デジタルミレニアム著作権法(デジタルミレニアムちょさくけんほう、英: Digital Millennium Copyright Act、略称: DMCA)は、アメリカ合衆国 (米国) で1998年10月に制定・施行された連邦法であり、合衆国法典 第17編に収録された著作権法 (17 U.S.C.) などを改正する立法である。デジタル著作権管理 (DRM) の強化を目的とし、DMCA成立によって17 U.S.C.
この記事は特に記述がない限り、アメリカ合衆国の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
第12章が新設されて、コピーガードを始めとする技術的保護手段の回避が禁止された。また、17 U.S.C. 第512条によって告知と撤回手続 (notice and takedown)が規定され、著作権侵害コンテンツがウェブサイトなどに投稿された際の通報 (notice) と削除 (takedown) 手順および免責条件が明文化された。
正式題名 | To amend title 17, United States Code, to implement the World Intellectual Property Organization Copyright Treaty and Performances and Phonograms Treaty, and for other purposes. |
---|---|
頭字語(口語) | DMCA |
制定議会 | アメリカ合衆国第105議会 |
引用 | |
一般法律 | Pub. L. 105-304 |
Stat. | 112 Stat. 2860(1998) |
改廃対象 | |
改正し た法律 | 米国著作権法およびその関連法 |
改正した USCの編 | 第5編: 政府組織及び職員:29、第17編: 著作権、第28編: 司法及び司法手続:44、第35編: 特許:29 |
創設した USCの条 | 合衆国法典第17編 第512条、第1201–1205条および第1301–1332条、第28編 第4001条:45 |
改正した USCの条 | 合衆国法典第17編 第101条:3、104条:4、108、112条:30、114条:32、117条および701条:29 |
立法経緯 | |
主な改正 | |
なし (著作権法等を改正するための法律であり、本法自体は改正の対象とならない) |
制定当時、著作物の無断デジタル複製やインターネットを介した海賊版流通などが増加傾向にあり、このような技術的・社会的な変化を受けて、国際的にはWIPO著作権条約 (WCT) とWIPO実演・レコード条約 (WPPT) の2条約が1996年に署名された。これら国際条約で謳われた義務を国内履行すべく米国はDMCAを成立させ、世界に先駆けて法対応を強化した。その背景には、ハリウッド映画業界を始めとするコンテンツビジネス事業者からの政治的圧力があったとされる。
しかしDMCAによって著作権者により強力な支配権を与えたことから、著作物の利用者側に元来認められている表現の自由 (憲法修正第1条) や著作物の公正利用 (フェアユース) とのバランスが損なわれたとの批判も強い。その結果、DMCA以降も米国内ではデジタル社会に対応した改正法案が複数提出されるも、廃案となる事態が繰り返された。本項では関連判例も交えながら概観する。
米国DMCAと目的が類似する他国の法律としては、欧州連合 (EU) の情報社会指令 (2001年成立) やデジタル単一市場における著作権に関する指令(DSM著作権指令、2019年成立)、日本の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダー責任制限法)などがある。
DMCAの成立により、著作権法 (合衆国法典 第17編、DMCAと区別するため以下「17 U.S.C.」と表記) に対して加えられた主な改正点は以下の通りである。
一般的にDMCAと呼ばれるものは単一ではなく、4本の改正法案が統合されて構成されていることから、DMCAの各章に対応する個別4法案の名称が用いられることもある。なお、「DMCA 第512条は...」「DMCA 第1202条の...」などの表現が一部見受けられるが、下表のとおり改正立法たるDMCAそのものにはこれらの条項は存在しない:2。DMCAによって改正・追加された、17 U.S.C. の第512条や第1202条と混同した用法が一部存在することに注意が必要である。
