少年院(第3種少年院)送致とする保護処分の決定を出した。平井健一郎裁判長は「ASD(自閉症スペクトラム障害)が見られるものの、それが非行に直結したわけではなく、環境的要因の影響もあった」との趣旨のことを述べた。
加害者は幼い頃から学業は優秀で、スポーツも積極的だった。中学校では放送部に所属しており、NHKのアナウンサーになるのが夢だった。また「検事になって法廷で弁護士である父や、弁護士志願者である兄と戦いたい」という夢を語ったこともある。冬季スポーツ種目で国民体育大会に出場しており、地元でも知られていた。その一方、「あまり笑う子ではなかった」「頭が良すぎて特殊な子」といった評価も見られる。
加害者は佐世保市内で育つ。実家は坂道をのぼった高台にある。不動産登記簿によれば、宅地面積は約80坪。地上2階、地下1階の鉄筋コンクリート造りの建物は、延べ床面積が300平方メートルを越える豪邸である。2014年当時の『週刊文春』の取材に対し近所の住民は「15年ほど前、家を新築した時、ご主人が挨拶に回られて、近隣住民はお披露目に招待された」と述べている。
両親は長崎市出身で、父親は県内最大手の法律事務所を経営しており、佐世保では有名な弁護士だった。ジャパネットたかたの顧問弁護士をつとめ、倒産案件などを数多く手がける弁護士として知られていた。また弁護士としてだけではなくスピードスケートの選手としても名を知られていた。母親は大学を卒業後、地元放送局に勤めた。市の教育委員を務め、教育活動に熱心だった。兄は東京の私立大学で学んでいた。
小学6年生時の2010年頃に、同級生の給食に薄めた洗剤や漂白剤、ベンジンを混入するいたずらをくり返すなど、問題を起こしていた。中学生の頃から医学書を読んだり動物の解剖に熱中しており、その頃から猫を解体したりしていた。
2013年(平成25年)10月に実母がガンで亡くなっている。以降は、不登校が続いていた。
2014年(平成26年)3月に寝ていた父親を金属バットで殴打した事から、精神科に通院している。医師から「同じ家で寝ていると命の危険がある」と助言された父親は、事件現場となるマンションにて4月から加害者に一人暮らしをさせていた。高校でも不登校が続き、1学期のわずか3日のみ出席していた。
5月、父親が再婚する。幼馴染によると、加害者は「(父と継母とは)一緒に住みたくない」と言っていたという。7月23日、加害者は継母との会話の中で、猫を殺して楽しいことや「人を殺したい」などとする願望を打ち明けていた。そのため診療で殺人願望を医師に伝えていたが「今日は時間がない」としてその日の診療を終わっている。後に書面上で父親が医師に切迫感がないと指摘している。(ただし、弁護士は「あくまで父親本人が書いていることだ」として病院側は確認していないとしている。)
事件前日の25日に両親が病院と入院の協議をしたが、病院からは「入院は施設の事情で即日の入院ができない」「個室はあるがその一つを独占することになる」と言われ実現しなかった。事件の20日前には警察への相談を打診したが事件前日の話し合いで見送り、児童相談所に連絡を取ることで意見がまとまった。その日に児童相談窓口のある『佐世保こども・女性・障害者支援センター』に電話相談したものの、勤務時間外であり担当者が不在だったため相談ができず、職員から「今日はサマータイムで終わった。月曜日(28日)にしてくれ」と断られていた[要出典]。
加害者の診察を以前から担当していた精神科医は、2014年6月10日に佐世保こども・女性・障害者支援センターへ電話で連絡を行った。電話の内容は、精神状態の不安定さを懸念して「女子生徒は人を殺しかねない」といった内容だったが、文書決裁にとどめていた。背景には、同センターの幹部職員によるパワーハラスメント発言(職権による人権侵害)があり、電話で報告を受けた職員が適切な処置について上司に相談することができなかったことなどが挙げられる。なお、2015年(平成27年)2月に同センターの所長と幹部職員は戒告の懲戒処分、別の職員が文書訓告処分となった。
二人はお互いに生まれた家が近いということもあり、知り合いだった。被害者の父親は海上自衛隊の自衛官で、佐世保の第13護衛隊に属する護衛艦さわぎりの乗組員だった。被害者は加害者とは中学校の同級生で、写真部に属し、明るくて面倒見がよい生徒だった。
以下の時系列は全て2014年(平成26年)のものである。
月 | 日 | 内容 | 脚注 |
