中央観閲式

中央観閲式(ちゅうおうかんえつしき)は、陸上自衛隊が原則的に3年に一度、埼玉県南部の陸上自衛隊朝霞訓練場で実施する観閲式の通称である。自衛隊の創設を記念して、自衛隊記念日行事の一環として行われる。陸上自衛隊では自衛隊記念日観閲式と呼称している。

中央観閲式
2007年10月28日、第54回中央観閲式にて戦車部隊を観閲する内閣総理大臣福田康夫

陸上自衛隊は開催目的を「自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣(観閲官)の観閲を受けることにより、隊員の使命の自覚及び士気の高揚を図るとともに、防衛力の主力を展示し、自衛隊に対する国民の理解と信頼を深める」こととしている。

歴史

中央観閲式 
2007年10月28日、第54回中央観閲式にて各部隊を観閲する内閣総理大臣福田康夫
中央観閲式 
2010年10月15日、朝霞駐屯地にて中央観閲式方面隊予行に臨む観閲部隊指揮官第1師団長中川義章
中央観閲式 
2010年10月24日、第57回中央観閲式における普通科部隊
中央観閲式 
第57回中央観閲式における中央即応連隊
中央観閲式 
1994年10月30日、自衛隊観閲式にて観閲する内閣総理大臣村山富市(手前左)と防衛庁長官玉澤徳一郎(手前右)

警察予備隊が発足した翌年の1951年昭和26年)に東京都江東区越中島駐屯地で初めて観閲式が行われた。1952年(昭和27年)に保安隊が発足し、1953年(昭和28年)第一回保安隊創立記念観閲式が行われた。翌1954年(昭和29年)に自衛隊が発足して1955年(昭和30年)に防衛庁創立一周年記念式典が行われ、神宮外苑絵画館前で1972年(昭和47年)まで続けられた。

観閲式は1973年(昭和48年)から交通事情等の関係で現在の朝霞訓練場(朝霞駐屯地に隣接)へ会場を移し、大規模災害があった年度と昭和天皇の体調不良により中止された1988年(昭和63年)を除いて、ほぼ毎年行われた。1996年平成8年)以降はアメリカ同時多発テロ事件の影響により中止された2001年(平成13年)を除いて、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊の持ち回りで実施され、陸上自衛隊担当が中央観閲式となる。海上自衛隊担当は自衛隊観艦式、航空自衛隊担当では航空観閲式となり、回次はそれらの通算である。

2001年はアメリカ同時多発テロ事件の影響により当年度の実施が中止となった影響で2004年に開催されるまで、6年間の実施間隙が生じた。以降、陸上自衛隊担当年度の前年に東部方面隊が主力となって同じ会場で「東部方面隊創立記念行事観閲式」を行っている。東部方面隊以外の各方面隊も、北部方面隊を除き「方面隊創隊記念」として独自に観閲式や観閲行進を行っている。

2018年度は、本来は自衛隊観艦式の実施予定であったが、朝霞訓練場が2020年東京オリンピック射撃競技の会場となり、2019年度の実施が不可能となったため、2019年度実施予定だった中央観閲式を前倒しして実施した。「空(航空観閲式)→海(自衛隊観艦式)→陸(中央観閲式)」の持ち回り実施を開始して以来初めての事態であった。

新型コロナウィルス感染症が流行していた2021年度は、朝霞駐屯地構内において、同駐屯地に所属する部隊のみが参加して一般公開を伴わずに実施された。その内容は栄誉礼・儀仗、巡閲及び観閲官訓示であり、観閲行進は行われなかった。