DMCA 章・条 | DMCA 章・条の題名 (試訳) | 対応する17 U.S.C. 側の改正点など |
---|---|---|
Title Ⅰ (第1章) | WIPO諸条約の履行 | |
第101条 | 略称 | DMCA 第1章はWIPO著作権並びに実演・レコード条約実施法 (WIPO Copyright and Performances and Phonograms Treaties Implementation Act) の呼称使用可。 |
第102条 | テクニカル修正 (外形的な文言修正の意) | 「条約」の文言が含まれる17 U.S.C. 第101条 (定義)、第104条 (保護対象者・要件)、第411条 (USCOへの登録) を修正。 |
第103条 | 著作権保護システムと著作権管理情報 | 17 U.S.C. に第12章を新設。第1201条ではコピーコントロールを始めとする著作権保護の技術的手段を回避禁止としつつ、リバースエンジニアリングや非営利図書館での使用など一部例外を認める。第1202条は著作権管理情報の除去・改変を禁じる。これらに違反した者に対し、民事訴訟 (第1203条) ないし刑事手続 (第1204条) をとることができる。 |
第104条 | Eコマース発展および技術革新を踏まえた著作権法および改正の影響分析 | Eコマースおよび技術革新が17 U.S.C. 第109条 (権利移転の例外規定) と第117条 (コンピュータ・プログラムの例外規定) に及ぼす影響について、著作権局長および通信情報担当商務次官が分析・報告する。 |
第105条 | 施行日 | n.a. |
Title Ⅱ (第2章) | オンライン著作権侵害にかかる免責 | |
第201条 | 略称 | DMCA 第2章はインターネット著作権侵害責任明確化法 (Internet Copyright Infringement Liability Clarification Act) の呼称使用可。 |
第202条 | 著作権侵害の免責 | 17 U.S.C. に第512条 (ノーティスアンドテイクダウン手続) を新設。 |
第203条 | 施行日 | n.a. |
Title Ⅲ (第3章) | コンピュータ保守・改修にかかる著作権の例外規定 | |
第301条 | 略称 | DMCA 第3章はコンピュータ保守競争保証法 (Computer Maintenance Competition Assurance Act) の呼称使用可。 |
第302条 | 著作権の排他的権利の制限; コンピュータ・プログラム | 17 U.S.C. 第117条 (コンピュータ・プログラムの例外規定) の文言修正など。 |
Title Ⅳ (第4章) | その他規定 | |
第401条 | 特許商標庁長官および著作権局長に関する規定 | 特許法 (35 U.S.C.) 第3条(b)に規定された商務省次官に関する文言削除。政府組織及び職員規定 (5 U.S.C.) 第5314条の修正。著作権法 第701条 (著作権局の任務) の修正。 |
第402条 | 一時的固定物 | 17 U.S.C. 第112条 (一時的固定物にかかる排他的権利の例外規定) の文言修正など。 |
第403条 | 著作権の排他的権利の制限; 遠隔教育 | 著作権法とは別にUSCOが遠隔教育の実現に向けた勧告 (recommendations) を提出することを義務付ける。 |
第404条 | 図書館および公文書館に適用される例外規定 | 17 U.S.C. 第108条 (図書館・公文書館の例外規定) の修正。 |
第405条 | 音声録音および一時的固定物の排他的権利の範囲 | 17 U.S.C. 第114条 (録音物の例外規定) およびの第1002条 (コピー制御装置の組み込み) の修正。 |
第406条 | 映像著作物の権利移転に関する契約上の義務前提 | 司法及び司法手続 (28 U.S.C. ) に第4001条を新設・挿入。 |
第407条 | 施行日 | n.a. |
Title Ⅴ (第5章) | 創作性の認められるデザインの保護 | |
