アントン・ドレクスラー: ドイツの政治家 (1884-1942)

アントン・ドレクスラー(ドイツ語: Anton Drexler, 1884年6月13日 - 1942年2月24日)は、ドイツの労働者、政治家。国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)の前身となるドイツ労働者党の共同設立者として知られる。

アントン・ドレクスラー
Anton Drexler
アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典
生年月日 1884年6月13日
出生地 ドイツの旗 ドイツ帝国
バイエルン王国の旗 バイエルン王国 ミュンヘン
没年月日 (1942-02-24) 1942年2月24日(57歳没)
死没地 ナチス・ドイツの旗 ドイツ国
アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典 バイエルン州 ミュンヘン
出身校 国民学校
所属政党 ドイツ祖国党→
アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典ドイツ労働者党→)
アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典国家社会主義ドイツ労働者党→)
(民族ブロック→)
(民族社会主義人民同盟→)
アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典 国家社会主義ドイツ労働者党
称号 1923年11月9日記念メダル

アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典 バイエルン州議会議員
在任期間 1924年 - 1928年

在任期間 1920年2月24日 - 1921年7月29日

在任期間 1920年1月5日 - 1920年2月24日

在任期間 1919年1月5日 - 1920年1月5日
議長 カール・ハラー
テンプレートを表示

経歴

政治活動の開始

鉄道労働者の息子としてミュンヘンに生まれる。国民学校卒業後、1901年にベルリンに上るが、失業して帰郷、1902年から機械工として働き始める。この頃には既に反ユダヤ主義反マルクス主義的な思想を身に付けていたという。第一次世界大戦中にドイツ祖国党ドイツ語版に参加、1918年3月には職場だったバイエルン王国王立鉄道中央工場の同僚と共に、「良き和平のための自由労働者委員会」を組織した。また、カール・ハラーと共に保守系右派民族主義団体「政治的労働者のサークルドイツ語版」を設立する。ドレクスラーの思想的指導者は、「全ドイツ人同盟」の指導者でニュルンベルク・アウクスブルク機械工場経営者・バイエルン産業家連盟の代表役員だったパウル・ターフェルドイツ語版だった。

ドイツ労働者党

敗戦後の1919年1月5日、ターフェルの慫慂(しょうよう)によりディートリヒ・エッカート、ゴットフリート・フェーダー、カール・ハラーと共にドイツ労働者党(DAP)を設立。ハラーが党議長に就任するが名誉職に過ぎず、実質的な権限は副議長のドレクスラーが握っていた。同月に「国際プロレタリアの挫折と兄弟思想の失敗」と題する論文を発表。続けて「我が政治的目覚め」と題するパンフレットを発表したが、このパンフレットは当時復員してミュンヘンにいたアドルフ・ヒトラーに影響を与えたという。

1919年9月にミュンヘンで集会を開くが、その際に演説したアダルベルト・バウマン(ドイツ語版)教授を論破したヒトラーを見て興味を抱いた。ドレクスラーはヒトラーに党のパンフレットを渡し、入党を促した。ヒトラーはドレクスラーの求めに応じて同月12日に入党した。

1920年1月5日にヒトラーとドレクスラーによってハラーが党議長を追放され、ドレクスラーが党議長に就任した。フェーダーと共にヒトラーに協力して綱領を策定したドレクスラーは、1920年2月24日、ヒトラーをホフブロイハウスで開催する党大会に参加させ、ヒトラー主導の下で25カ条綱領が発表され、党名を国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)と改名した。

ナチ党

アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典 
1923年11月9日記念メダル(通称「血盟勲章」)

党名改称後、党内ではヒトラーが頭角を現し、1921年に入るとヒトラーの勢力は盤石なものとなっていた。これに危機感を覚えたドレクスラーは、6月にヒトラーがベルリンに出かけている間に無断で他の右翼政党との共闘や合併を協議し始めた。これを知ったヒトラーは、7月11日に離党を宣言した。党幹部は党の顔である彼の離党が党消滅に繋がることを危惧し、引き留めに躍起となった。

3日後、ヒトラーは党への復帰の条件として自分に独裁権を与えるように書面で要求、党幹部がこの要求を認めたため、ヒトラーは復党した。ドレクスラーは7月25日にミュンヘン警察にヒトラーを危険人物であると密告したが、取り合ってもらえなかった。7月29日、554票中553票を得てヒトラーは新党首に選出、ドレクスラーは名誉党首に就任したが、党での実権を失った。