実施年表(1996年(平成8年)以降)
名称 年次 実施日 主管 場所
平成8年度第43回航空観閲式 1996年 10月27日 航空自衛隊 百里基地
平成9年度第44回自衛隊観艦式 1997年 10月26日 海上自衛隊 相模湾
平成10年度第45回中央観閲式 1998年 11月1日 陸上自衛隊 朝霞訓練場
平成11年度第46回航空観閲式 1999年 10月31日 航空自衛隊 百里基地
平成12年度第47回自衛隊観艦式 2000年 10月29日 海上自衛隊 相模湾
平成13年度第48回中央観閲式 2001年 陸上自衛隊 中止
平成14年度第49回航空観閲式 2002年 10月20日 航空自衛隊 百里基地
平成15年度第50回自衛隊観艦式 2003年 10月26日 海上自衛隊 相模湾
平成16年度第51回中央観閲式 2004年 11月7日 陸上自衛隊 朝霞訓練場
平成17年度第52回航空観閲式 2005年 10月30日 航空自衛隊 百里基地
平成18年度第53回自衛隊観艦式 2006年 10月29日 海上自衛隊 相模湾
平成19年度第54回中央観閲式 2007年 10月28日 陸上自衛隊 朝霞訓練場
平成20年度第55回航空観閲式 2008年 10月19日 航空自衛隊 百里基地
平成21年度56回自衛隊観艦式 2009年 10月25日 海上自衛隊 相模湾
平成22年第57回中央観閲式 2010年 10月24日 陸上自衛隊 朝霞訓練場
平成23年度第58回航空観閲式 2011年 10月16日 航空自衛隊 百里基地
平成24年度第59回自衛隊観艦式 2012年 10月14日 海上自衛隊 相模湾
平成25年度第60回中央観閲式 2013年 10月27日 陸上自衛隊 朝霞訓練場
平成26年度第61回航空観閲式 2014年 10月26日 航空自衛隊 百里基地
平成27年度第62回自衛隊観艦式 2015年 10月18日 海上自衛隊 相模湾
平成28年度第63回中央観閲式 2016年 10月23日 陸上自衛隊 朝霞訓練場
平成29年度第64回航空観閲式 2017年 航空自衛隊 中止
平成30年度第65回中央観閲式 2018年 10月14日 陸上自衛隊 朝霞訓練場
令和元年度第66回自衛隊観艦式 2019年   海上自衛隊 中止
令和2年度第67回航空観閲式 2020年 11月28日 航空自衛隊 入間基地
令和3年度第68回中央観閲式 2021年 11月27日 陸上自衛隊 朝霞駐屯地
令和4年度第69回自衛隊観艦式 2022年 11月6日 海上自衛隊 相模湾
令和5年度第70回航空観閲式 2023年 11月11日 航空自衛隊 入間基地

主要出席者

中央観閲式 
2010年10月24日、第58回中央観閲式にて訓示する内閣総理大臣菅直人

参加部隊(平成30年)

参加部隊は年度により異なる。例として2018年(平成30年)に行われた中央観閲式の部隊一覧を以下に記述する。

特別儀仗(らっぱ「速足行進曲 その二」、「栄誉礼冠譜 4回」)

中央観閲式 
特別儀仗・第302保安警務中隊(2010年)

空挺降下展示

  • ヘリコプター:北部方面航空隊 北部方面ヘリコプター隊第2飛行隊 UH-1J
  • 隊員:第1空挺団 本部中隊員 3名
  • 自由降下落下傘 MC-4使用

徒歩部隊(行進曲「凱旋」→「陸軍分列行進曲」→「軍艦」→「空の精鋭」→「大空」)

中央観閲式 
部隊用国旗(2007年)
中央観閲式 
普通科部隊(2010年)

航空部隊

中央観閲式 
AH-64D編隊(2010年)
中央観閲式 
F-15編隊(2010年)

括弧で囲んだ部隊名は編隊部隊を示す。(以下、編隊長が部隊長である場合、部隊長名義で表記している)

陸上自衛隊編隊群

陸上自衛隊・編隊群指揮官:第1ヘリコプター団副団長

海上自衛隊編隊

航空自衛隊編隊

車両部隊(行進曲「陽光を背に」)

中央観閲式 
普通科車両部隊(2010年)
中央観閲式 
普通科車両部隊(2013年)。なお、平時に第31普通科連隊89式装甲戦闘車を装備しない
中央観閲式 
野戦特科部隊(2010年)

括弧で囲んだ部隊名は指揮部隊(特筆なければ第1師団隷下)を示す。指揮部隊が平時において装備しない装備を含め、指揮部隊は主に高射学校富士教導団第7師団などの全国の各諸部隊・諸学校により増強を受けている。特筆なければ指揮官は指揮部隊の部隊長が担当。