第501条 | 略称 | DMCA 第5章は船型デザイン保護法 (Vessel Hull Design Protection Act) の呼称使用可。 |
第502条 | 創作性を有するデザインの保護 | 17 U.S.C. に第13章を新設し、応用デザイン保護の一部がスイ・ジェネリス権として認められた。 |
第503条 | 条文補整 | DMCAによって創設・修正される条文の番号や位置などに言及。 |
第504条 | 当章の影響に関する共同調査 | DMCA施行後、特許商標庁長官と著作権局長の共同責務において、影響分析を上院および下院に提出。 |
第505条 | 施行日 | n.a. |
これらの改正の背景には、DMCA成立の2年前に署名されたWIPO著作権条約 (WCT) とWIPO実演・レコード条約 (WPPT) がある。しかしながら、当時既に米国著作権法はWCTとWPPTで定められた権利保護水準の一部は満たしていた。したがって条約履行はDMCAの一目的でしかなく、Eコマースやデジタル著作物のネットワーク流通を促進しつつ、著作物の保護を強化するというより多角的な意図を以って連邦議会はDMCAを成立させた。その結果、DMCA 第5章 (船型デザイン保護法) のように、デジタル社会対応や著作権と直結しない改正も含まれている。
DMCAのうち、特に技術的保護手段の回避禁止 (第1章) とノーティスアンドテイクダウン手続 (第2章) が知られていることから、これら2点について以下詳述する。
DMCA 第1章 (WIPO著作権並びに実演・レコード条約実施法) により、17 U.S.C. に第12章が新設され、技術的保護手段の回避が禁止された。ここでの「技術的保護手段」(technological measures あるいは technological protection measures、略称: TPM) とは、具体的には暗号化などを指しており、無断で著作物を複製・頒布・利用されないよう、著作者や著作権者の利益を保護するために開発された技術である。TPMに関する規定はWCTおよびWPPTの2条約にも盛り込まれている。
音楽業界を例に挙げると、もともと家庭用録音機を使って容易に楽曲をダビングできる状態であったところに、デジタル社会が到来してPeer to Peer (P2P) ネットワークを介して個人間でファイルシェアし、リッピングによって個人のパソコンなどに楽曲を取り込んで無料で鑑賞できるようになった。このような分散型ネットワーク技術が進展した結果、集権的なネットワーク管理が困難なことから、取り締まりの法制度も刷新する必要があった。またP2Pのようなシステムは、一般個人が低コストで不正コンテンツを世界中に大量拡散する土壌となっていた。これによって打撃を受けた音楽業界が米国政府に働きかけたこともあり、DMCA 第1章 (17 U.S.C. 第12章) が成立したと言われている。
楽曲のコピーコントロールCDを始めとする、複製・頒布保護をかけたコピーコントロールTPMは著作権法上、合法とされている。そして17 U.S.C. 第12章の新設によって、このようなTPMを回避する行為 (海賊版の輸入を含む) は著作権侵害であると明文化された。ここでの「技術的手段の回避」とは、「著作権者の許諾なく、スクランブルがかかっている著作物のスクランブルを解除し、暗号化された著作物の暗号を解除し、またはその他技術的手段を回避し、迂回し、除去し、無効にしもしくは損壊すること」と定義づけられている (17 U.S.C. 第1201条(a)(3)(A))。第1201条によると、直接TPM回避を行った本人だけでなく、回避ツールを第三者に提供した者も違反とされる。さらに、TPMで暗号化された楽曲がたとえパブリックドメイン (著作権の保護期間が切れて公有の状態) に帰していても、暗号化を解除したとの理由でやはり第1201条違反とみなされる可能性がある。違反者は刑事罰の対象となり、初犯の場合は最大で懲役5年および50万ドル以下の罰金が科される場合がある。
上述のとおり一般的な禁止事項を述べた上で、17 U.S.C. 第1201条は以下のような一部例外規定も設けて規制を緩和している (2008年時点)。