1923年11月のミュンヘン一揆の際、自宅にいたドレクスラーは呼び出されたが、ヒトラーの計画を聞くや恐れて参加しなかった。しかし、一揆の失敗後に逮捕された。この事件により、ナチ党が一時解散を強いられたとき、ドレクスラーは党を離れて「民族ブロック」に参加し、1924年から1928年にかけてにバイエルン州議会議員を務めた。この間の1925年には民族社会主義人民同盟を設立している。同年ナチ党が再建されたがドレクスラーは加わらず、復党したのはヒトラー内閣成立後の1933年になってからであった。

1934年には党創設者としてヒトラーから1923年11月9日記念メダルを授与されたが、以後も政治権力は与えられず、彼の存在は1937年まで党の宣伝のために利用された。しかし、ドレクスラー自身はこの勲章授与に感激し、以後熱烈なヒトラー支持者となった。その後はミュンヘンに隠棲し、第二次世界大戦中の1942年に同地で死去した。

ヒトラーによる評価

ヒトラーは『我が闘争』の中で、ドレクスラーを以下のように評している。

ドレクスラー氏はただの労働者であり、演説者としても有能ではなく、何よりも兵士ではなかった。彼には軍歴がなく、大戦中も兵士ではなかった。そのため彼はまったく弱く不安定な人物であり、その弱く不安定な人物が達成しうるための教育も欠けていた。・・・冷酷な容赦のなさで抵抗を退けたり、新たな思想を実行に移す能力がなかったのである

出典

参考文献

  • Hamilton, Charles (1984). Leaders & Personalities of the Third Reich, Vol. 1. R. James Bender Publishing. ISBN 0-912138-27-0 
  • Hitler, Adolf (1999) [1925]. Mein Kampf. Boston: Houghton Mifflin. ISBN 978-0-395-92503-4 
  • Kershaw, Ian (2008). Hitler: A Biography. New York: W. W. Norton & Company. ISBN 978-0-393-06757-6 
  • Mitcham, Samuel W. (1996). Why Hitler?: The Genesis of the Nazi Reich. Westport, Conn: Praeger. ISBN 978-0-275-95485-7 
  • Shirer, William L. (1960). The Rise and Fall of the Third Reich. New York: Simon & Schuster. ISBN 978-0-671-62420-0 
  • Stackelberg, Roderick (2007). The Routledge Companion to Nazi Germany. New York: Routledge. ISBN 978-0-415-30860-1 

外部リンク

党職
先代
DAPから改称
アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典  国家社会主義ドイツ労働者党議長
1920年 - 1921年
次代
アドルフ・ヒトラー
先代
カール・ハラー
アントン・ドレクスラー: 経歴, ヒトラーによる評価, 出典  ドイツ労働者党議長
1920年
次代
NSDAPに改称

Tags:

アントン・ドレクスラー 経歴アントン・ドレクスラー ヒトラーによる評価アントン・ドレクスラー 出典アントン・ドレクスラー 参考文献アントン・ドレクスラー 外部リンクアントン・ドレクスラー1884年1942年2月24日6月13日ドイツ労働者党ドイツ国ドイツ語労働者国家社会主義ドイツ労働者党政治家

🔥 Trending searches on Wiki 日本語:

田口トモロヲTOKYO MER〜走る緊急救命室〜土居志央梨セウォル号沈没事故6秒間の軌跡〜花火師・望月星太郎の憂鬱キム・ジウォンJO1コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-ジョジョの奇妙な冒険小山茉美吉田鋼太郎名探偵コナン 世紀末の魔術師西山喜久恵YOASOBI高畑充希高山みなみメイドインアビス9ボーダー広瀬すず秋元司藤原宣孝アンメット-ある脳外科医の日記-木下雄介渡辺大知松山弘平デーブ・スペクター完熟フレッシュ村松康雄根本凪福田淳ロバート・オッペンハイマー飯山陽徳仁SEKAI NO OWARI井桁弘恵小林興起大友愛酒井美紀HIGHSPEED Étoile本田圭佑酒井彩名ちゅらさんENHYPEN不適切にもほどがある!三淵嘉子神戸連続児童殺傷事件源博雅宮野真守大家志津香千宗室 (15代)三陸鉄道大谷育江Number i黒田美樹神谷明井上清華安倍晋三古川琴音篠原涼子菊池こころ鳥島 (八丈支庁)田中真美子辻井伸行コロンバイン高校銃乱射事件桜井ユキ伊藤匠山田涼介染谷将太大場美和柄本時生中田青渚ボーカル筒香嘉智鎮西寿々歌ADEKAコーチェラ・フェスティバル駿河太郎🡆 More