米軍祝賀部隊

  • 祝賀飛行部隊
    • MV-22オスプレイ×2(アメリカ海兵隊 第265海兵飛行隊 中型ティルトローター飛行隊「ドラゴン」)
  • 米軍と陸上自衛隊の合同祝賀車両行進

2018年(平成30年度)の変更点

前々回開催の平成28年度中央観閲式とは以下の部分で変更が発生している。ここでは観閲式参加部隊等の変更については明記しない。

  • 執行者が東部方面総監から陸上総隊司令官に変更。
  • 観閲部隊指揮官(第1師団長)搭乗車両が82式指揮通信車から1/2tトラックに変更
  • 陸上自衛隊制服を16式常装(新制服)・新儀仗服で実施。
  • 観閲飛行で航空機の役割を解説するとともに、女性搭乗員について紹介。
  • 車両行進曲を「祝典ギャロップ」から「陽光を背に」に変更。
  • 車両行進が従来の職種毎から機能別に変更。それに伴い通信科(電子戦部隊と通信科部隊)・野戦特科(地対艦ミサイル部隊と野戦特科部隊)が分割。
  • 西部方面普通科連隊の廃止・水陸機動団新編に伴い、「水陸機動部隊」が新編。同様に即応機動連隊も新編。
  • 予備自衛官の1佐職導入に伴い、連隊長経験者の予備1佐を指揮官とする予備自衛官部隊が「軽普通科連隊」として編成、連隊旗を使用した。
  • F-35AP-1C-216式機動戦闘車AAV7が初参加。海自US-2が参加。飛行停止処置に伴いAH-64OH-1が不参加。
  • 訓練展示(F-35A、AAV-7)を実施。
  • ブルーインパルスの展示飛行を未実施(同日開催の平成30年度芦屋基地航空祭にて展示飛行を行ったため)
  • 予行等における住民招待を未実施。
  • 自衛隊公式による配信映像において、部隊指揮官・パイロットの名前・顔写真を掲載。また、航空自衛隊機を除き編隊長機の航空機内映像の配信を実施。

備考

  • 自衛隊関係者や外国武官、会場周辺自治体の住民 などが招待される。東部方面隊創立記念行事観閲式と同様 に招待者以外は観覧できないが、当日の一週間前に実施される総合予行は観覧が一般公募される。総合予行に先立ち、第1師団副師団長を観閲部隊指揮官に、師団予行、方面隊統一予行など、規模を縮小した予行を一部部隊長を替えて実施している。
  • 車両部隊の車両に記載されている所属表記(例として、第31普通科連隊の"31普")や、機甲車両に描かれる部隊マークなどの部隊認識表記はすべて消されている。
  • 2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降世界各地で多発するテロ事件の影響もあり、会場内への飲食物の持ち込みは著しく制限されている。
  • 2010年の第57回観閲式以降は、生中継映像の公式ライブ配信がUstreamを通じて行われた。
  • 2010年は車両行進後、日米安全保障条約改定50周年記念在日米陸軍・空軍日米祝賀飛行部隊による観閲飛行が行われた。編隊は以下の通り。
  • 2016年は行事後に展示飛行が行われた。

車両行進曲「陽光を背に」

従来は須磨洋朔の「祝典ギャロップ」が長らく使われてきたが2018年度実施では、東北方面音楽隊コントラバス奏者である岩渕陽介三等陸曹(所属・階級は作曲当時)が作曲した「陽光を背に」を使用している。この曲は、国旗の日の丸が象徴する太陽の威光を背負って完遂する「自衛隊の覚悟」、および、即応機動する陸上防衛力を表現したものという。2018年3月、陸上幕僚監部内では発足以来の大規模改編後、初の中央観閲式となることから、「祝典ギャロップ」に代わる新車両行進曲を作ることを決定し、作品を募集したところ、6作品が応募された。その中から、岩渕三曹の作品が採用された。この功績から岩渕三曹は山崎幸二陸上幕僚長(当時)より第2級賞詞を受けた。

脚注

関連項目

外部リンク

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