パウンド・フォー・パウンド(英: Pound for pound、頭字語:PFP、P4P)は、ボクシングや総合格闘技、キックボクシングなど格闘技の世界において、異なる階級の選手を比較・対比する方法を指し示す用語。1950年代初期にリング誌の初代編集長であるナット・フライシャー(英語版)によって造られたとされているが、1900年代初期の頃から存在していたことが確認されている。
なお、近年では様々なスポーツ及び格闘技メディアが独自に選定したパウンド・フォー・パウンドのランキングを発表しているが、パウンド・フォー・パウンドには厳密な選定基準がなく、曖昧な部分が多く選定者の主観により選定される部分が大きいため、ランキングの順位が各メディアで大きく異なることも珍しくない。
パウンド・フォー・パウンドの定義は「全階級を通じて誰が最も優秀なボクサーであるかを経歴と表層上の戦力評価で定めるランキング」であり、特に日本において勘違いされがちな「体重が同一と仮定したら誰が一番強いかを決めるランキング」ではない。対戦相手の質が重要ないわば経歴の比べ合いで、そのためどれだけ強い勝ち方をしても、対戦相手の質が伴わなければ基本的に高評価はされない。
DAZNは、パウンド・フォー・パウンドの選定基準を以下のように定めている。
ボクシングでは、様々なボクシングメディアが独自に選定したパウンド・フォー・パウンドのランキングを発表しているが、十数名の選定者によって決定されるリング誌とESPN.comによるものが有名である。選定方法については、ESPN.comでは選定者の投票によるポイント計算で決定されるが、リング誌ではポイント計算だけでなく、選定者間でのメールによる意見交換などオンライン上で議論がなされ、他の選定者の主張を聞いた上で順位を変えることもあるなど、民主主義的なやり方で決定される。
中量級の往年の名王者シュガー・レイ・ロビンソンが「ロビンソンこそが階級の壁を越えた最も偉大な王者」と称えられたことから、「パウンド・フォー・パウンド・ベスト(PFP最強)」という用語が生み出された。1960年代終盤から1970年代序盤にかけてはホセ・ナポレス、1970年代中盤から終盤にはモハメド・アリ、1980年代にはロベルト・デュラン、シュガー・レイ・レナード、マービン・ハグラー、1980年代終盤はマイク・タイソン、1990年代序盤はフリオ・セサール・チャベス、パーネル・ウィテカー、1990年代中盤はロイ・ジョーンズ・ジュニア、オスカー・デ・ラ・ホーヤ、2000年代序盤はシェーン・モズリー、バーナード・ホプキンス、2000年代中盤はフロイド・メイウェザー・ジュニア、マニー・パッキャオ、2010年代中盤はローマン・ゴンザレス、アンドレ・ウォード、ゲンナジー・ゴロフキン、2020年代序盤はワシル・ロマチェンコ、サウル・アルバレス、オレクサンドル・ウシク、テレンス・クロフォード、井上尚弥らがPFP最強との呼び声が高い。
なお、リング誌は1989年から独自に選定したPFPベスト10のランキングを発表しているが、2022年現在までにランキング入りした日本人選手は、山中慎介、内山高志、井上尚弥、井岡一翔の4選手のみである。2022年6月10日(日本時間で11日)に日本人最高位として井上尚弥(29歳)がPFPランキング第1位を獲得した。
総合格闘技では、現UFC世界ヘビー級王者で元UFC世界ライトヘビー級王者のジョン・ジョーンズ、元UFC世界ヘビー級王者のスティーペ・ミオシッチ、元UFC世界ヘビー級・ライトヘビー級王者のダニエル・コーミエ、元UFC世界ミドル級王者のアンデウソン・シウバ、元UFC世界ミドル級・ウェルター級王者のジョルジュ・サンピエール、元UFC世界ウェルター級王者のカマル・ウスマン、元UFC世界ウェルター級・ライト級王者のBJ・ペン、元UFC世界ライト級王者のハビブ・ヌルマゴメドフ、元UFC世界フェザー級王者のジョゼ・アルド、現UFC世界フェザー級王者のアレクサンダー・ヴォルカノフスキー、元UFC世界フライ級王者のデメトリアス・ジョンソン、「60億分の1の男」と言われた第2代PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードルなど、無数に名前が挙がっている。
女子・総合格闘技では、元UFC世界女子フェザー級・バンタム級王者のアマンダ・ヌネス、UFC・Bellator・Invicta・Strikeforceの4団体で王者となったクリスチャン・サイボーグ、元UFC世界女子フライ級王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコの名前が挙げられる。
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