また、法律改正を必要としない例外の柔軟な追加手続も別途認められている。17 U.S.C. 第1201条(a) によると、TPM回避が著作権者の権利侵害につながらない場合は、著作権局長と商務省通信情報担当長官補が協議した上で、最終的には連邦議会図書館長が「勧告」(recommendations) の形で個別の例外ケースを定めることができる。このプロセスは3年に1回の頻度で実施すると第1201条(a) で定められており、DMCA制定から2020年現在までに計7回の勧告実績がある。しかし、このような例外ケースを求める利用者側からの要望は、必ずしも全て認められるわけではない。たとえば2012年の勧告見直しタイミングでは、ビデオゲームコンソールの迂回 (俗に言う「脱獄」、jailbreak) の例外追加要望は却下されている。これは、要望者側の目的を実現するにあたって、脱獄以外にも複数の代替手段があると指摘されたためである。他にも、携帯電話のSIMロック解除についても要望が複数回提出されるも、新しい機種への例外適用が見送られたこともある。
画像外部リンク | |
---|---|
ノーティスアンドテイクダウン手続の流れを解説したフロー図 (総務省 プロバイダ責任制限法検証WG 2011年資料) |
DMCA 第2章 (インターネット著作権侵害責任明確化法) によって新設された17 U.S.C. 第512条は、通称「ノーティスアンドテイクダウン手続」や「DMCA通告」などと呼ばれている。ユーザによって著作権侵害がインターネットを介して行われた場合、その通信環境を提供したインターネットサービスプロバイダー (ISP) またはオンラインサービスプロバイダー (OSP)、あるいは検索エンジンなどのデータキャッシング事業者各社は、一定の条件下で損害賠償を免責される。第512条は、いわゆるセーフハーバー条項とされる。ISPやOSPに適用される免責条件を例に取ると、以下の5要件全てを満たしている必要がある (第512条)。
これら5要件を前提とした上で、著作権者の許可なく著作物が第三者によってウェブサイトに掲載されたと通知 (notice) を受けた場合、そのウェブサイトの運営者が速やかに削除 (takedown) すれば損害賠償などを免責される仕組みがノーティスアンドテイクダウン手続である。運営者が免責される要件や要点は以下の通りである。
DMCA成立の前史は、民主党クリントン第1期政権下の1995年に始まっており、この年にデジタル著作物の権利保護に関する白書が作成されると、1998年までにはDMCAのほか、情報窃盗の刑事罰を規定した1997年の電子窃盗禁止法 (No Electronic Theft Act、通称: NET法) や著作権保護期間を延伸させた1998年のソニー・ボノ著作権延長法が成立し、17 U.S.C. が改正されている。これらの改正立法の背景には、著作権ビジネス (コンテンツビジネス) 業界からのロビイングがあったとされる。データキャッシュ、ウェブホスティング、検索エンジンやオンラインデータベース事業者に対し、ウェブサイトに投稿された著作権侵害コンテンツの削除と保護強化を訴えたのである。なお、二大政党制の米国においては特に民主党に対し、コンテンツビジネスの一翼を担うハリウッド映画業界からの政治的圧力が強いことが知られている。その中でも特にクリントンは個人的なポップカルチャーファンであり、大統領選第1期目の選挙戦期間中には既にハリウッド業界擁護の姿勢を打ち出し、ハリウッドから民主党に多額の寄付金が流れた。
こうして1998年に成立したDMCAであるが、主に2つの側面から批判を浴びることとなる。それは、(1) 表現の自由を保障する憲法修正第1条、そして (2) フェアユースの法理を定めた17 U.S.C. 第107条 (著作権者に無断で著作物を第三者が利用できる条件規定) を根拠にしたものである。