---|---|---|---|
3月 | 2日 | 加害者が父親を金属バットで殴り負傷させ、精神科医へ通院。 | |
6月 | 10日 | 精神科医が児童相談窓口に連絡。 | |
7月 | 7日 | 加害者が精神科を受診。 | |
16日頃 | 加害者が再び精神科受診。 | ||
中旬 | 加害者と被害者が会う約束を交わす。 | ||
23日 | 加害者が継母に「人を殺したい」と打ち明ける。 | ||
25日 | 父親と病院が協議。児童相談所に電話相談するが断られる。 | ||
26日 | 事件当日15時頃 - 被害者が、加害者の家に遊びに行く趣旨を両親に告げ、外出。 18時40分頃 - 被害者が母親に「19時頃に帰る」とメール。 20時頃 - 女子生徒が殺害される。 23時頃 - 女子生徒の父親が警察に捜索願を提出。 | ||
27日 | 3時20分頃 - 警察官が女子生徒の遺体を発見。 6時10分頃 - 同級生を殺人の容疑で逮捕。 | ||
8月 | 2日 | 代理人弁護士を通じ被害者の両親がコメントを公表。 | |
4日 | 代理人弁護士が父親の釈明文書を公表。 | ||
9月 | 18日 | 代理人弁護士を通じ被害者の両親がコメントを公表。 | |
10月 | 5日 | 加害者側の父親が自宅で死亡しているのが見つかる。 |
日本には喪中という慣習があり社会通念上、加害者の父親が再婚した時期は早いと見なされ、婚活や再婚の時期の早さが問題視されている。この問題に関しジャーナリストの吉田明洋は、加害者の父が先妻死後すぐのパーティーで5人の女性に名刺を配って口説き始めたこと、それを知人が窘めたところ「俺は独身なんだ」と平然と答えたこと、について、目撃談を紹介している。また、日刊ゲンダイは、顔なじみのタクシー運転手による、継母のお腹が膨らんでいたという目撃談を根拠に、継母が妊娠していたと報じている。Asagei plusは、再婚前の妊娠の可能性もあるとしている。
2021年(令和3年)7月で23歳になるのを前に、収容先の少年院長は収容継続を申請し、長崎家庭裁判所は26歳になる2024年までの継続を8月下旬に認めた。元少女側は9月7日付で不服を申し立て抗告し、福岡高等裁判所は11月4日付で棄却する決定をした。高裁決定は元少女の精神に著しい障害があり、矯正教育を継続して行うことが特に必要であると長崎家裁が認めたことについて「誤りはない」と指摘。収容継続期間を3年としたことも不当でないと支持した。法務省によると実際に23歳を超え矯正教育を継続した例はないとみられるという。
2022年(令和4年)7月12日、元付添人の弁護団は元少女の近況について「矯正教育により対人交流などに成長が見られ、内省が深まるなどの変化が生じている。贖罪の気持ちを深めていくため、さらなる内省の獲得に努めている。」と記者クラブの書面取材に対し回答している。
児童相談所の対応
2022年7月26日、佐世保こども・女性・障害者支援センターでは朝礼が行われ再発防止に向け訓示を行った。長崎放送の取材に対し、現所長の山瀧猛は「事件のことを児童相談所内で風化させない」としたうえで「人身に関わるような相談については危機意識をきちんと持って対応する」とコメントし、些細な情報でも会議に諮り「組織」として対応を徹底していくとした。
This article uses material from the Wikipedia 日本語 article 佐世保女子高生殺害事件, which is released under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 license ("CC BY-SA 3.0"); additional terms may apply (view authors). コンテンツは、特に記載されていない限り、CC BY-SA 4.0のもとで利用可能です。 Images, videos and audio are available under their respective licenses.
®Wikipedia is a registered trademark of the Wiki Foundation, Inc. Wiki 日本語 (DUHOCTRUNGQUOC.VN) is an independent company and has no affiliation with Wiki Foundation.