これを、批判の対象となるDMCAの条文別に見てみる。まずDMCA 第1章 (TPM回避禁止) であるが、著作権者に強力な支配権・独占権を過度に認めた結果、その反動で著作物を利用する側の自由が損なわれ、権利者と利用者間の利益バランスを崩しているのではないかとの懸念が有識者および利益団体から呈されている。なお、ここでの「表現の自由」が意味するものは広義であり、一例を挙げると、デジタル社会の権利擁護団体である電子フロンティア財団 (EFF) は、DMCAによってリバースエンジニアリングに制限がかかったことから、他者の「アイディア」から学んで新たな技術研究を「表現」する自由が奪われたとして、憲法修正第1条を論拠にDMCAの違法性を主張している (#電子フロンティア財団対米国政府裁判で後述)。当裁判を扱った英国大手新聞ガーディアンは「America's broken digital copyright law」(米国のデジタル著作権法は崩壊している) と形容した。また上述のとおり、TPM回避禁止の例外規定は17 U.S.C. 第1201条に盛り込まれており、かつ一般原則たるフェアユース (17 U.S.C. 第107条) 以降には個別例外規定を定めた第108条 - が続くが、これらの個別例外規定だけでは不十分であり、フェアユースの法理に反するとの批判も一部にある。
続いて、DMCA 第2章によって追加された17 U.S.C. 第512条 (ノーティスアンドテイクダウン手続、DMCA通告) であるが、その目的の一つに、オンラインサービス事業者がユーザ起因による著作権侵害の脅威に晒されることなく、インターネット社会における繁栄を可能とすることが挙げられている。そして、第512条の存在価値を一定程度認める有識者もおり、一般的にはオンラインサービス事業者は第512条を「成功」とみなしているとされる (2020年現在)。しかしながら、違法コンテンツのユーザ・アップロードに技術的な対抗策が十分取られていないことから、「もぐら叩きゲームだ」(whack-a-mole problem) との苛立ちの声も上がっている。YouTubeを例にとると、2014年のみで1億8000万本の動画が権利侵害で削除されたとの報告もある。2015年公開映画『ヘイトフル・エイト』は違法視聴が130万回を上回ったとも言われている。また2020年の著作権局 (USCO) 調査報告書によると、オンラインサービス事業者全体が受け付けるDMCA通告の件数は、日次で100万件を超えると見られている。
こうした批判はDMCA制定以降も長く続いており、2010年から2012年 (民主党オバマ政権下) にかけては著作権法の改正法案が複数提出されるも、激しい反対運動に発展している。これら抵抗にあって廃案に追い込まれた改正法案には、オンラインにおける権利侵害および偽造防止法 (COICA)、オンライン海賊行為防止法案 (SOPA) や知的財産保護法案 (PIPA) が含まれる。
2018年10月にはDMCA以来の著作権法大型改正立法として、マラケシュ条約実施法 (MTIA)、および音楽著作物に限定した音楽近代化法 (MMA) が成立し、20年ぶりにDMCA以降の大幅更新が図られた。しかし未だに課題も残っており、17 U.S.C. 第512条に関する2020年5月調査報告では「当事者間の利益バランスを欠いている」とUSCOは結論付けている。これを受けて上院司法委員会の知的財産小委員会では、さらなる法改正の検討に入っている。2020年5月現在の第512条は「画一的アプローチ」(one-size-fits-all) であると問題が指摘され、オンラインサービス事業者のタイプ別、また著作権侵害の重犯に対する個別規定の設定など、より細分化した改正立法が必要だとUSCOは提言している。さらにUSCOに著作権侵害の啓蒙活動といった責務を負わせるなど、法改正だけに依存しない包括的なアプローチの必要性が唱えられている。
上述のような反発と混乱は米国に限った話ではない。以下、米国DMCAとEUおよび日本法を対比する。
米国が1996年署名のWIPO著作権条約 (著作者本人の権利保護) およびWIPO実演・レコード条約 (著作隣接者の権利保護) を受けてDMCAを成立させたように、欧州連合 (EU) では、WIPO 2条約の履行を目的として、DMCAから遅れること3年後の2001年に情報社会指令 (2001/29/EC) を成立させている。インターネットを介したインタラクティブ送信を想定して:69–71、情報社会指令では特に複製権、公衆伝達権、および頒布権について言及するとともに、著作者や著作隣接者が有するこれらの独占権に一定の制限・例外を設ける規定が含まれている。具体的には、第2章 第5条で21の制限・例外ケースを規定しており、EU加盟国が国内著作権法で21の制限・例外ケース以外を追加してはならないとしている。
またTPM回避禁止については、米国DMCAと同様、非営利団体などに対して規制緩和の特別規定を設けている。ただしDMCAと異なり、EUの情報社会指令ではTPMをコンピュータ・プログラムに適用してはならないとの留保条項を含んでいる。よって、DMCAでは合法なリバースエンジニアリングの範囲が狭いものの、EUではリバースエンジニアリングが許容されていると解されている。
情報社会指令を受けてEU加盟各国は国内法を整備しており、たとえばフランスでは2006年から2009年にかけて、インターネットを介した著作権侵害の取り締まり体制と罰則を強化した。しかし利害関係者や世論からの反発も大きく、一部の改正立法は違憲判決が出て、修正を余儀なくされている。
2001年の情報社会指令以来の大型改革と言われるのが2019年のDSM著作権指令 (Directive (EU) 2019/790) であり、その可決を巡って激しい対立を生み出したことでも知られている。特に物議を醸したのが、通称「リンク税」と呼ばれる第15条 (原案では第11条) と、「アップロード・フィルター条項」と批判された第17条 (原案では第13条)の2点である。DSM著作権指令の内容は、著作権者や新聞・出版社などの伝統的なメディアからは概ね好意的に受け止められているものの、著作物の二次的利用を提供するインターネットサービス事業者や一般ユーザなどからは反発が強い。また、各国の憲法で保障されている表現の自由が侵害されうるとして、人権擁護団体からも懸念の声が上がっている。
TPM回避禁止に関し、日本国著作権法では第30条 第1項に例外規定が存在する。これは個人や家庭内といったごく限られた範囲で使用される私的複製、および図書館や教育機関など公益性の高い用途での複製に限定しており、これらがTPMを回避しても、著作権者らに経済的損失を与えづらいと考えられているためである。また、コンピュータ・プログラムの著作物に関しては、バックアップないしバージョンアップといった目的での複製についてはTPM回避の違法性に抵触しないと一般的には解されているが、やはり著作権者らの経済的損失の有無が合法・違法の線引き基準となっている。
ノーティスアンドテイクダウン手続に類似する日本の法律としては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)がある。プロバイダー責任制限法の専門家ワーキンググループ会合が総務省主催で開催されており、2011年の同会合では日本のプロバイダ責任制限法と米国のノーティスアンドテイクダウン手続を比較している。その上で、ウェブサイトの運営者に対して「『とりあえず削除』のインセンティブを高めてしまうのではないか」との懸念が呈されており、日本に同様の法制度を導入することへの慎重論が展開された。
表現の自由 (憲法修正第1条) を根拠としたDMCAの違法性に関する訴訟は複数あるものの、2000年代の判決の多くは合憲となっている。一方、フェアユースの文脈では、ノーティスアンドテイクダウン手続の濫用が指摘された判例も存在する。以下、専門家や法律専門メディアなどが言及したDMCA関連判例の一部を紹介する (訴訟名の右に特筆性を示す出典を付記)。
DMCA成立に影響を与えた過去判例のうち、専門家による言及があったものを以下に紹介する。
This article uses material from the Wikipedia 日本語 article デジタルミレニアム著作権法, which is released under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 license ("CC BY-SA 3.0"); additional terms may apply (view authors). コンテンツは、特に記載されていない限り、CC BY-SA 4.0のもとで利用可能です。 Images, videos and audio are available under their respective licenses.
®Wikipedia is a registered trademark of the Wiki Foundation, Inc. Wiki 日本語 (DUHOCTRUNGQUOC.VN) is an independent company and has no affiliation with Wiki Foundation.